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最終話.わたしは、幸せだ。
ヴィクトリア殿下を焚き付けた、有力領邦君主たちの馬車が次々にエルハーベン宮殿へと到着する。
普段は領地に住むくせに、密かに帝都入りし、政変の行方を息を潜めて見守っていたのだ。
「まったく……。どいつもこいつも、喰えないヤツばっかりだ」
と、苦笑いして、豪華なソファに身体を伸ばした。
謁見の間。中央に設え直した8000本の薔薇からなる〈薔薇の壁面〉が、領邦君主たちの息を呑ませる。
わたしは新皇帝ゲオルグ2世に両膝を突かせ、厳かに帝冠を載せた。
そして、新皇帝ゲオルグ2世と玉座を並べて座り、互いの重臣を立ち並ばせ、謁見式が華々しく執り行われた。
帝冠を授けるヴィラーグ王は皇帝が下座に置けない存在であると、両国重臣承認のもと、ひろく世に知らしめられた。
さらに、両国重臣の発議によって、わたしはゲオルグ2世を呼び捨てとし、ゲオルグ2世はわたしに〈陛下〉の尊称を奉る、新たな礼遇も定められる。
晴れがましくも誇らしい気持ちと、わたしとアルパード殿下の苦難の1年に対しては安いなという気持ちと、複雑な心境だ。
ゲオルグ2世は帝国の先例により、皇后に授ける〈ミットグリード女公〉の称号を、カタリン様に授け、
カタリン様は次期皇后に内定した。
ま、平たく言えば、
ご婚約が正式に成立した。
「おめでとう、カタリン」
「ガブリエラ陛下より祝福のお言葉を賜りましたこと、幸甚に存じます」
と、カタリン様は群臣見守る中、わたしに優美なカーテシーを捧げてくださり、わたしが帝国に冠たる皇帝と皇后から尊崇される存在であると重ねて示す。
でも、わたしは、そんな儀礼的な話よりなにより、カタリン様が愛する伴侶に巡り合うことができ、幸福をつかまれたことに感無量だった。
この苦難の日々がもたらした、たったひとつの良い出来事が、カタリン様にゲオルグさんを巡り合わせてくれたことだと思う。
――ゲオルグさん。カタリン様を泣かせたら、わたしが承知しないぞ!?
と、思いながら、優雅に微笑み、ふたりを祝福した。
怒涛の1日が終わり、エルハーベン宮殿から出て、夕闇を見上げた。
去年の今日、わたしは〈花冠巡賜〉をやり遂げた。
花乙女宮から退出されるお母様を、壮麗な花壇で見送り、
アルパード殿下の船が少し遅れてるなと思いながら、それでも、明日にもお迎えに来ていただけるものだと、胸を膨らませ、
見上げた――、夕闇。
まるで、あの日の夕闇がここまで伸びてきたかのように、わたしの胸のなかを満たしてくれた。
そのとき、
――暑っ……。
と、盛夏の暑気が、突然、わたしに襲いかかってきたかのように感じた。
眼前に広がる、夕闇覆う帝都の街並みが傾いていき、
ヴィクトリア殿下に抱き止められて、倒れたのが自分の方であることに気が付いた。
「お疲れが出たのだろう」
と、ヴィクトリア殿下が、みなの動揺を鎮めてくださり、顔を青くしたイロナが冷たい水を持って来てくれる。
エレノールが日傘を差してくれ、周囲の視線からわたしを遮った。
「馬車は身体にこたえる。エルハーベン宮殿に部屋を借り、今夜はこのまま休まれては?」
と、ヴィクトリア殿下がわたしにやさしく微笑みかけて下さった、そのときだった。
夕闇が宵闇へと移りゆく中、エルハーベン宮殿の豪壮な宮門から帝都の市街に向け、光の筋が伸びてゆく。
ゆらゆらと伸びる光の筋は二本。わたしが花壇を開いた邸宅へとつながった。
ランタンを手にした数多くの民衆が、沿道を明るく照らし、わたしの〈凱旋〉を祝おうと待ち構えてくれていた。
「……わたしを支え、援けてくれた、帝都の民に応えなくては……」
と、身体を起こそうとするのだけど、力がうまく入らない。
ヴィクトリア殿下とカタリン様が両脇からわたしを抱え上げてくださって、なんとか馬車へと乗り込む。
おふたりも、そのままわたしの馬車に乗り込まれ、両隣からわたしの身体を支え、座らせてくださりながら、
わたしと一緒に、熱狂する民衆へと、にこやかに手を振ってくださった。
馬車への陪乗。
帝国内外、全ピエカルの総帥、女大公ヴィクトリア殿下と、次期皇后たるミットグリード女公カタリン殿下が、
わたしへの臣従の意を表したにも等しい。
「す、すみません……。ヴィクトリア殿下……」
「なに。我らは〈マウゴジャータの腕輪〉を分け合ったのだ。義姉妹にも等しい仲ではないか」
「義姉妹……」
「ああ、そうだ」
「無頼令嬢マウゴジャータと、片刃の剣聖オクサナみたいにですか?」
「ああ、その通りだ」
「親衛隊長ヴィカに流浪のベアタ、アバズレのナスタ、斬り込み隊長、鉄火のバシュカ、……みたいにですか?」
「ふふっ。そうだな」
「喧嘩上等、知略のヨアンナ。剛毅果断、商才のカタジナ。おきにのクリチュ……、みたいにですか!?」
「ははははっ! ガブリエラ陛下は私より無頼令嬢マウゴジャータに詳しいな」
「へへっ、……嬉しいです、姐さん」
