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187.忌み子の系譜(1)
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夕刻には3部隊に増やした外征隊の出陣を望楼から見守った。明日には4部隊に出来るはずだ。
アスマとラハマがどうしてもと言ったので、ヨウシャさんの初陣は明日にしてもらい一緒に戦況を見守っている。
アスマとラハマに「功を焦るなよ」と、時代劇のようなセリフをかけて、ちょっとテンションが上がった。2人とも「ははっ!」って応えてくれたし。
その2人はランスではなく、半月刀を使って人獣を斬りまくっている。
槍衾で守り切れない人獣が相手になるので、間合いの近い武器を選んでるんだろう。と言いつつ、ランスは背中に背負ってるんだから、全身兵器感に変わりはない。
ヨウシャさんは、なにやらシアユンさんと世間話をし始めてる。
「フェイロンくんがミオンにフラれたときは、落ち込んで落ち込んで大変だったんだからぁ」
と、ケラケラ笑っている。ヨウシャさんもジーウォの生まれでフェイロンさんのひとつ歳上らしい。
見た目は娘のスイランさんと姉妹と言われてもおかしくないけど、話し始めると中年女性だと分かる。俺もシアユンさんも、思わず苦笑いだ。
「でも、王都であんなに強くなって帰って来るんだもんねぇ。人間、何があるか分からないもんだわ」
「スイランさんとは会っていかないんですか……?」
と、余計なことなんだろうと思いつつ聞いてみた。すると、ヨウシャさんは少し寂し気な顔をした。
「あの娘にはあの娘の考えがありますから……。いや、全部、ルオシィとビンスイを育て上げてからですよ。スイランはもう大人ですし、後回し後回し。ま、生きてればのことですけどね」
「皆んなで生き残ろうって、俺は言いましたよ」
と、少し茶化すように笑って見せた。
「ほんとだわ。生き残らないと悩むことも出来やしなくなる」
ケラケラ笑うヨウシャさんは、やっぱり少し寂し気だった。どちらかと言えば子供の立場しか分からない俺だけに、大人が寂し気にしてるのは胸が痛い。
アスマとラハマの外征隊初陣も無事に終わり、大量の矢が城内に運び込まれた。
そして、ヨウシャさんはオフ扱いで新しく宮城内に割り当てた部屋に帰し、そのまま日没後の戦闘を見守った。
夜が明けて大浴場に行く前には、地下牢に立ち寄った。
「ウンランさんの言う通りでしたよ」
と、大夫たちが騒いでいたことを知らせると満足気に笑われた。そして、俺の目を見据えた。
「もう、とっておきを教えよう」
「え? いいんですか? 何も約束出来ませんよ?」
「構わん。価値のある情報だと思われるなら、ズハンを牢から出してやってほしい」
「うーん。分かりました、お伺いしましょう」
ウンランさんは、ニヤリと笑った。
「第2城壁との間に、儂が囲っていた妾の屋敷がある。そこに我が家の家宝である、3代マレビト様が刻まれた呪符を隠してある」
「へぇー」
呪符は刻んだ呪術師が亡くなれば効力を失う。300年前に召喚されたという3代マレビトの記念の骨董品ということか。
「ふふっ。3代マレビト様は生きておられる」
「えっ?」
「もっとも儂も姿を見たというワケではない。ただ、呪符は今でも活きておる」
にわかには信じ難い話だけど――。
アスマとラハマがどうしてもと言ったので、ヨウシャさんの初陣は明日にしてもらい一緒に戦況を見守っている。
アスマとラハマに「功を焦るなよ」と、時代劇のようなセリフをかけて、ちょっとテンションが上がった。2人とも「ははっ!」って応えてくれたし。
その2人はランスではなく、半月刀を使って人獣を斬りまくっている。
槍衾で守り切れない人獣が相手になるので、間合いの近い武器を選んでるんだろう。と言いつつ、ランスは背中に背負ってるんだから、全身兵器感に変わりはない。
ヨウシャさんは、なにやらシアユンさんと世間話をし始めてる。
「フェイロンくんがミオンにフラれたときは、落ち込んで落ち込んで大変だったんだからぁ」
と、ケラケラ笑っている。ヨウシャさんもジーウォの生まれでフェイロンさんのひとつ歳上らしい。
見た目は娘のスイランさんと姉妹と言われてもおかしくないけど、話し始めると中年女性だと分かる。俺もシアユンさんも、思わず苦笑いだ。
「でも、王都であんなに強くなって帰って来るんだもんねぇ。人間、何があるか分からないもんだわ」
「スイランさんとは会っていかないんですか……?」
と、余計なことなんだろうと思いつつ聞いてみた。すると、ヨウシャさんは少し寂し気な顔をした。
「あの娘にはあの娘の考えがありますから……。いや、全部、ルオシィとビンスイを育て上げてからですよ。スイランはもう大人ですし、後回し後回し。ま、生きてればのことですけどね」
「皆んなで生き残ろうって、俺は言いましたよ」
と、少し茶化すように笑って見せた。
「ほんとだわ。生き残らないと悩むことも出来やしなくなる」
ケラケラ笑うヨウシャさんは、やっぱり少し寂し気だった。どちらかと言えば子供の立場しか分からない俺だけに、大人が寂し気にしてるのは胸が痛い。
アスマとラハマの外征隊初陣も無事に終わり、大量の矢が城内に運び込まれた。
そして、ヨウシャさんはオフ扱いで新しく宮城内に割り当てた部屋に帰し、そのまま日没後の戦闘を見守った。
夜が明けて大浴場に行く前には、地下牢に立ち寄った。
「ウンランさんの言う通りでしたよ」
と、大夫たちが騒いでいたことを知らせると満足気に笑われた。そして、俺の目を見据えた。
「もう、とっておきを教えよう」
「え? いいんですか? 何も約束出来ませんよ?」
「構わん。価値のある情報だと思われるなら、ズハンを牢から出してやってほしい」
「うーん。分かりました、お伺いしましょう」
ウンランさんは、ニヤリと笑った。
「第2城壁との間に、儂が囲っていた妾の屋敷がある。そこに我が家の家宝である、3代マレビト様が刻まれた呪符を隠してある」
「へぇー」
呪符は刻んだ呪術師が亡くなれば効力を失う。300年前に召喚されたという3代マレビトの記念の骨董品ということか。
「ふふっ。3代マレビト様は生きておられる」
「えっ?」
「もっとも儂も姿を見たというワケではない。ただ、呪符は今でも活きておる」
にわかには信じ難い話だけど――。
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