【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら

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91.初陣が始まる(2)

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まもなく日没をむかえる。

望楼ぼうろうの手すりをにぎる手が汗ばんでいるのを感じる。

メイファンたち長弓ながゆみ隊は、今晩から4方向すべてに展開てんかいしている。

チンピラさんたちが短弓たんきゅう隊のやり熱湯ねっとう荷運にはこびに回ったので、南側城壁の投石がなくなる。連携れんけい機能きのうしていたので、剣士の急激きゅうげき負担増ふたんぞうけるため、長弓隊の全面展開ぜんめんてんかいった。

シーシたち司空府しくうふ職人しょくにんさんたちはフル回転で玉篝火サーチライトを生産してくれている。

宮城きゅうじょうはやや北寄きたよりに建っているため、南側の方が第2城壁までの距離きょりが長い。

長弓ながゆみ射手しゃしゅの中で、最もうでの立つメイファンは宮城きゅうじょう南側の屋根からの射撃しゃげきに回った。

「城壁の上でミンユーのこと見えたら、気が気でなくなるし」

と、メイファンは少しまゆを下げた笑顔で言った。

人獣じんじゅうとの近接きんせつ戦闘せんとうのぞミンユーのことが心配でないわけがない。申し訳ない気持ちもよぎるけど、こういうときにかける言葉が思いかばない。

「頑張ろう!」

と、考えられる限り一番平凡へいぼんな言葉をかけると、メイファンは会心かいしんみを返してくれた。

まかせとけって! ウチら姉妹しまいの弓は最強なんだからッ!」

力強くこぶしり上げたメイファンれたけど、さすがにれることもなかった。作戦を立てて指示を出してるこっちが勇気づけられた。チラ見は、した。凹んだ。

北側城壁では、短弓たんきゅう隊が訓練通りのフォーメーションを組んで、位置につき始めている。

初めての実戦投入じっせんとうにゅうで、もし対応し切れなくなった場合は剣士に戦闘を任せ、やぐらに逃げ込めるように東西とうざい両端りょうたんに2小隊しょうたいずつ配置はいちした。

東西それぞれ1小隊ずつが交代で攻撃を行う。短弓たんきゅう手持てもちの矢を使い切る頃合ころあいで前後を交代こうたいし、切れ目なく人獣じんじゅうに攻撃を加えつつ、矢の補充ほじゅう休憩きゅうけいもとる。

交代の合図あいずも含めて、短弓たんきゅう隊全体の指揮しきはフーチャオさんがる。

東西それぞれにイーリンさんとヤーモンが担当の剣士として付いてくれて、抜けてきた人獣じんじゅうちとる。

考えらえるだけのことは、考えた。

短い時間だけど、出来るだけの訓練くんれんもした。

いよいよ日が沈む、始まるという段階になっても「抜けはないか? 考えくせてるか?」という自問自答じもんじとうが続く。

矢や水を城壁の上に補充ほじゅうする荷運にはこび担当もロープらして待機たいきしている。

熱湯ねっとうをぶっかける大鍋おおなべのサイズも見直した。やぐらでテストしたとき、俺には持ち上げられなかった。さすがにチンピラさんたちと俺で腕力わんりょくに大きな違いはない。

人獣じんじゅうを城壁からがせる熱湯の量と、人が運びやすい重さのバランスをとった。

……本当なら1ヶ月でも半年でも訓練してから実戦投入じっせんとうにゅうしたい。

けれども、この城はつね落城寸前らくじょうすんぜんだ。

剣士たちの卓越たくえつした剣技けんぎこたえているに過ぎない。いつ人獣じんじゅうたちの大波おおなみに飲み込まれてもおかしくない。

「やってみる」

と、ミンユーが言うのも無理はない。

体系的たいけいてき訓練方法くんれんほうほうもない。すべてが手探てさぐりだ。実戦で通用つうようするのか、やってみるしかないというのも事実だ。

それにねっしやすくめやすいチンピラさんたちの、気持ちが盛り上がっているうちに【初陣ういじん】をむかえる方が良いという事情じじょうもある。

せめて、マレビトに発現はつげんするという『呪力じゅりょく』が俺にあればと思う。歴代れきだいのマレビト達も呪力じゅりょく危難きなんを救ってきたという。いわばチートだ。

けれど、いつ発現するか分からないチートを待っていても仕方がない。今できることを、全力でやるしかない。

望楼ぼうろうの手すりを強くにぎめたその時、日没と人獣じんじゅう凶暴化きょうぼうかを知らせる、イーリンさんの手ががった。

短弓たんきゅう隊の【初陣ういじん】が、始まる――。
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