馬車のなかで、わたしの身体がグラつくと、カタリン様もお支えくださる。
「すみません……、カタリン様にまでこんなことさせてしまって」
「私ったら、自分より〈いい女〉には、尽くすタイプなのよ。知らなかった?」
「……え?」
「自分より〈いい女〉を、いじめたり攻撃するような女にはなりたくないの。私より〈いい女〉のガブリエラを支えられるだなんて、女冥利に尽きるわ」
「……カタリン様ったら、いい女ですね」
「ふふっ。……知ってるわよ」
と、馬車のなかで3人、微笑みを絶やすことなく、外の民衆に手を振りながら、唇をほとんど動かさずに囁き合う。
貴族令嬢の、優雅なる嗜みだ。
やがて、わたしの馬車を先頭にした煌びやかな馬車の隊列が、花の邸宅に入り、
わたしは、ぶっ倒れた。
Ψ
翌朝。エレノールがおっとりと子羊のスープを飲ませてくれて、その後はリリがずっと側についていてくれた。
夏の朝。
今年初めて、暑さを感じていた。
数日が経って、わたしが迎えに行くはずだったアルパード殿下はすでに解放され、こちらに向かっておられると急使が届いた。
窓の外に入道雲を見上げる。
「……リリ」
「なんだ?」
「……わたし、不甲斐ないわね」
「ああ、不甲斐ないな」
ベッドの中で身体を起こし、夏空を見上げるわたしの嘆きに、リリが付き合ってくれた。
「……とっても、不甲斐ないわ」
「ああ。ガブは不甲斐ないな。王太子妃教育を歴代最速で終え、王弟の王位簒奪を防ぎ、ラコチ侯爵には騎槍をぶっ刺して、カールマーン公爵の野望を封じ、王国存亡の危機に、華麗なる花の宮廷を開いて国をまとめ上げ、伝説の女王を味方に、ワルデン公を退位に追い込み、南西女神諸国9ヶ国のみならず、華麗なる王族外交を展開してギレンシュテット王国はじめ北西女神諸国3ヶ国まで名を連ねた歴史にのこる共同書簡の発出に成功、閑雅なるリリを筆頭に優雅なる花衣伯爵家のご令嬢方を使者に立てた〈花冠外交〉を展開して、大帝国の政変を誘発、皇帝アルブレヒト3世を追い落として、新皇帝には帝冠を授け玉座を並べた。あまつさえ、女大公ヴィクトリアと次期皇后カタリンを馬車に陪乗させた凱旋行列を帝都の民衆に出迎えさせて、……倒れる。なんて不甲斐ない女なんだ」
「……リリ」
「なんだ?」
「そこまで言うなら、……素直に褒めていいのよ?」
「すごいな、ガブは」
「うん……」
「すこし、休め」
やがて、アルパード殿下の捕囚生活が明らかになった。
アルパード殿下は、ご自分を幽閉するズュートインゼル城の城兵のことごとくを、心服せしめていたのだ。
臣従を望む者や、脱出を勧める者が続出。
だけど、アルパード殿下は、
「ボクがそんなことをしたら、キミたちの家族にまで累が及ぶよ? 主君には忠義を持って仕えるべきだよ」
と、やさしく諭し、城兵たちをますます心服させていた。
「ボクの妃になるガブリエラは、すごい人なんだ。きっと、ボクを救けに来てくれる。だから、キミたちはキミたちの主命を守るんだよ」
と、微笑むアルパード殿下に、
城兵のひとりが勿忘草の種を差し入れた。
わたしが〈勿忘草の騎士座〉に就いたという噂を、どこかで耳にしたのだという。
花の王国の王太子は、幽閉された部屋の窓辺で見事な花を咲かせた。
――わたしを忘れないで。
はるか遠くのアルパード殿下に、わたしの想いは届いていた。
そして、アルパード殿下の咲かせた季節外れの勿忘草が、帝都の邸宅で待つわたしの手元に早馬で届けられた。
――はい! すごいのです! 意外とやるのです、わたしの旦那様になる方は!
花冠巡賜の最終日。お母様に存分に自慢させてもらった、わたしの旦那様。
アルパード殿下のすみれ色の瞳に似た色をしたちいさな花が、わたしの手の中で、儚げな五弁の花びらを、
力強く、揺らしていた。
いまアルパード殿下は、ともに囚われていた近衛兵約20名を率いられ、どうしても見送りさせてほしいと、地に伏して願い出た城兵たちの徒歩の行軍に護られながら、
こちらに向われている。
ゆっくりとした行軍だけど、わたしも体力を回復させるのにちょうどいい。
わたしだって、どうせなら素敵なドレスに身を包み、邸宅で咲き誇る花壇のなかに立ち、笑顔でアルパード殿下との再会を果たしたい。
わたしは身体を起こせるようになってすぐ、ひとつの勅命を発し、ヴィラーグの王都に早馬で届けた。
すでに、アルパード殿下の解放は最速の急使で知らせており、折り返し、フランツィスカ陛下より喜びのご書簡も頂戴した。
国王イシュトバーン陛下のご容体は、いよいよすぐれないとのことだったけれど、国王陛下も大層お喜びだとのことだった。
わたしが王権代行者として、恐らく最後に発する勅命。それは――、
――結婚、解禁!!!!!!!!
だ。
わたしとアルパード殿下に憚って、結婚を控えられてた貴族令嬢のみなさ~~ん!!
帰国したら、わたしの王権代行者最後の仕事として、バンバン決裁して、バンバン勅許を出すから、
とりあえず〈花乙女宮〉に届けだけでも、出しておいてくださぁ~~~~っい!!!
