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177.置かれた大浴場(2)

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「何のお願いかな?」

と、アスマは右腕に抱き着いて滑るクゥアイに、優しくたずねた。

――くにっ(右腕/下)。

「私たちに槍を教えて下さい!」

弟子でしりする勢いのクゥアイに、「ふむ」と、アスマはひと呼吸こきゅう置いた。

確かにアスマとラハマが使う騎槍きそう――ランスは、すさまじかった。

クゥアイは振りしぼるように、お願いを続けた。

「私たち、元は農民とか商人とかで、今までずっと自己流で槍を使ってきたんです」

確かにそうだ。なにせ、最初に使って見せたのは、一晩だけ部屋で練習した俺だったんだから。

「槍兵のんなとも話し合って、ちゃんと使い方を知ってる人がそばにいるなら、教えてもらいたいなって……」

そうだな。んな必死で工夫して使ってくれてる。先生がいるなら、おそわらない手はないよな。

「ホントは、もっと仲良くなってからお願いするべきなのかもしれないんですけど、今晩も人獣じんじゅうは来るし……。ミンリンさんの作戦も始まるし……」

――むにんっ(背中/上)。

「うむ。かまわんぞ。いやむしろ、求めてもらうというのは、こう……、こそばゆくて、嬉しいものだなっ!」

――くにっ(右腕/上)。

「はいっ!」

――むにんっ(背中/下)。

「今晩も来るというのは、その通りだろう。基礎からではなく、スグに使える修正や、スグに使える技から入ろう」

――くにっ(右腕/下)。

「はいっ! ありがとうございます!」

とても、いいシーンだとは思うんだけど……。

お、俺をはさんで、盛り上がられるの、すごい気恥ずかしくなるんですけど……。

――むにんっ(背中/上)。

「ラハマにも声をかけよう。あいつはきびしいがな」

と、アスマが笑った。

――くにっ(右腕/上)。

「嬉しいです!」

と、クゥアイも満面の笑みで応えた。

……そうだよな。クゥアイだって、くわを振ってたから槍も大丈夫! って言って始めたら、結局、一番上手うまくて。

クゥアイも自信があるワケでもないのに人に教えるばかりで、教えてくれる人は誰もいなかったんだもんな。心細かったよな。……ありがとう。

アスマもこころよく引き受けてくれて、ホントありがとう。

――むにゅん(左腕/上)。

ミンユーが遠慮えんりょがちに口を開いた。

「よ、良かったら弓も……」

「ん? 私がか?」

と、アスマが戸惑とまどったようにこたえる。

「弓も持ってたから……」

「いやいや。ミンユーに教えられることなんかないぞ。見事な弓だった。見惚みとれてしまったぞ」

――むにゅぅうん(左腕/下)。

アスマの答えに、ミンユーは照れたように「そ、そう……」とだけ言って、ほおを赤くしてうつむいた。

おでこ、俺の腕に当たってあわだらけです。

でも、良かったね。

ミンユーの短弓たんきゅうも、動物相手の狩人かりうどの技で、兵隊だった訳じゃないもんな。

あの鬼強おにつよかった、プロに認められたら嬉しいよな。

――むにんっ(背中/上)。

昨夜ゆうべ、一緒に闘ってみて、改めて感服かんぷくした。んな、見事に兵だった。あの相対あいたいするのに、こちらは連携チームワーク対抗たいこうするしかない。みなおぎない合いながら、見事な闘いだった」

から、そう言ってもらえると、俺も嬉しい。

――むにんっ(背中/【肩】)。

えっ?

……か、肩にましたよ? アスマさん。

ていうか、首が、むにんってしたに包まれてますけど……。

「なにより驚いたのは剣士だ……。他の兵や剣士と連携れんけいしたら、あんなに強いのか。みな、恐るべき剣技の持ち主ばかりだ……」

……ひ、人の肩にて、考えごとするのは良くないと思うなぁ……。

首だけじゃなくて、ほっぺたにもさわってますし……。

アスマさん立派だから……。

い、いつまで、そうしてるんです……?

クゥアイさんとミンユーさんも、お国の剣士められて嬉しそうにしてないで……。ねぇ……。
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