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ムカ つく後輩に 脅されてます(1)
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「先輩、エロいですね」
相良が私に携帯を向けて、にやにや笑っている。
「ほら、もっと足広げないと見えませんよ」
こいつ、殺したい、ほんとに。私は指先を蜜口に這わした。露わになって、鳥肌が浮いた胸を触る。感じはしない。ただ心臓は痛いくらいに鳴っていた。
相良の視線を感じる。なんで、彼氏でもない男にこんなとこ見せなくちゃいけないんだろう。
──話は3日前にさかのぼる。
☆
パァン!
盛大に響き渡った乾いた音に、私は視線をやった。駅の改札近く、男が女に頰を叩かれている。女は舌打ちしそうな顔で毒づく。
「……さいってい」
そのままさっさと歩いて行った。なんだ、痴話喧嘩か。こわいこわい。私は定期を取り出し、改札を抜けようとした。
「あれ、吉永先輩?」
声をかけられ、振り向く。痴話喧嘩で頰を叩かれた男がこちらを見ていた。見覚えのある顔に、喉をひきつらせる。
──げっ。
私は素早く定期をタッチして改札を抜け、ホームへの階段を駆け上がった。
ちょうど電車が来ていて、発車を知らせるベルが鳴り響いていた。よし、あれに乗ろう。ドアに駆け込む寸前、ぐい、と腕を引かれた。
「吉永先輩ですよねー、なんで逃げるんですか?」
この、語尾を微妙に伸ばす喋り方すごいムカつく。私は振り返らず、
「逃げてないわよ、電車に乗るために走ってたの」
相良は首を傾げ、
「先輩ってー、まだホモのエロ漫画描いてるんですか?」
「っっっ!!」
私は慌てて振り向き、相良の口を塞ぐ。
改めて、相良義明の顔と向き合う。CMでよく見る、人気俳優を軽薄にしたような顔をしている。彼はクズ特有の、罪悪感皆無の笑みを浮かべ、
「読ませてくださいよ、ケツ漫画」
私は相良の顔を思いっきり鞄で殴りつけた。
****
さかのぼること10年前、17のころ。私は漫画家を目指し、美術部に入って日々デッサンに励んでいた。
私の通う学校は部活動が必須で、仕方なく部活に入っている幽霊部員も結構いた。
その中の一人が相良である。
彼はルックスがよく、明るい性格だったので、たまにふらっとくるだけで女子部員に群がられていた。ちなみに私はなんとなく相良が苦手だった。話したことはなかったけど、目が笑ってない感じがしたのだ。
そんなある日。
私は漫画ノートを部室に忘れて来たのに気づき、慌てて引き返した。部室の扉を開けたら、相良が机にお尻を乗せ、ノートをパラパラめくっていた。あれは、私のノートだ!
「っっっ!」
私は慌てて駆け寄り、相良からノートを奪い取った。
「あれ、先輩ちーす」
「み、見た?」
「見ましたー。先輩、絵うまいっすね」
あ、もしかしたら最初の方だけ見られたのかも。ホッとしたのもつかの間。
「ホモが好きなんですかー?」
私はひっ、と喉を鳴らした。そう……私が描いていたのはBL漫画だったのだ。ちなみに誰にも言ったことはなかった。
「ホモが好きじゃ悪い!?」
「えー、悪くないですよ。なんでキレてるんですかー?」
相良はけらけら笑い、
「これ、貸してもらっていいですか?」
「な、なんで」
「絵うまいし、コピーしたいなって。友達に見せたいし」
こいつは何を言ってるんだ……。
「だめよ、何言ってんの」
「いいじゃないですか。コピーしたら返しますから、ね」
私と相良はノートの引っ張りあいをした。その拍子に、びりっ、とものすごい音を立ててノートが破れた。
「!!!」
「あっ」
相良は真っ二つになったノートを見て、目を瞬いた。
「あー、すいません、破れちゃった」
「……歯を食いしばれ」
「へ?」
私は相良のほおに、思いっきり平手打ちした。
相良が私に携帯を向けて、にやにや笑っている。
「ほら、もっと足広げないと見えませんよ」
こいつ、殺したい、ほんとに。私は指先を蜜口に這わした。露わになって、鳥肌が浮いた胸を触る。感じはしない。ただ心臓は痛いくらいに鳴っていた。
相良の視線を感じる。なんで、彼氏でもない男にこんなとこ見せなくちゃいけないんだろう。
──話は3日前にさかのぼる。
☆
パァン!