という、お報せだ。
愚かな皇帝の非道な所業が、たくさんの乙女たちの恋と結婚を足踏みさせた。
まったく、許せない話だ。
けれど、いまさらあの顎のほそい醜悪な老爺を思い出すだけでも馬鹿馬鹿しい。
新皇帝ゲオルグ2世の父親、つまりは前の皇帝アルブレヒト3世の嫡男は、異民族への反攻で戦死していたらしい。
冥府に旅立った者を貶めるつもりはないけれど、それはそれは無様で惨めな敗戦であったそうだ。
それで、アルブレヒトは、アルパード殿下の挙げられた武勲をやっかんだ。
――小さい男だ。
前ワルデン公から話を持ちかけられたのをもっけの幸いと、囚われの身とし、巨額の身代金を支払わせ、アルパード殿下を貶めようとした。
憤りと呆れが、どちらも天を突く勢いだ。
せめて、みなの結婚を、一点の曇りもない笑顔で祝い合い、満開に咲き乱れる乙女の笑顔で、花の王国を埋め尽くしてやる。
早馬に、勅命を託した。
Ψ
邸宅の花壇が、早咲きの秋の花々に入れ替えられた頃、アルパード殿下ご到着の先触れが届いた。
赤毛と栗毛の庭師の女の子ふたりが、季節でない勿忘草を咲かせてくれ、花壇の足元はあわい青色で埋め尽くされた。
イロナとエレノールが、目にいっぱいの涙を溜めた満面の笑みで、わたしを勿忘草色のドレスに着替えさせてくれる。
ヴィクトリア殿下やヴェーラ陛下、わたしと一緒に皇帝に対峙してくれたみな様方も駆け付けてくださり、
今はまだわたしの重臣でもあるカタリン様をはじめ、エルジェーベト様、レオノーラ様、ヘレナ様、エスメラルダ様、そしてリリと、わたしをずっと支えてくれた重臣たちも一緒に、わたしの後ろに立ち並んで、
アルパード殿下のご到着をお待ちする。
やがて、馬車の止まる音がして、
広大な花壇――お花畑の向こう側から姿をみせられたアルパード殿下は、
物語の中の貴公子そのもの。
そして、ニコニコとした微笑みには、影のない精悍さを加えていた。
「お帰りなさいませ、アルパード殿下」
「ただいま、ガブリエラ」
互いに見つめ合い、こみ上げてくる万感の想いで、それ以上の言葉が出ない。
美麗な貴公子。
やがて、天を仰がれるや、滂沱の涙をこぼされた。
かつて、ヨラーンの処刑に心を痛め、自ら封印された感情が、抑えきれずに噴出するかのように、アルパード殿下の涙は止まらなかった。
わたしの〈ふわふわ王太子〉は〈泣きべそ王太子〉になって帰って来た。
「ガブリエラは、きっとボクを救け出してくれると思っていたよ」
わたしに寄せてくださる、アルパード殿下の厚い信頼と愛情とが伝わり、
泣きべそはかいているけれど、ご苦難が、アルパード殿下をひと回りもふた回りも大きな男に成長させていることも感じとれ、
わたしも胸を熱くする。
抱き締めてさし上げたくて、歩み寄り、アルパード殿下の胸に、そっと、わたしの手をのせたときだった。
「すごいね、ガブリエラは」
あっ!!!!!!!!!!!!!!
いまは……、
みんな、見てる……、
から……、
ダ、メ……、
と、
動揺した〈勿忘草の騎士〉ガブリエラ。アルパード殿下の腕を抑える反応が遅れた。
ポン、
ポン、
……。
く、
くわぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!
パカッと大口を開けて天を仰ぎ、
顔を真っ赤に身じろぎひとつせず、全身を突き抜ける快感に、ひたすら耐える女と、
十数年ぶりに流す涙が止まらない男。
わたしの心のなかで起きていることまでは解らない乙女方が、
感動の涙をぬぐいながら、温かい目でお見守りくださる。
わたしが必死で耐えていると、アルパード殿下の目が、わたしの後ろに向いた。
「ヨラーン……」
「ガブリエラ陛下の御厚情にて……」
「すごいね、ガブリエラは」
ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~っ!
「レトキの女王、ヴェーラにございます」
「すごいね、ガブリエラは」
ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~っ!
「女大公ヴィクトリア、馳せ参じました」
「すごいね、ガブリエラは」
ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~っ!
天を仰いだまま身動きできないわたしをよそに、みながアルパード殿下の帰還を寿ぎ、祝福の拝礼を捧げては、
「すごいね、ガブリエラは」
ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~っ!
高貴なるご令嬢、ご夫人方が織りなす感動の渦の中心で、わたしはただひたすら天を仰ぎ、口をパカッとあけて、耐えていた。
すみません……、みんな、はやくどっか行ってください。
ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!
災難だ。
Ψ
すぐにも帰国しようと言うわたしを、無理したらダメだと、みなに押しとどめられ、
さらに3日ほど静養。
出発後は馬車を急がせ、20日ほどで帰国した。
その間、アルパード殿下とふたりきりの馬車のなかでは、この1年ほどに起きた出来事をお話ししては、
「すごいね、ガブリエラは」ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~~~~~っ!
「すごいね、ガブリエラは」ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~~~~~っ!
