風漂〜売れない物書きと少女の日々〜

物書未満

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第8話 霊気と霊術

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 翌朝、ミーナの声で目が覚めた
 大分と寝ていたようで私の腕時計は十時を示している。

 私は起き上がりつつミーナに「おはよう」と挨拶すると彼女も挨拶を返した。

「昨日は危うくルカワさんを霊気枯渇にするところでした。申し訳ありません……」

 と、ミーナは謝り、
「あそこまでいくと回復までまだ時間がかかるのですが、ルカワさんの回復速度はかなり早い様でもう九割回復しています」

 そう驚き混じりに言ってきた。
 どうやら昨日の事から考えるに私は霊気に関して、大きなタンクと小さな蛇口、天賦の才を腐らせていた影響で蛇口が錆びついている状態で且つタンクの中身の戻りが早い、という事らしい。

 これではエネルギーだけ有り余っている子供の様なものだ。

 とにかく時間的にそろそろ出発しなければいけないだろう。私のせいで到着が遅れてしまっては元も子もない。

 大方の準備はミーナがしてくれていたようで三十分もしない内に出発する事ができた。

「まだお疲れのようならお休み下さい。それこそ無理は良くないので」

 心配そうに言ってくれるあたり、本当に彼女はいい人だ。
 私としては気分も調子も戻ってきたから大丈夫だと言っておいた。

 暫くするとミーナは昨日霊気について話忘れていたことがあるらしい。
 
聞いてみると霊気は使い慣れていないと減少に気が付きにくく、知らない内に切れる事もあるのだという。

 昨日の私がまさにそうでミーナが霊気渡し中に気が付き、私に霊気を急激に戻した為に霊気酔いと呼ばれるあの酔いを引き起こした様である。

「霊気枯渇を起こすと最悪命に関わるんです。昨日伝え忘れていて申し訳ありませんでした。今日は霊気渡しを止めておきますか?」
「いや、今日もやってみるよ。気分もいいし、ミーナの調整精度も昨日よりも上がっているんじゃないかな」

 タダ乗りというのもやはり変な気分だし、やってみない事には精度も上がらない。

「本当にルカワさんはいい人です」

 そう困った様な笑顔を浮べ、

「それでは昨日と同じく手を」

 と、言って私の手を取った。

 手を繋いでみると昨日の様な急激な流れは感じず、ゆっくりと流れていく感覚が走った。

 これなら酔う事もないだろうと考えていると、ミーナとしても上手くいったようである。

 そうやって霊気を渡しつつ、言葉を交わしたりして荷馬車は昨日よりも速度を上げて荷馬車は進んでいった。
 
 さて歩を進めている内にそろそろ一三時ごろとなり腹も減ってきた。昼食をどうしようかとミーナに聞くと朝の内に用意しておいたという。

 あの真空水球かと期待していると案の定それが出てきた。

「昨晩のルカワさんの様子を考えて軽めの食事を作っておきました」

 そう言われ、何なのだろうと水球を見ていると水球が弾けて食事が出てきた。

 メニューは柔らかくしたパン、温かいスープ、それから二つ目の水球から出てきた少し冷えた果物である。

 いやはやミーナの気遣いと料理の腕前には感服するより他はない。

 スープはオニオンスープのそれに近いが具材がよく溶けており滑らかな口当たりだ、朝ではなく夜から煮ていたのだろう。

 果物は冷えすぎず温すぎずの丁度いいところで、食べやすい大きさに切ってあり、尚且見た目にも綺麗になるよう飾り切りにしてある。

 なかなかここまでするのは難しいはずだ。

「またしても簡単な物ですが首都についたらもっと良い料理をお作りしますので」

 そう言うあたり、本当に料理上手なのだろう。
 昼食を摂り終えるとミーナは丸薬の様な物を取り出して、

「これをお飲み下さい。霊気口の乱れを整える薬です。少々の霊気口の乱れなら自然と治るのですが、朝からの霊気渡しで強めの霊気口の乱れを感じましたので」

 と、私に差し出してきた。

 なるほど多少の筋肉痛なら湿布は使わないが酷い時には使う、といったところかと考えて、

「ありがとう、気を遣ってくれて。昼ご飯も美味しかったし、これならもう少し力になれそうだ」

 と言うと、ミーナの笑顔が返ってきた。
 やはり彼女の笑顔は可愛らしい。

 丸薬を飲んで元気になった私はミーナに霊気、霊術について昨日の復習も兼ねて更に詳しく聞くことにした。

「まず、霊術というのは簡単に言えば体内または体外の霊気を火、水、風の属性のどれかに変化させて発する物、特殊霊術はこれに当てはまらない物、という認識で問題ありません。そして属性は一人一つが限界です。これが基本になります」
――なるほど基本的な霊術は霊気の変化で一人一属性、か。
 
「霊気という物はこの世界ならおよそ誰もが持っています。属性傾向も個々人にあるのですが昨日言った通り、先天的に霊術が使える人でなければ訓練に対する見返りが少ないので訓練してまで使う人は少ないです。そのせいで霊術士の殆どは先天的霊術士です」
――ふむ、霊気は誰にでもあり属性もある、が後天的に習得する人は少ないという事か。

「体外霊気、つまり身体の外にある霊気は体内への取り込みこそ難しくありませんが、直接それを使うのは困難なので一度体内に取り込んで馴染ませてから使います」
――よく噛み砕いてからでなくては腹に収まりにくい食べ物の様な感じか。

「霊気の出入り口を霊気口、と言います。大小には個人差のある物ですが訓練すると大きさを変化させる事もできます」
――霊気の出入り口には柔軟性もつけられるといったところか。

「昨日も出た、霊気圧というのは、霊術を発する強さ又は持っている霊気の強さを表します。霊気の流れに関しては霊気圧の高い方へ霊気は流れます」
――要は昨日の感覚であろう。

「霊気枯渇はとても危険です。単純に霊気が切れるのとは訳が違います。霊術に長け、熟練した術士でも命に関わるんです。昨日は本当に申し訳ありませんでした……」
――なるほど、霊気切れは器に水が無くなる状態だが霊気枯渇は器が割れるというあたりか。

「あ、それから帯霊気というものがあります。これは霊術ではなく、少し練習すれば誰でも使えます。自分の身体や触れている物に体内霊気をまとわせて強化したり傷の治りを早めたりできます。熟練すれば化物にでも効果的なダメージを与えられます。しかも霊気枯渇の心配は殆どありません」
――ほう、霊術ではないが便利な安全で霊気の使い方があり、練習すれば上達するものもあるのか。

 今の所これくらいの事が分かり、私の見解をミーナに聞くとそれでいいとの事だったので、手帳に書き留めておいた。


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