【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

178.雑念ミーティング(1)

「中年女性おばさま方がたとも打うち解とけようと頑張ってるわよ」

と、シュエンがマリームを指さして微笑んだ。宮城きゅうじょう北側の炊たき出だし場で、マリームが食材を運んで汗をかいている。

「アスマやラハマに恥をかかせたくないのね。健気けなげで可愛かわいいわね」

「皆みんなが気持ち良く働けるように気を配ってくれてるシュエンのお陰だよ」

もうっ！ と、シュエンに背中を叩はたかれた。

「急に褒ほめないでよ！ 照れるじゃない……」

と、頬ほおを赤らめられると、大浴場での姿と重なってしまって、こっちまで照れる。

昨日の結婚式でも大活躍だった炊き出しチームは、屋外おくがいに張った簡単なテントの中で作業を続けてる。宮城きゅうじょう内の調理ちょうり施設しせつを使うのは平民側にも、司徒府しとふの貴族側にもまだ抵抗がある。

ふと、鍋の番をしている空色そらいろ髪をしたビンスイと目が合った。スイランさんの妹で14歳のビンスイも顔を赤くして目を逸そらした。

人見知りなのか、そういう相手と見られているのか微妙な反応だ。まだ、先の話だし意識しないでほしいんだけど……。

召喚されて31日目。朝方あさがたに寝て昼過ぎに起きる生活にもすっかり慣れた。ミンリンさんとの打ち合わせの前に、住民の皆みなさんを見て回っているけど、アスマたちが加わったことに動揺どうようは見られない。

縫ぬい物ものチームが集まっている辺あたりにも顔を出す。今の主な仕事は洗濯だ。桶おけを並べて城内の兵士や住民の服を全部洗ってくれてる。

「シュエンちゃんが炊き出しを仕切しきってくれるようになって、私は縫い物と洗濯だけになって楽になりましたわ」

と笑うミオンさんが洗濯チームを取り仕切ってくれている。

木桶きおけと洗濯板せんたくいたで洗う作業はなかなかの重労働だけど、お陰で兵士は毎晩洗あらい立たてを着て戦闘に臨のぞむことが出来ている。

洗い終わった服を干ほしてるルオシィと目が合うと、ポッと頬ほおを赤くして洗濯物の陰に隠れた。

あと10日で16歳になるスイランさんの上の妹は、確実にそういう相手だと俺のことを見ている。

お色気大作戦とか仕掛しかけて来る、大浴場ハーレム風呂の面々とは違う初心うぶな反応に、こちらまでドキドキしてしまう。

「きょ、今日は暖あたたかいなぁ……」なんて、護衛のイーリンさんとメイユイに、赤くなった顔を誤魔化ごまがしながら兵士たちの訓練場に足を向けた。

「皆みな、実戦で鍛きたえられただけのことはある。荒削あらけずりだが筋すじはいい」

と、アスマが豊かな褐色の胸の谷間に滴したたる汗を拭ふきながら、槍兵たちを眺ながめていた。

「構かまえ方や腕の振りに無駄は多いが、教えれば皆みなすぐに吸収する。教え甲斐がいのある生徒たちだ。見ろ。ラハマも張はり切きって講義している」

アスマが愉快ゆかいそうに指差ゆびさした先では、クゥアイたち槍兵がラハマを囲んで熱心に話を聞いている。

「助かるよ」と、俺が言うとアスマは少しはにかんだ。

「なあに。皆みなで闘わねば、皆みなで死ぬ。どこかで防衛線が破れれば、私たちもお仕舞しまいだ。教えるのは私たちのタメでもあるんだよ」

「闘いが始まればどうでもよくなる」という、スイランさんのお母さんの女剣士ヨウシャさんが言ったことは本当だった。長年の戦友のようにアスマもラハマも受け入れられている。

毎晩、あの人獣じんじゅうたちの爪つめと牙きばに晒さらされる兵士たちにとって、過去より今晩の戦闘の方が切実せつじつな問題なのが痛いほど分かる。

その時、「よお！ マレビト様！」と明るい声を掛けてくれたのは、あの片腕のニイチャンだった。

「俺も今日から兵士団に復帰だ。と言っても雑用くらいしか出来ないけどな」

「傷の具合はどうです？ 無理しないでくださいね」

「まあ、まだ痛むんだけど、いつまでも寝て過ごしてもつまらないからな」

と、ニイチャンはニカッと笑った。

「兵士団でなくても、もう少し楽な作業から始めたらどうです？」

「いや……、実はよお。司空府しくうふで職人やってる娘むすめも兵士団に参加しててよ。近くにいたいんだ」

ニイチャンが指差した先では、薄紫色うすむらさきいろの髪をした女子が仮設住宅の補修ほしゅうをしている。

あっ。あの娘こは……。