ひと足はやい夫婦の営みが、めくるめく展開された。
そして、わたしは〈花乙女宮〉に入るや否や、すでに内廷女官たちが起草してくれていた、貴族令嬢たちの結婚への勅許にサインしまくる。
上首には威厳漂う王家の紋章。
感慨深いものがある。
ようやく結婚に至れた、わたしの教育役筆頭で、内廷女官としてわたしを支えてくれたテレーズ様には、直接、祝福の言葉を伝えることが出来た。
翌早朝。
アルパード殿下がお迎えに来てくださり、
わたしはついに〈柘榴離宮〉に遷った。
〈子孫の繁栄〉を花言葉とする赤い花が種子の多い果実をつける柘榴には、豊穣への祈りが込められる。
その名を冠した離宮では、わたしとアルパード殿下との正式な婚約の成立を祝し、
お母様もお待ちくださっていて、
それから、
「ああ……、そういえば、わたしにもいたな。…………お父様」
と、思ったのは内緒だ。
小生意気なところが可愛くてたまらない弟のイグナーツは、思春期が始まったばかりのツンツンさで、
「……おめでと」
と、ぶっきらぼうに呟き、
わたしは、はにかんだ。
花の輸出を通じ、ピエカル家を後ろ盾とすることになったホルヴァース侯爵家は、この先も三大公爵家からいじめ潰されることはなくなっただろう。
わたしも喰えない貴族令嬢なのだ。
そのまま、わたしはアルパード殿下と一緒に国王宮殿にあがり、病床にあられる国王イシュトバーン陛下をお見舞いして、
王権を返上した。
そして、イシュトバーン陛下はその王権をもって、わたしとアルパード殿下との結婚をお許しになられ、
わたしは、王太子妃となった。
イシュトバーン陛下の枕元で、
王妃フランツィスカ陛下、第1王女エミリー殿下、第2王女フローラ殿下、帝都から直行していた三姉のイルマ妃殿下、
そして、イシュトバーン陛下の御母君、王太后マルギット陛下とに見守っていただくなか、
略儀ながら、婚礼の儀をあげた。
イシュトバーン陛下が、アルパード殿下とわたしに向けてくださる満ち足りた視線に胸が熱くなった。
その晩、国王崩御。
アルパード殿下はただちに即位され、わたしは王妃となった。
伝説の王太子妃、在位わずかに半日。
半日間の〈妃殿下〉を経て、わたしは再び〈陛下〉となった。
イシュトバーン陛下の遺命により、服喪期間は最短の3日。
国葬をあげ、
翌日には、新国王アルパード陛下の戴冠式を執り行った。
異例のことながら、アルパード陛下には、わたしが戴冠させた。
わたしは皇帝と国王に戴冠させた者となり、ヴィラーグ国王をエルハーベン皇帝に並び立たせた。
アルパード陛下は国王宮殿を継承され、
主殿であるヴィラーグ宮殿、通称、王宮に宮廷を開かれ、統治体制は平常に戻った。
ただ、わたしの構築した〈顧問伝奏〉による国家運営は、三大公爵家も賛同のもと、そのままスライドして、引き続き国を治める基となった。
「え? そんなのダメだよ?」
とは、元王弟やガーボル、ヴィルモシュ、ミハーイ、前ワルデン公、それに元皇帝のアルブレヒトを、釈放されますか?
と、わたしがアルパード陛下におうかがいしたときのお答えだ。
「首を刎ねないなんて、ガブリエラは優しいな。やっぱり、すごい人だなぁ」
と、民に優し過ぎるアルパード陛下は、王侯貴族の高貴なる義務に厳しかった。
そして、アルパード殿下は、ながい幽閉生活の城兵たちとの粘り強い対話のご経験によって、ダメなことはダメと、とても穏やかに伝えられるようになられていた。
もう、
――いいよ、いいよ。
とは、めったに仰られず、粘り強い対話にもとづく公正公平なご治政は貴族を威服せしめ、民からの敬愛を集めた。
意外とやるのだ、わたしの旦那様は。
ただ、粘り強さの根底にある健気さにお変わりはなく、むしろ純度を増していて、
まあ……、惚れ直した。
異民族の近衛兵バヤルサイハン・オゲデイは、正式にアルパード陛下の近侍に取り立てられた。
バヤルサイハンはわが国の言葉を覚え、内廷女官たちの協力で、異民族の文化習俗に関する研究が進んだ。
女神諸国が主に「大地なる母」を信仰するのに対して、異民族は「天なる父」を信仰すると大別できることも判明した。
神聖性の概念が真逆だとはいえ、彼らとて家族は慈しみ、恋人を愛し、友と親しみ、主君に忠誠を誓う。
考え方を理解すれば、外交交渉による和平に持ち込めるのではないかと思う。
伝説の女王ヴェーラ陛下をして〈未曽有の大器〉と唸らせた、わたしの愛しいアルパード陛下なら、きっと、やってくれるのではないかと思う。
王妃ガブリエラ。外交にはいささか腕に覚えがある。
きっと、お支えすることができる。
充分な日にちをかけ、入念な準備をした上で、春の訪れとともに、わたしとアルパード陛下の結婚式をひらいた。
皇帝ゲオルグ2世と皇后カタリンご夫妻、女大公ヴィクトリア殿下、ギレンシュテット国王アーヴィド陛下と王妃にしてレトキ女王ヴェーラ陛下ご夫妻、ソルフエゴ王太子ルイス殿下とイルマ妃殿下ご夫妻、
各国からの、錚々たる王族、有力貴族、要人がご列席くださり、
純白のウエディングドレスに身を包んだわたしと、アルパード陛下とを祝福してくださった。
すべてを先に終わらせた上での結婚式は、すこし順番がおかしい気もしたけれど、
〈穏便な婚約破棄〉を目指すところから始まったわたしの初恋の結末だ。これでいいのだという気もする。
わたしは、幸せだ。
もちろん、いつにも増してお美しいエルジェーベト様からも、優雅な祝福を捧げていただいた。
エルジェーベト様の婿もそろそろ決まりそうらしく、近々、お連れくださるそうだ。
ブリギッタ様は、ヘレナ様の婿探しのウォーミングアップを始められた。
そして、わたしは先例を改め、国王アルパード陛下以外男子禁制の〈花乙女宮〉を王妃在所とした。
約1年ほどを王権代行者、すなわち女王として国を統治し、女大公ヴィクトリア殿下からは義姉妹と呼んでいただき、皇帝に戴冠までさせた、わたしの権威が強大すぎて、国王アルパード陛下の治政に障ると判断したのだ。
要所においては、アルパード陛下をお守りし、お支えする。宮廷に乗り込むこともしばしばだ。
いずれは国法の制定という、大きな難所も待ち構えている。
けれど、普段は〈花乙女宮〉で茶会をひらいては、麗しいご令嬢方と花々とに囲まれ、優雅な時を楽しむ。
リリはよく遊びに来てくれるし、
イロナには恋の噂があるらしく、どうにか白状させようと、エレノールと策を練るのも楽しい。
そして、夫を亡くされた王太后フランツィスカ陛下をお慰めし、姑である太王太后マルギット陛下との仲の修復にも努めた。
「ふたりを仲良しにするだなんて。すごいな、ガブリエラは」
ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~っ!