盛大に響き渡った乾いた音に、私は視線をやった。駅の改札近く、男が女に頰を叩かれている。女は舌打ちしそうな顔で毒づく。
「……さいってい」
そのままさっさと歩いて行った。なんだ、痴話喧嘩か。こわいこわい。私は定期を取り出し、改札を抜けようとした。
「あれ、吉永先輩?」
声をかけられ、振り向く。痴話喧嘩で頰を叩かれた男がこちらを見ていた。見覚えのある顔に、喉をひきつらせる。
──げっ。
私は素早く定期をタッチして改札を抜け、ホームへの階段を駆け上がった。
ちょうど電車が来ていて、発車を知らせるベルが鳴り響いていた。よし、あれに乗ろう。ドアに駆け込む寸前、ぐい、と腕を引かれた。
「吉永先輩ですよねー、なんで逃げるんですか?」
この、語尾を微妙に伸ばす喋り方すごいムカつく。私は振り返らず、
「逃げてないわよ、電車に乗るために走ってたの」
相良は首を傾げ、
「先輩ってー、まだホモのエロ漫画描いてるんですか?」
「っっっ!!」
私は慌てて振り向き、相良の口を塞ぐ。
改めて、相良義明の顔と向き合う。CMでよく見る、人気俳優を軽薄にしたような顔をしている。彼はクズ特有の、罪悪感皆無の笑みを浮かべ、
「読ませてくださいよ、ケツ漫画」
私は相良の顔を思いっきり鞄で殴りつけた。
****
さかのぼること10年前、17のころ。私は漫画家を目指し、美術部に入って日々デッサンに励んでいた。
私の通う学校は部活動が必須で、仕方なく部活に入っている幽霊部員も結構いた。
その中の一人が相良である。
彼はルックスがよく、明るい性格だったので、たまにふらっとくるだけで女子部員に群がられていた。ちなみに私はなんとなく相良が苦手だった。話したことはなかったけど、目が笑ってない感じがしたのだ。
そんなある日。
私は漫画ノートを部室に忘れて来たのに気づき、慌てて引き返した。部室の扉を開けたら、相良が机にお尻を乗せ、ノートをパラパラめくっていた。あれは、私のノートだ!
「っっっ!」
私は慌てて駆け寄り、相良からノートを奪い取った。
「あれ、先輩ちーす」
「み、見た?」
「見ましたー。先輩、絵うまいっすね」
あ、もしかしたら最初の方だけ見られたのかも。ホッとしたのもつかの間。
「ホモが好きなんですかー?」
私はひっ、と喉を鳴らした。そう……私が描いていたのはBL漫画だったのだ。ちなみに誰にも言ったことはなかった。
「ホモが好きじゃ悪い!?」
「えー、悪くないですよ。なんでキレてるんですかー?」
相良はけらけら笑い、
「これ、貸してもらっていいですか?」
「な、なんで」
「絵うまいし、コピーしたいなって。友達に見せたいし」
こいつは何を言ってるんだ……。
「だめよ、何言ってんの」
「いいじゃないですか。コピーしたら返しますから、ね」
私と相良はノートの引っ張りあいをした。その拍子に、びりっ、とものすごい音を立ててノートが破れた。
「!!!」
「あっ」
相良は真っ二つになったノートを見て、目を瞬いた。
「あー、すいません、破れちゃった」
「……歯を食いしばれ」
「へ?」
私は相良のほおに、思いっきり平手打ちした。
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