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【敵同士→恋】1話(1)【探偵ミステリーBL】
しおりを挟む「なっ、お願い! お願いだからっ!」
「あのな~」
陽向は、イライラと貧乏ゆすりをした。
居候している男が仕事場にまでやって来て、金をせびりだしたのだ。
それも、フロアから丸見えの受付で。
イライラしない方が無理というものだ。
思えば、朝から何かとついていない。
携帯の充電が切れて目覚ましは鳴らず、季節外れの大雪で電車は止まる。
ようやく捕まえたタクシーも渋滞に巻き込まれた。
(……あげくが、これだ)
目の前で手を合わせている男を睨みつける。
ニットシャツにストーンウォッシュのデニム。紺色のクロックス。
この天気にもかかわらずコートも着ておらず、肩や裾はびしょ濡れで色が変わっている。
徹夜で打ってでもいたのか、ヒゲも伸び放題。
何より、酒くさい。
どう見ても、絵に描いたようなダメ男だ。
なのに──
金に近い茶に染めた髪、浅黒い肌、彫りの深い顔立ち。
元の顔が良いせいで、こんな有様でも妙に様になっているのが腹立たしい。
──謝花 海斗。
ゲイバーで出会い、衝動的に二、三度関係を持った彼が、ギャンブルで一文無しになり、陽向のアパートに転がり込んでから、早くも一年。
憐れみから彼を受け入れてしまったことを、後悔していないかと問われれば──
現在進行形で、大いに後悔している。
「ねっ、ねっ、お願い! 仕事紹介してくれるっていうから、つき合いで飲んでたら、ぼったくられちゃってさ! 帰る金もないんだ!」
海斗は、顔に落ちてきた前髪を無造作にかき上げた。
毛先から滴った雫が、小麦色の肌を伝う。
さすが、元モデル。
未成年の喫煙で解雇されたとはいえ、見た目と仕草は今もすこぶる絵になる。
さっきからオフィスの女子社員たちも、ちらちらと海斗に視線を送っていた。
「わかった、わかった! これやるから、今日はもう帰ってくれ! 今、仕事中なんだっ!」
陽向が財布から札を数枚取り出すと、海斗は砂漠で水を見つけた旅人のようにそれをひったくり、キスをした。
もちろん、金に、だ。
「やった! ありがとうっ! ほんと助かるっ!──あ、そうだ。お礼と言っては何だけど!」
ジーンズの後ろポケットから、海斗が何かを差し出してきた。
黄色のガーベラ。
しかも、安っぽいフィルムに包まれただけの、いかにもな安物だ。
それを彼は、まるでこの世にひとつしかないバラでもあるかのように、恭しく差し出してくる。
「残ってたなけなしの小銭で買ったんだ! これで機嫌直してくれよなっ! じゃ、愛してるよ! また家で!」
海斗は投げキッスをひとつ飛ばすと、ビュンと風のように帰っていってしまった。
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現在、中華ファンタジーBLを連載中です!
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■あらすじ動画(1分)
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