いずれ、わたしとアルパード陛下の間に子供が出来て、王太子妃候補を連れて来たら〈花乙女宮〉を譲る予定だ。
花に囲まれた、おだやかな日々。
アルパード陛下は、いつもわたしの隣で微笑んでいてくださる。
となりに、あなたがいる。
それだけでいい。
わたしが待ち望んでいた日々が、ようやく訪れた。
― 完 ―
普段は領地に住むくせに、密かに帝都入りし、政変の行方を息を潜めて見守っていたのだ。
「まったく……。どいつもこいつも、喰えないヤツばっかりだ」
と、苦笑いして、豪華なソファに身体を伸ばした。
謁見の間。中央に設え直した8000本の薔薇からなる〈薔薇の壁面〉が、領邦君主たちの息を呑ませる。
わたしは新皇帝ゲオルグ2世に両膝を突かせ、厳かに帝冠を載せた。
そして、新皇帝ゲオルグ2世と玉座を並べて座り、互いの重臣を立ち並ばせ、謁見式が華々しく執り行われた。
帝冠を授けるヴィラーグ王は皇帝が下座に置けない存在であると、両国重臣承認のもと、ひろく世に知らしめられた。
さらに、両国重臣の発議によって、わたしはゲオルグ2世を呼び捨てとし、ゲオルグ2世はわたしに〈陛下〉の尊称を奉る、新たな礼遇も定められる。
晴れがましくも誇らしい気持ちと、わたしとアルパード殿下の苦難の1年に対しては安いなという気持ちと、複雑な心境だ。
ゲオルグ2世は帝国の先例により、皇后に授ける〈ミットグリード女公〉の称号を、カタリン様に授け、
カタリン様は次期皇后に内定した。
ま、平たく言えば、
ご婚約が正式に成立した。
「おめでとう、カタリン」
「ガブリエラ陛下より祝福のお言葉を賜りましたこと、幸甚に存じます」
と、カタリン様は群臣見守る中、わたしに優美なカーテシーを捧げてくださり、わたしが帝国に冠たる皇帝と皇后から尊崇される存在であると重ねて示す。
でも、わたしは、そんな儀礼的な話よりなにより、カタリン様が愛する伴侶に巡り合うことができ、幸福をつかまれたことに感無量だった。
この苦難の日々がもたらした、たったひとつの良い出来事が、カタリン様にゲオルグさんを巡り合わせてくれたことだと思う。
――ゲオルグさん。カタリン様を泣かせたら、わたしが承知しないぞ!?
と、思いながら、優雅に微笑み、ふたりを祝福した。
怒涛の1日が終わり、エルハーベン宮殿から出て、夕闇を見上げた。
去年の今日、わたしは〈花冠巡賜〉をやり遂げた。
花乙女宮から退出されるお母様を、壮麗な花壇で見送り、
アルパード殿下の船が少し遅れてるなと思いながら、それでも、明日にもお迎えに来ていただけるものだと、胸を膨らませ、
見上げた――、夕闇。
まるで、あの日の夕闇がここまで伸びてきたかのように、わたしの胸のなかを満たしてくれた。
そのとき、
――暑っ……。
と、盛夏の暑気が、突然、わたしに襲いかかってきたかのように感じた。
眼前に広がる、夕闇覆う帝都の街並みが傾いていき、
ヴィクトリア殿下に抱き止められて、倒れたのが自分の方であることに気が付いた。
「お疲れが出たのだろう」
と、ヴィクトリア殿下が、みなの動揺を鎮めてくださり、顔を青くしたイロナが冷たい水を持って来てくれる。
エレノールが日傘を差してくれ、周囲の視線からわたしを遮った。
「馬車は身体にこたえる。エルハーベン宮殿に部屋を借り、今夜はこのまま休まれては?」
と、ヴィクトリア殿下がわたしにやさしく微笑みかけて下さった、そのときだった。
夕闇が宵闇へと移りゆく中、エルハーベン宮殿の豪壮な宮門から帝都の市街に向け、光の筋が伸びてゆく。
ゆらゆらと伸びる光の筋は二本。わたしが花壇を開いた邸宅へとつながった。
ランタンを手にした数多くの民衆が、沿道を明るく照らし、わたしの〈凱旋〉を祝おうと待ち構えてくれていた。
「……わたしを支え、援けてくれた、帝都の民に応えなくては……」
と、身体を起こそうとするのだけど、力がうまく入らない。
ヴィクトリア殿下とカタリン様が両脇からわたしを抱え上げてくださって、なんとか馬車へと乗り込む。
おふたりも、そのままわたしの馬車に乗り込まれ、両隣からわたしの身体を支え、座らせてくださりながら、
わたしと一緒に、熱狂する民衆へと、にこやかに手を振ってくださった。
馬車への陪乗。
帝国内外、全ピエカルの総帥、女大公ヴィクトリア殿下と、次期皇后たるミットグリード女公カタリン殿下が、
わたしへの臣従の意を表したにも等しい。
「す、すみません……。ヴィクトリア殿下……」
「なに。我らは〈マウゴジャータの腕輪〉を分け合ったのだ。義姉妹にも等しい仲ではないか」
「義姉妹……」
「ああ、そうだ」
「無頼令嬢マウゴジャータと、片刃の剣聖オクサナみたいにですか?」
「ああ、その通りだ」
「親衛隊長ヴィカに流浪のベアタ、アバズレのナスタ、斬り込み隊長、鉄火のバシュカ、……みたいにですか?」
「ふふっ。そうだな」
「喧嘩上等、知略のヨアンナ。剛毅果断、商才のカタジナ。おきにのクリチュ……、みたいにですか!?」
「ははははっ! ガブリエラ陛下は私より無頼令嬢マウゴジャータに詳しいな」
