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23.気持ちは駆け上がっている
国王イシュトバーン陛下が、急な病に倒れられた。
けれど、わたしには、王妃フランツィスカ陛下からご書簡で、
――花冠巡賜は、滞りなく続けるように。
と、格別のお言葉を賜る。
そのお言葉はむしろ、国王陛下の御容態の深刻さを表していた。
王国と王都の動揺を抑えんがため、華やかな〈花冠巡賜〉の祭礼を取りやめたり、中断することはあってはならない。
フランツィスカ陛下の強いご意志が込められたような書簡を手に、わたしは立ち尽くした。
アルパード殿下の動静は、わたしのいる花乙女宮まで伝わってこない。
御父君がお倒れになられ、あのやさし過ぎる王太子のお心が、どれほどに乱れておられることか。
そばにいられないことが、歯がゆい。
しかし、いまのわたしに出来ることは、フランツィスカ陛下の仰られる通り、花冠巡賜をつつがなく終らせ〈柘榴離宮〉に遷ること。
心のうちの動揺を押さえ込み、途切れない小雨の振り続けるなか、
翌日の、返礼茶会に臨む。
「あれは、父上が悪かったのです」
「はは……、いや、……お恥ずかしい」
「ガブリエラ様が気に病まれる必要などありません。あとで私も母上も、父上のことを叱っていたのですよ?」
と、わたしのために怒ってみせてくれる14歳の少女。ラコチ侯爵家のヘレナ様だ。
父君のラコチ侯爵ミハーイ閣下が、ふざけて酒杯を勧め、
「え? イヤですけど?」
と、わたしがやらかした3年前の事件を、まだ怒ってくださっていた。
あのあと、エルジェーベト様のお取り成しがあったとはいえ、ミハーイ閣下とは当然、疎遠になった。
先ごろ、社交界にデビューされたばかりのヘレナ様とも、ゆっくりお話させていただくのは初めてのことだった。
「だいたい、父上は王家の血を引くからといって尊大に振る舞い過ぎなのです」
「あ、はは……」
「いくら父上の父が王弟殿下だからといって、父上ご自身は侯爵。侯爵は侯爵。それも御家、ホルヴァース侯爵家と比べたら領地は半分以下の家格。身の程を弁えるべきなのですわ」
とまあ、ヘレナ様は幼さものこる可愛らしいお顔立ちをされているのに、ずいぶんと毒舌でいらっしゃられた。
ぷくっと膨らませて見せてくださるヘレナ様のほっぺたには特に幼さがのこって見え、つついたり撫でたりさせてもらいたい。
その可愛らしいお口から、父君への悪口雑言が尽きないのだ。
こちらの方が反応に困る。
「父は、アルパード殿下がご誕生にならなければ、いずれ自分が国王にと思っていたのです」
「い、いや……、そこまでは」
「いえ、間違いありません。……父が、アルパード殿下にまで尊大にふる舞う様に、私は恥ずかしい思いをしてばかりです」
それは、お気の毒としか言いようがない。
「母グンヒルトも私も、常識というものがあります」
「はい……」
「……母は異国の生まれ。遠く北方のゼーエン公国から輿入れして来ました」
「ええ……」
「だからこそ、ヴィラーグ王国の文化や風習に合わせようと懸命に努力されているのに、……父上があれでは台無しです」
誰にも話を聞かれる恐れのない、花乙女宮の最上階。四方がひらけた小部屋。
ヘレナ様はふだん溜めこんでいる憂さを、吐き出されているのだろう。
御父母の間には、明確な諍いがあるのかもしれない。
「……ヘレナ様は、頑張っておられるのですね」
と、わたしが見詰めると、ヘレナ様はグッと奥歯を噛みしめてうつむき、黙り込んでしまわれた。
わが家は父母の仲が、実に良好だ。
凛々しい母エディトは、いつも父カーロイのことを立ててふる舞い、笑顔が絶えない。
高位貴族の家庭としては、すこし異質なのかもしれない。
他国から嫁いでくるということは、両国間の友好を担われるということでもある。
それを、夫に邪魔されたのでは、たまったものではない……。ヘレナ様の母君グンヒルト様は、そういった心持ちなのかもしれなかった。
気が付くと、ヘレナ様は大粒の涙をこぼされていた。
「……父上が」
「ええ……」
「国王陛下がお倒れになられたことについて……、喜ぶようなことを言うのです」
「まあ……」
「お姉様!」
