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190.解体計画(1)

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俺はシアユンさんに、釈放しゃくほう視野しやにズハンさんとウンランさんの説得を頼んだ。

やっぱり、俺には少しが重い。ここは、ダーシャン貴族の理屈りくつが分かってるシアユンさんに頼みたい。

「リーファ姫の命をねらったんですから、複雑な気持ちは分かります。そこをなんとかお願いしたいんです」

「……理由をおうかがいしてもよろしいですか?」

「一番はろう木格子きごうしです」

「木格子?」

「そう、釈放すれば木格子を解体して、回廊かいろうの材料に回せます」

「ふふっ。すごいことを考えますね」

「あとは意地いじです。んなで生き残ろうって言った以上、ウンランさんたちにも生き残ってもらわないとといけないし、生き残るからにはろうでのんびりしてないで、働いてほしいです!」

シアユンさんは、いつもの氷の女王スマイルを浮かべた。

「かしこまりました。主君しゅくん意地いじとおすのも太保たいほの役目と存じます。心してかからせていただきます」

そして、あと2人地下牢に収監しゅうかんされたままになっている、ぞくの仲間とも話してみると言ってくれた。

部屋に戻って、ひと眠りするとシーシから「1日前だおしで訓練を始める」と、しらせが入っていた。

急いで南側広場に向かうと、回廊かいろうの材料が運び込まれていて準備万端、整っていた。

「ニシシ。じゃあやってみるのだ」

と、シーシが合図を送ると、宮城きゅうじょうの前から城門に向けて回廊の組み立てが始まった。

流れるような動きで、壁が立ち、屋根が付けられ、また壁が立っていく。壁には人獣じんじゅうつめふせ金具かなぐも最初から付けられている。

強度と重さのバランスを何度も試してた、特製の金具だ。

並んで見守るミンリンさんは、ジイッとるように見詰みつめて、時折ときおりメモを取っている。最近、会うとだったので、濃紺のうこんのチャイナなドレス姿、久しぶりに見たかも……。

シーシは陣頭じんとう指揮しきっているけど、四方向に伸ばすことを考慮こうりょしてか、3人の親方と話し合いながら進めている。

「なかなか、いいんじゃねぇか?」

と、姿を見せたフーチャオさんが言った。

「そうですね、もう少し速くなれば……」

「おっ、なかなか厳しいな」

すでに実戦さながらに組み立てが進んでいるけど、想像を超えるほどには速くない。

「最初はこんなものなのだ。練習して速くするのだ」

と、シーシが報告に来たときには、空はすっかり茜色あかねいろに染まり、外征がいせい隊は出陣していた。

あっ。アスマにお願いするの忘れてた。それに、ヨウシャさんの初陣ういじんだったはずなのに、なにも声をけなかったなぁ……。

ちょっと回廊かいろうに夢中になり過ぎた。

そして、最終的にシーシが書き出した木材の必要量は、やはり備蓄びちく量を超えていた。

組み立てた回廊に、非番ひばんの剣士たちが体当たりして強度を確かめてくれてる音がひびく中、振り向くと宮城きゅうじょうは今日も夕陽ゆうひに照らされて燃えるように赤い。

うーん。やっぱり木材をどうにかしないと、先に進めないなぁ……。

と、軽いのか重いのか微妙な足取りで、ミンリンさんと宮城きゅうじょうに戻って行った。
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