「へへっ、……嬉しいです、姐さん」
馬車のなかで、わたしの身体がグラつくと、カタリン様もお支えくださる。
「すみません……、カタリン様にまでこんなことさせてしまって」
「私ったら、自分より〈いい女〉には、尽くすタイプなのよ。知らなかった?」
「……え?」
「自分より〈いい女〉を、いじめたり攻撃するような女にはなりたくないの。私より〈いい女〉のガブリエラを支えられるだなんて、女冥利に尽きるわ」
「……カタリン様ったら、いい女ですね」
「ふふっ。……知ってるわよ」
と、馬車のなかで3人、微笑みを絶やすことなく、外の民衆に手を振りながら、唇をほとんど動かさずに囁き合う。
貴族令嬢の、優雅なる嗜みだ。
やがて、わたしの馬車を先頭にした煌びやかな馬車の隊列が、花の邸宅に入り、
わたしは、ぶっ倒れた。
Ψ
翌朝。エレノールがおっとりと子羊のスープを飲ませてくれて、その後はリリがずっと側についていてくれた。
夏の朝。
今年初めて、暑さを感じていた。
数日が経って、わたしが迎えに行くはずだったアルパード殿下はすでに解放され、こちらに向かっておられると急使が届いた。
窓の外に入道雲を見上げる。
「……リリ」
「なんだ?」
「……わたし、不甲斐ないわね」
「ああ、不甲斐ないな」
ベッドの中で身体を起こし、夏空を見上げるわたしの嘆きに、リリが付き合ってくれた。
「……とっても、不甲斐ないわ」
「ああ。ガブは不甲斐ないな。王太子妃教育を歴代最速で終え、王弟の王位簒奪を防ぎ、ラコチ侯爵には騎槍をぶっ刺して、カールマーン公爵の野望を封じ、王国存亡の危機に、華麗なる花の宮廷を開いて国をまとめ上げ、伝説の女王を味方に、ワルデン公を退位に追い込み、南西女神諸国9ヶ国のみならず、華麗なる王族外交を展開してギレンシュテット王国はじめ北西女神諸国3ヶ国まで名を連ねた歴史にのこる共同書簡の発出に成功、閑雅なるリリを筆頭に優雅なる花衣伯爵家のご令嬢方を使者に立てた〈花冠外交〉を展開して、大帝国の政変を誘発、皇帝アルブレヒト3世を追い落として、新皇帝には帝冠を授け玉座を並べた。あまつさえ、女大公ヴィクトリアと次期皇后カタリンを馬車に陪乗させた凱旋行列を帝都の民衆に出迎えさせて、……倒れる。なんて不甲斐ない女なんだ」
「……リリ」
「なんだ?」
「そこまで言うなら、……素直に褒めていいのよ?」
「すごいな、ガブは」
「うん……」
「すこし、休め」
やがて、アルパード殿下の捕囚生活が明らかになった。
アルパード殿下は、ご自分を幽閉するズュートインゼル城の城兵のことごとくを、心服せしめていたのだ。
臣従を望む者や、脱出を勧める者が続出。
だけど、アルパード殿下は、
「ボクがそんなことをしたら、キミたちの家族にまで累が及ぶよ? 主君には忠義を持って仕えるべきだよ」
と、やさしく諭し、城兵たちをますます心服させていた。
「ボクの妃になるガブリエラは、すごい人なんだ。きっと、ボクを救けに来てくれる。だから、キミたちはキミたちの主命を守るんだよ」
と、微笑むアルパード殿下に、
城兵のひとりが勿忘草の種を差し入れた。
わたしが〈勿忘草の騎士座〉に就いたという噂を、どこかで耳にしたのだという。
花の王国の王太子は、幽閉された部屋の窓辺で見事な花を咲かせた。
――わたしを忘れないで。
はるか遠くのアルパード殿下に、わたしの想いは届いていた。
そして、アルパード殿下の咲かせた季節外れの勿忘草が、帝都の邸宅で待つわたしの手元に早馬で届けられた。
――はい! すごいのです! 意外とやるのです、わたしの旦那様になる方は!
花冠巡賜の最終日。お母様に存分に自慢させてもらった、わたしの旦那様。
アルパード殿下のすみれ色の瞳に似た色をしたちいさな花が、わたしの手の中で、儚げな五弁の花びらを、
力強く、揺らしていた。
いまアルパード殿下は、ともに囚われていた近衛兵約20名を率いられ、どうしても見送りさせてほしいと、地に伏して願い出た城兵たちの徒歩の行軍に護られながら、
こちらに向われている。
ゆっくりとした行軍だけど、わたしも体力を回復させるのにちょうどいい。
わたしだって、どうせなら素敵なドレスに身を包み、邸宅で咲き誇る花壇のなかに立ち、笑顔でアルパード殿下との再会を果たしたい。
わたしは身体を起こせるようになってすぐ、ひとつの勅命を発し、ヴィラーグの王都に早馬で届けた。
すでに、アルパード殿下の解放は最速の急使で知らせており、折り返し、フランツィスカ陛下より喜びのご書簡も頂戴した。
国王イシュトバーン陛下のご容体は、いよいよすぐれないとのことだったけれど、国王陛下も大層お喜びだとのことだった。
わたしが王権代行者として、恐らく最後に発する勅命。それは――、
――結婚、解禁!!!!!!!!
だ。
わたしとアルパード殿下に憚って、結婚を控えられてた貴族令嬢のみなさ~~ん!!
帰国したら、わたしの王権代行者最後の仕事として、バンバン決裁して、バンバン勅許を出すから、
とりあえず〈花乙女宮〉に届けだけでも、出しておいてくださぁ~~~~っい!!!