と、まん丸で大きな瞳にいっぱいの涙をためたヘレナ様が顔をあげ、わたしを見詰めた。
――お、お姉様……、か。悪くないな。
なんて気持ちも起きるのだけど、父の不敬を告白しているのだ。並大抵の覚悟ではないだろう。
「……ラコチ侯爵家は、私が必ずしっかりさせます。どうか……、王太子妃になられましても、温かくお見守りくださいませんでしょうか」
「もちろんですわ、ヘレナ様」
いずれは嫁に行くヘレナ様。けれど、生まれた家のことが心配でならない。
そのお気持ちは、わたしにもよく分かった。
「……みずからが国王となられても遜色ないと、御父君ミハーイ閣下の矜持。感服いたしました」
「お姉様……」
「大丈夫です、大丈夫。王弟ヨージェフ殿下も、兄君であられる国王陛下の治世をずっとお支えになられてきました。きっとミハーイ閣下も、その忠義の心を受け継がれておられますとも」
わたしが微笑んでみせると、ヘレナ様はわたしの胸に顔を埋めて、シクシク泣き始めた。
わたしにはリリがいた。
けれど、なかなか誰かに打ち明けて、相談できることではない。
14歳とまだ幼いヘレナ様なら尚更だ。
尊貴な血統と家格がつり合わない。おいそれとは解決できない問題だし、最後は本人の心の置きどころに依る。
幼い娘に意見され、ミハーイ閣下が強くはね退けられても不思議ではない。
ヘレナ様にとって、穏便な落着は、絶望的に遠い道のりに見えるに違いない。
小雨ふる音が響く小部屋で、ヘレナ様が泣き止まれるまで、背中をポンポンと叩き続けた。
Ψ
翌日は休息日だったけれど、どことなく落ち着かずに過ごしてしまった。
しとしと雨の降り続ける花壇を眺めていると、そばにリリが座った。
「……出兵の準備を、詰め直しておられるのだと思うぞ?」
わたしがアルパード殿下のことを考えていることを見透かしたように、かるく微笑んだリリが、わたしの肩に手を置いた。
「そうね……。きっと、お忙しくされてるわね」
その夕方、王妃フランツィスカ陛下が王権の代行を宣言され、宮廷を王妃宮殿に遷されたと報せが届いた。
「これは、……相当にお悪いな」
と、つぶやくリリの声もくぐもる。
「……国王陛下が、政務をお執りになれる状態ではないってことだものね」
「ガブ……、大丈夫か?」
「ん? なにが?」
「えっと……、ずいぶん表情が険しい」
「そりゃ、陛下の一大事だもの。険しい表情くらいさせてよ」
翌日、降り止まない雨のなか、花冠巡賜の馬車を走らせる。
沿道にならぶ民衆の表情が冴えないのは、雨のせいばかりではない。
国王陛下、倒れる。
の報に浮足立っているのは、ヘレナ様のラコチ侯爵家だけではない。
王国全土が揺れている。
それでも、わたしに出来ることは、花冠巡賜をつつがなく催行することだけ。
次の王太子妃に相応しいと、優雅に微笑み、お茶をして、各家の歴史と伝統を褒めそやし、麗しい花冠を授けてもらう。
わたしにとって一世一代であると同時に、授けてくださるご令嬢にとっても一世一代の晴れ舞台。もてなしに応える微笑みを、曇らせる訳にはいかない。
「とても素晴らしい歓待を賜り、このガブリエラ、栄誉の極み。生涯、忘れることはございませんわ」
と、恭しくカーテシーの礼で屋敷をあとにすると、花冠役のご令嬢はじめ、多くのメイドたちの皆が、安堵の笑みで送り出してくださる。
アルパード殿下をお守りし、お支えする。
わたしの決意は微塵も揺らいでいない。その決意を現実の形にするには、それに相応しい地位まで昇らなくてはならない。
王太子妃。
王国にひとりしかいない、尊貴な立場。
わたしが、その地位まで駆け上がり、きっと御父君が倒れられたことで動揺している、やさし過ぎる夫を守る。
だけど、現実には花冠巡賜でさえ、あと58日も残している。
気持ちは駆け上がっているのだけど、実際には定められた儀礼の通りに進行し、それはひどくゆったりと優雅なもので、もどかしくてたまらない。
今すぐにもアルパード殿下のお側に駆け付け、寄り添いたい気持ちを押し殺し、わたしが王太子妃に相応しいと、承認と祝福の花冠を授けてもらわなくてはならない。
そして、翌日。返礼の茶会を終えたわたしに、王妃宮殿から報せが届いた。
アルパード殿下が、国王陛下に代わられ東方出兵の兵を率いられるとのことだった。
