【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

108.温もりの大浴場(2)

皆みなに動揺どうようを見せないようにと、いつも通り大浴場に俺を案内しようとする、シアユンさんとツイファさんを、引き止めた。

立ち止まるシアユンさんの、腰の高さでザックリ開いたいつもの黒いドレスの下に見える、白のロングスカートが揺れるのを見ていた。

シアユンさんが振り返る。

「いや……。今、ちょっと……、やっぱり、無理むりっぽいです……」

頭の中がグチャグチャで整理がつかない。

「ほかの者に動揺を伝えないよう、私がお背中をお流ししましょうか……？」

と、ツイファさんが言った。

――むきゅ。

という、ツイファさんの柔やわらかな感触かんしょくが左腕に蘇よみがえった。

ああ……。うん。そうだ。

大浴場ハーレム風呂に来てくれる、皆みんなの顔も次々に思い浮かんできた。

ミンユーは今日も前線ぜんせんで闘ってくれてた。

どしゃ降りで、ずぶ濡ぬれになりながら短弓たんきゅうを引き続けてた。

クゥアイも槍やりを何度も撃うち込んでた。

メイファンも長弓ながゆみで射掛いかけ続けてた。

イーリンさんも剣を振ふるい続けてた。

豪雨ごううの中にあっても、凛りんとして闘う女子たちの背中が次々に思い出される。

今、突然とつぜん、俺が大浴場に姿を見せなければ、それだけで皆みんなに動揺を生うんでしまうかもしれない。

かといって、俺が変に動揺した姿を見せて、皆みんなに動揺を感染うつす訳にもいかない。

人獣じんじゅうとの闘いはいつもギリギリの緊張感きんちょうかんとの闘いでもある。気持ちから崩くずすようなことはしたくない。

――むきゅ。

と、ツイファさんの感触かんしょくが、もう一度、左腕の肌はだに思い起こされた。

いや……。今、ツイファさんとは話題がなさ過ぎる……。

むしろ、賊ぞくの話や【闇やみの者もの】の話を聞いてしまいそうになる。カッコ良かったツイファさんに、ちょっぴりファン心理しんりさえある。

シアユンさんは……、頬ほほを赤らめて、目を逸そらした。

微妙びみょうなところで可愛かわいいな、この人。

でも、シアユンさんが相手あいてでも昨夜ゆうべの話をしてしまいそうだし、シアユンさんといえばリーファ姫だし、その話も、今の俺には動揺を呼ぶだけだし、そもそも、身体からだを密着みっちゃくさせて背中を流してもらうの、シアユンさんだと初めてになるし……。

と、用事ようじのありそうな女子を必死で考えた結果、シーシを指名しめいすることにした。

賊ぞくの報しらせをユーフォンさんに届とどけてもらう直前、連弩れんどのことを考えていたことを思い出したからだ。

それに、やっぱりシーシは少し気安いところがある。

でも、俺の方から背中を流してくれる人を指名したことはない。女子たちがザワつく可能性かのうせいは充分じゅうぶんに考えられた。

それで、ツイファさんが密ひそかにシーシに伝えて、段取だんどりしてくれることになった。

「ツイファは、こういうことは実じつに繊細せんさいで丁寧ていねいにやります。安心してお任まかせになってよろしいかと」

と、シアユンさんが言った。

――くにっ（右）。

で、シーシが俺に上半身じょうはんしんを密着みっちゃくさせて、くにっ、くにっと背中を流してくれている。