という、お報せだ。
愚かな皇帝の非道な所業が、たくさんの乙女たちの恋と結婚を足踏みさせた。
まったく、許せない話だ。
けれど、いまさらあの顎のほそい醜悪な老爺を思い出すだけでも馬鹿馬鹿しい。
新皇帝ゲオルグ2世の父親、つまりは前の皇帝アルブレヒト3世の嫡男は、異民族への反攻で戦死していたらしい。
冥府に旅立った者を貶めるつもりはないけれど、それはそれは無様で惨めな敗戦であったそうだ。
それで、アルブレヒトは、アルパード殿下の挙げられた武勲をやっかんだ。
――小さい男だ。
前ワルデン公から話を持ちかけられたのをもっけの幸いと、囚われの身とし、巨額の身代金を支払わせ、アルパード殿下を貶めようとした。
憤りと呆れが、どちらも天を突く勢いだ。
せめて、みなの結婚を、一点の曇りもない笑顔で祝い合い、満開に咲き乱れる乙女の笑顔で、花の王国を埋め尽くしてやる。
早馬に、勅命を託した。
Ψ
邸宅の花壇が、早咲きの秋の花々に入れ替えられた頃、アルパード殿下ご到着の先触れが届いた。
赤毛と栗毛の庭師の女の子ふたりが、季節でない勿忘草を咲かせてくれ、花壇の足元はあわい青色で埋め尽くされた。
イロナとエレノールが、目にいっぱいの涙を溜めた満面の笑みで、わたしを勿忘草色のドレスに着替えさせてくれる。
ヴィクトリア殿下やヴェーラ陛下、わたしと一緒に皇帝に対峙してくれたみな様方も駆け付けてくださり、
今はまだわたしの重臣でもあるカタリン様をはじめ、エルジェーベト様、レオノーラ様、ヘレナ様、エスメラルダ様、そしてリリと、わたしをずっと支えてくれた重臣たちも一緒に、わたしの後ろに立ち並んで、
アルパード殿下のご到着をお待ちする。
やがて、馬車の止まる音がして、
広大な花壇――お花畑の向こう側から姿をみせられたアルパード殿下は、
物語の中の貴公子そのもの。
そして、ニコニコとした微笑みには、影のない精悍さを加えていた。
「お帰りなさいませ、アルパード殿下」
「ただいま、ガブリエラ」
互いに見つめ合い、こみ上げてくる万感の想いで、それ以上の言葉が出ない。
美麗な貴公子。
やがて、天を仰がれるや、滂沱の涙をこぼされた。
かつて、ヨラーンの処刑に心を痛め、自ら封印された感情が、抑えきれずに噴出するかのように、アルパード殿下の涙は止まらなかった。
わたしの〈ふわふわ王太子〉は〈泣きべそ王太子〉になって帰って来た。
「ガブリエラは、きっとボクを救け出してくれると思っていたよ」
わたしに寄せてくださる、アルパード殿下の厚い信頼と愛情とが伝わり、
泣きべそはかいているけれど、ご苦難が、アルパード殿下をひと回りもふた回りも大きな男に成長させていることも感じとれ、
わたしも胸を熱くする。
抱き締めてさし上げたくて、歩み寄り、アルパード殿下の胸に、そっと、わたしの手をのせたときだった。
「すごいね、ガブリエラは」
あっ!!!!!!!!!!!!!!
いまは……、
みんな、見てる……、
から……、
ダ、メ……、
と、
動揺した〈勿忘草の騎士〉ガブリエラ。アルパード殿下の腕を抑える反応が遅れた。
ポン、
ポン、
……。
く、
くわぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!
パカッと大口を開けて天を仰ぎ、
顔を真っ赤に身じろぎひとつせず、全身を突き抜ける快感に、ひたすら耐える女と、
十数年ぶりに流す涙が止まらない男。
わたしの心のなかで起きていることまでは解らない乙女方が、
感動の涙をぬぐいながら、温かい目でお見守りくださる。
わたしが必死で耐えていると、アルパード殿下の目が、わたしの後ろに向いた。
「ヨラーン……」
「ガブリエラ陛下の御厚情にて……」
「すごいね、ガブリエラは」
ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~っ!
「レトキの女王、ヴェーラにございます」
「すごいね、ガブリエラは」
ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~っ!
「女大公ヴィクトリア、馳せ参じました」
「すごいね、ガブリエラは」
ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~っ!
天を仰いだまま身動きできないわたしをよそに、みながアルパード殿下の帰還を寿ぎ、祝福の拝礼を捧げては、
「すごいね、ガブリエラは」
ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~っ!
高貴なるご令嬢、ご夫人方が織りなす感動の渦の中心で、わたしはただひたすら天を仰ぎ、口をパカッとあけて、耐えていた。
すみません……、みんな、はやくどっか行ってください。
ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!
災難だ。
Ψ
すぐにも帰国しようと言うわたしを、無理したらダメだと、みなに押しとどめられ、
さらに3日ほど静養。
出発後は馬車を急がせ、20日ほどで帰国した。
その間、アルパード殿下とふたりきりの馬車のなかでは、この1年ほどに起きた出来事をお話ししては、
「すごいね、ガブリエラは」ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~~~~~っ!
「すごいね、ガブリエラは」ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~~~~~っ!
ひと足はやい夫婦の営みが、めくるめく展開された。
そして、わたしは〈花乙女宮〉に入るや否や、すでに内廷女官たちが起草してくれていた、貴族令嬢たちの結婚への勅許にサインしまくる。
上首には威厳漂う王家の紋章。
感慨深いものがある。
ようやく結婚に至れた、わたしの教育役筆頭で、内廷女官としてわたしを支えてくれたテレーズ様には、直接、祝福の言葉を伝えることが出来た。
翌早朝。
アルパード殿下がお迎えに来てくださり、
わたしはついに〈柘榴離宮〉に遷った。
〈子孫の繁栄〉を花言葉とする赤い花が種子の多い果実をつける柘榴には、豊穣への祈りが込められる。
その名を冠した離宮では、わたしとアルパード殿下との正式な婚約の成立を祝し、
お母様もお待ちくださっていて、
それから、
「ああ……、そういえば、わたしにもいたな。…………お父様」
と、思ったのは内緒だ。
小生意気なところが可愛くてたまらない弟のイグナーツは、思春期が始まったばかりのツンツンさで、
「……おめでと」
と、ぶっきらぼうに呟き、
わたしは、はにかんだ。
花の輸出を通じ、ピエカル家を後ろ盾とすることになったホルヴァース侯爵家は、この先も三大公爵家からいじめ潰されることはなくなっただろう。
わたしも喰えない貴族令嬢なのだ。
そのまま、わたしはアルパード殿下と一緒に国王宮殿にあがり、病床にあられる国王イシュトバーン陛下をお見舞いして、
王権を返上した。
そして、イシュトバーン陛下はその王権をもって、わたしとアルパード殿下との結婚をお許しになられ、
わたしは、王太子妃となった。
イシュトバーン陛下の枕元で、
王妃フランツィスカ陛下、第1王女エミリー殿下、第2王女フローラ殿下、帝都から直行していた三姉のイルマ妃殿下、
そして、イシュトバーン陛下の御母君、王太后マルギット陛下とに見守っていただくなか、
略儀ながら、婚礼の儀をあげた。
イシュトバーン陛下が、アルパード殿下とわたしに向けてくださる満ち足りた視線に胸が熱くなった。
その晩、国王崩御。
アルパード殿下はただちに即位され、わたしは王妃となった。
伝説の王太子妃、在位わずかに半日。
半日間の〈妃殿下〉を経て、わたしは再び〈陛下〉となった。
イシュトバーン陛下の遺命により、服喪期間は最短の3日。
国葬をあげ、
翌日には、新国王アルパード陛下の戴冠式を執り行った。
異例のことながら、アルパード陛下には、わたしが戴冠させた。
わたしは皇帝と国王に戴冠させた者となり、ヴィラーグ国王をエルハーベン皇帝に並び立たせた。
アルパード陛下は国王宮殿を継承され、
主殿であるヴィラーグ宮殿、通称、王宮に宮廷を開かれ、統治体制は平常に戻った。
ただ、わたしの構築した〈顧問伝奏〉による国家運営は、三大公爵家も賛同のもと、そのままスライドして、引き続き国を治める基となった。
「え? そんなのダメだよ?」
とは、元王弟やガーボル、ヴィルモシュ、ミハーイ、前ワルデン公、それに元皇帝のアルブレヒトを、釈放されますか?