あの、やさし過ぎるわたしの婚約者、やさし過ぎるふわふわ王太子が、
戦場に行く――。
けれど、わたしには、王妃フランツィスカ陛下からご書簡で、
――花冠巡賜は、滞りなく続けるように。
と、格別のお言葉を賜る。
そのお言葉はむしろ、国王陛下の御容態の深刻さを表していた。
王国と王都の動揺を抑えんがため、華やかな〈花冠巡賜〉の祭礼を取りやめたり、中断することはあってはならない。
フランツィスカ陛下の強いご意志が込められたような書簡を手に、わたしは立ち尽くした。
アルパード殿下の動静は、わたしのいる花乙女宮まで伝わってこない。
御父君がお倒れになられ、あのやさし過ぎる王太子のお心が、どれほどに乱れておられることか。
そばにいられないことが、歯がゆい。
しかし、いまのわたしに出来ることは、フランツィスカ陛下の仰られる通り、花冠巡賜をつつがなく終らせ〈柘榴離宮〉に遷ること。
心のうちの動揺を押さえ込み、途切れない小雨の振り続けるなか、
翌日の、返礼茶会に臨む。
「あれは、父上が悪かったのです」
「はは……、いや、……お恥ずかしい」
「ガブリエラ様が気に病まれる必要などありません。あとで私も母上も、父上のことを叱っていたのですよ?」
と、わたしのために怒ってみせてくれる14歳の少女。ラコチ侯爵家のヘレナ様だ。
父君のラコチ侯爵ミハーイ閣下が、ふざけて酒杯を勧め、
「え? イヤですけど?」
と、わたしがやらかした3年前の事件を、まだ怒ってくださっていた。
あのあと、エルジェーベト様のお取り成しがあったとはいえ、ミハーイ閣下とは当然、疎遠になった。
先ごろ、社交界にデビューされたばかりのヘレナ様とも、ゆっくりお話させていただくのは初めてのことだった。
「だいたい、父上は王家の血を引くからといって尊大に振る舞い過ぎなのです」
「あ、はは……」
「いくら父上の父が王弟殿下だからといって、父上ご自身は侯爵。侯爵は侯爵。それも御家、ホルヴァース侯爵家と比べたら領地は半分以下の家格。身の程を弁えるべきなのですわ」
とまあ、ヘレナ様は幼さものこる可愛らしいお顔立ちをされているのに、ずいぶんと毒舌でいらっしゃられた。
ぷくっと膨らませて見せてくださるヘレナ様のほっぺたには特に幼さがのこって見え、つついたり撫でたりさせてもらいたい。
その可愛らしいお口から、父君への悪口雑言が尽きないのだ。
こちらの方が反応に困る。
「父は、アルパード殿下がご誕生にならなければ、いずれ自分が国王にと思っていたのです」
「い、いや……、そこまでは」
「いえ、間違いありません。……父が、アルパード殿下にまで尊大にふる舞う様に、私は恥ずかしい思いをしてばかりです」
それは、お気の毒としか言いようがない。
「母グンヒルトも私も、常識というものがあります」
「はい……」
「……母は異国の生まれ。遠く北方のゼーエン公国から輿入れして来ました」
「ええ……」
「だからこそ、ヴィラーグ王国の文化や風習に合わせようと懸命に努力されているのに、……父上があれでは台無しです」
誰にも話を聞かれる恐れのない、花乙女宮の最上階。四方がひらけた小部屋。
ヘレナ様はふだん溜めこんでいる憂さを、吐き出されているのだろう。
御父母の間には、明確な諍いがあるのかもしれない。
「……ヘレナ様は、頑張っておられるのですね」
と、わたしが見詰めると、ヘレナ様はグッと奥歯を噛みしめてうつむき、黙り込んでしまわれた。
わが家は父母の仲が、実に良好だ。
凛々しい母エディトは、いつも父カーロイのことを立ててふる舞い、笑顔が絶えない。
高位貴族の家庭としては、すこし異質なのかもしれない。
他国から嫁いでくるということは、両国間の友好を担われるということでもある。
それを、夫に邪魔されたのでは、たまったものではない……。ヘレナ様の母君グンヒルト様は、そういった心持ちなのかもしれなかった。
気が付くと、ヘレナ様は大粒の涙をこぼされていた。
「……父上が」
「ええ……」
「国王陛下がお倒れになられたことについて……、喜ぶようなことを言うのです」
「まあ……」
「お姉様!」
と、まん丸で大きな瞳にいっぱいの涙をためたヘレナ様が顔をあげ、わたしを見詰めた。
――お、お姉様……、か。悪くないな。
