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31.グイグイとかガツガツとか

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「そ、倉庫の備蓄びちくを使いたいときは、ウンランさんに許可をもらえばいいんですか?」

と、俺がたずねると、スイランさんは自分の胸をポンっとたたいて、おさない顔立ちにドヤ顔をかべた。

「いいえ。マレビト様から求められた場合、食糧しょくりょう以外の資材しざいは、すべて私の判断はんだんで出してよいと、ウンラン様からおおせつかっております」

なるほど。上司であるウンランさんからの信頼しんらいあついってことか。ほこらしげな顔が可愛かわいらしい。

「じゃあ、早速さっそくですけどお願いがあります」

「なんでも私に言って下さい」

「見たところ服の備蓄はなさそうでした。布と針と糸って出してもらうこと出来ますか? できれば、大量に」

俺の言葉にスイランさんが、少し怪訝けげんな表情をした。

「それはかまいませんが、何に使われるのですか?」

「昨日、最終城壁さいしゅうじょうへき内を少し歩いたんですけど、避難ひなんしてる住民の方たちはのままで逃げ込んだって感じでした。男はともかくとして、女の人に着替きがえがないのは可哀想かわいそうだなって思って。いや、先に女の人にって意味で、男の人にも着替えを用意してあげたいんですよ」

俺の後ろについてくれてるユーフォンさん、ツイファさんの空気がやわらかくなったのを感じた。スイランさんは少し戸惑とまどったような表情で口を開いた。

「それは素晴すばらしいお考えかと思いますが……、宮城きゅうじょうの人員では縫製ほうせいが……」

「布と針と糸が用意できるなら、フーチャオさんに相談してみようと思ってます」

村長むらおさ殿に?」

「避難して来てる人の中には、お母さんっぽい人や、おばあさんっぽい人も見かけました。たぶん、お願いしたらさんをやってくれるんじゃないかって思うんですけど」

「なるほど……」

「それに、出来ることがないっていうのは不安なものです。こんなときなら、尚更なおさらです。手を動かしてたら、少しは気もまぎれます」

「いいじゃないですか!」

と、ユーフォンさんが明るい声を上げた。

「素晴らしいお考えです! 女性が汚れた服を着続けるのはツラいですからね。きっと、リーファ姫でも同じことを考えられましたよ!」

「分かりました。すぐにお渡し出来るよう準備をします」

というスイランさんの言葉に、謝辞しゃじべて司空府しくうふをあとにした。宮城きゅうじょうの中を自分の部屋に向かう道中、ずっとユーフォンさんがめてくれた。

「さすがリーファ姫の召喚されたマレビト様です! これまでのマレビト様とは全然違う! 平民とも気さくにってこられたリーファ姫のお気持ちにもうものです! 素晴らしい! 素晴らしい腰抜こしぬけです!」

最後!

「ユーフォン」

と、ツイファさんが落ち着いた口調で呼びかけた。

「腰抜けは褒め言葉ではありませんよ」

「え? そうなの?」

「むしろけなしてます」

「うそ! ごめんなさい!」

ご、ごめんなさいも、よせ。涙目で俺に謝る里佳りかの姿がフワッと、頭の中をつぶしてしまう。

……ええ。幼馴染を忘れられない腰抜けですよ。間違いじゃありません。まだ、フラれて4日目ですからね。立ち直ってる方だと思いますよ、自分では。

「じゃあ、なんて言えばいいの?」

「なにが言いたいのか分からないので、アドバイスしようがありません」

それもツイファさんの言う通りだな。

「こう、グイグイこない感じ? ガツガツしてないっていうか」

「おやさしい方、でいいんじゃないですか?」

「んー。私が言いたいことと、ちょっと違うんだよなー。ニュアンス? 的に?」

と、ユーフォンさんがむずかしそうな顔をして考え込んでしまった。ツイファさんは、いつものことなのか、ました顔で歩いてる。

まあ、とりあえずユーフォンさんに悪意あくいがないことはハッキリしたので、それで良しとしよう……。
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