と、わたしがアルパード陛下におうかがいしたときのお答えだ。
「首を刎ねないなんて、ガブリエラは優しいな。やっぱり、すごい人だなぁ」
と、民に優し過ぎるアルパード陛下は、王侯貴族の高貴なる義務に厳しかった。
そして、アルパード殿下は、ながい幽閉生活の城兵たちとの粘り強い対話のご経験によって、ダメなことはダメと、とても穏やかに伝えられるようになられていた。
もう、
――いいよ、いいよ。
とは、めったに仰られず、粘り強い対話にもとづく公正公平なご治政は貴族を威服せしめ、民からの敬愛を集めた。
意外とやるのだ、わたしの旦那様は。
ただ、粘り強さの根底にある健気さにお変わりはなく、むしろ純度を増していて、
まあ……、惚れ直した。
異民族の近衛兵バヤルサイハン・オゲデイは、正式にアルパード陛下の近侍に取り立てられた。
バヤルサイハンはわが国の言葉を覚え、内廷女官たちの協力で、異民族の文化習俗に関する研究が進んだ。
女神諸国が主に「大地なる母」を信仰するのに対して、異民族は「天なる父」を信仰すると大別できることも判明した。
神聖性の概念が真逆だとはいえ、彼らとて家族は慈しみ、恋人を愛し、友と親しみ、主君に忠誠を誓う。
考え方を理解すれば、外交交渉による和平に持ち込めるのではないかと思う。
伝説の女王ヴェーラ陛下をして〈未曽有の大器〉と唸らせた、わたしの愛しいアルパード陛下なら、きっと、やってくれるのではないかと思う。
王妃ガブリエラ。外交にはいささか腕に覚えがある。
きっと、お支えすることができる。
充分な日にちをかけ、入念な準備をした上で、春の訪れとともに、わたしとアルパード陛下の結婚式をひらいた。
皇帝ゲオルグ2世と皇后カタリンご夫妻、女大公ヴィクトリア殿下、ギレンシュテット国王アーヴィド陛下と王妃にしてレトキ女王ヴェーラ陛下ご夫妻、ソルフエゴ王太子ルイス殿下とイルマ妃殿下ご夫妻、
各国からの、錚々たる王族、有力貴族、要人がご列席くださり、
純白のウエディングドレスに身を包んだわたしと、アルパード陛下とを祝福してくださった。
すべてを先に終わらせた上での結婚式は、すこし順番がおかしい気もしたけれど、
〈穏便な婚約破棄〉を目指すところから始まったわたしの初恋の結末だ。これでいいのだという気もする。
わたしは、幸せだ。
もちろん、いつにも増してお美しいエルジェーベト様からも、優雅な祝福を捧げていただいた。
エルジェーベト様の婿もそろそろ決まりそうらしく、近々、お連れくださるそうだ。
ブリギッタ様は、ヘレナ様の婿探しのウォーミングアップを始められた。
そして、わたしは先例を改め、国王アルパード陛下以外男子禁制の〈花乙女宮〉を王妃在所とした。
約1年ほどを王権代行者、すなわち女王として国を統治し、女大公ヴィクトリア殿下からは義姉妹と呼んでいただき、皇帝に戴冠までさせた、わたしの権威が強大すぎて、国王アルパード陛下の治政に障ると判断したのだ。
要所においては、アルパード陛下をお守りし、お支えする。宮廷に乗り込むこともしばしばだ。
いずれは国法の制定という、大きな難所も待ち構えている。
けれど、普段は〈花乙女宮〉で茶会をひらいては、麗しいご令嬢方と花々とに囲まれ、優雅な時を楽しむ。
リリはよく遊びに来てくれるし、
イロナには恋の噂があるらしく、どうにか白状させようと、エレノールと策を練るのも楽しい。
そして、夫を亡くされた王太后フランツィスカ陛下をお慰めし、姑である太王太后マルギット陛下との仲の修復にも努めた。
「ふたりを仲良しにするだなんて。すごいな、ガブリエラは」
ポン、ポン、くわぁ~~~~~~~~っ!
いずれ、わたしとアルパード陛下の間に子供が出来て、王太子妃候補を連れて来たら〈花乙女宮〉を譲る予定だ。
花に囲まれた、おだやかな日々。
アルパード陛下は、いつもわたしの隣で微笑んでいてくださる。
となりに、あなたがいる。
それだけでいい。
わたしが待ち望んでいた日々が、ようやく訪れた。
― 完 ―
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