なんて気持ちも起きるのだけど、父の不敬を告白しているのだ。並大抵の覚悟ではないだろう。
「……ラコチ侯爵家は、私が必ずしっかりさせます。どうか……、王太子妃になられましても、温かくお見守りくださいませんでしょうか」
「もちろんですわ、ヘレナ様」
いずれは嫁に行くヘレナ様。けれど、生まれた家のことが心配でならない。
そのお気持ちは、わたしにもよく分かった。
「……みずからが国王となられても遜色ないと、御父君ミハーイ閣下の矜持。感服いたしました」
「お姉様……」
「大丈夫です、大丈夫。王弟ヨージェフ殿下も、兄君であられる国王陛下の治世をずっとお支えになられてきました。きっとミハーイ閣下も、その忠義の心を受け継がれておられますとも」
わたしが微笑んでみせると、ヘレナ様はわたしの胸に顔を埋めて、シクシク泣き始めた。
わたしにはリリがいた。
けれど、なかなか誰かに打ち明けて、相談できることではない。
14歳とまだ幼いヘレナ様なら尚更だ。
尊貴な血統と家格がつり合わない。おいそれとは解決できない問題だし、最後は本人の心の置きどころに依る。
幼い娘に意見され、ミハーイ閣下が強くはね退けられても不思議ではない。
ヘレナ様にとって、穏便な落着は、絶望的に遠い道のりに見えるに違いない。
小雨ふる音が響く小部屋で、ヘレナ様が泣き止まれるまで、背中をポンポンと叩き続けた。
Ψ
翌日は休息日だったけれど、どことなく落ち着かずに過ごしてしまった。
しとしと雨の降り続ける花壇を眺めていると、そばにリリが座った。
「……出兵の準備を、詰め直しておられるのだと思うぞ?」
わたしがアルパード殿下のことを考えていることを見透かしたように、かるく微笑んだリリが、わたしの肩に手を置いた。
「そうね……。きっと、お忙しくされてるわね」
その夕方、王妃フランツィスカ陛下が王権の代行を宣言され、宮廷を王妃宮殿に遷されたと報せが届いた。
「これは、……相当にお悪いな」
と、つぶやくリリの声もくぐもる。
「……国王陛下が、政務をお執りになれる状態ではないってことだものね」
「ガブ……、大丈夫か?」
「ん? なにが?」
「えっと……、ずいぶん表情が険しい」
「そりゃ、陛下の一大事だもの。険しい表情くらいさせてよ」
翌日、降り止まない雨のなか、花冠巡賜の馬車を走らせる。
沿道にならぶ民衆の表情が冴えないのは、雨のせいばかりではない。
国王陛下、倒れる。
の報に浮足立っているのは、ヘレナ様のラコチ侯爵家だけではない。
王国全土が揺れている。
それでも、わたしに出来ることは、花冠巡賜をつつがなく催行することだけ。
次の王太子妃に相応しいと、優雅に微笑み、お茶をして、各家の歴史と伝統を褒めそやし、麗しい花冠を授けてもらう。
わたしにとって一世一代であると同時に、授けてくださるご令嬢にとっても一世一代の晴れ舞台。もてなしに応える微笑みを、曇らせる訳にはいかない。
「とても素晴らしい歓待を賜り、このガブリエラ、栄誉の極み。生涯、忘れることはございませんわ」
と、恭しくカーテシーの礼で屋敷をあとにすると、花冠役のご令嬢はじめ、多くのメイドたちの皆が、安堵の笑みで送り出してくださる。
アルパード殿下をお守りし、お支えする。
わたしの決意は微塵も揺らいでいない。その決意を現実の形にするには、それに相応しい地位まで昇らなくてはならない。
王太子妃。
王国にひとりしかいない、尊貴な立場。
わたしが、その地位まで駆け上がり、きっと御父君が倒れられたことで動揺している、やさし過ぎる夫を守る。
だけど、現実には花冠巡賜でさえ、あと58日も残している。
気持ちは駆け上がっているのだけど、実際には定められた儀礼の通りに進行し、それはひどくゆったりと優雅なもので、もどかしくてたまらない。
今すぐにもアルパード殿下のお側に駆け付け、寄り添いたい気持ちを押し殺し、わたしが王太子妃に相応しいと、承認と祝福の花冠を授けてもらわなくてはならない。
そして、翌日。返礼の茶会を終えたわたしに、王妃宮殿から報せが届いた。
アルパード殿下が、国王陛下に代わられ東方出兵の兵を率いられるとのことだった。
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