【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら

文字の大きさ
228 / 297

225.呪符開発秘話

しおりを挟む
「そうか……。キミが4人目のマレビトだったか。気配けはいは感じてたんだ。いつまでも呪力じゅりょく発現はつげんしなくて変だなとは思ってたけど……」

と、3代マレビトだという山口さんがお茶を出してくれた。

「ボクは流されやすい性格でね……」

山口さんはテーブルの上に目を落とした。

「後悔することばかりだよ」

女性恐怖症きょうふしょうだという山口さんに遠慮して、アスマとメイファンには扉の外で待ってもらっている。

山口さんは見たところ20代後半ってところ。300年前に召喚されて、地球時間の10年ちょっとしか歳をとってないことがさっせられた。

「たぶん、勇吾くんは呪力じゅりょくの発現をことわったんだよね?」

「あ、はい」

「ボクは断れなかったんだ。こんな性格だし、えらい人にグイグイこられて、イヤなことをイヤって言えずに子どもを作った。その結果は知ってるよね?」

マレビトが望まずに子どもを作っても、呪力じゅりょくは発現しない。ただそれは、この3代マレビトの事件で初めて分かったことだ。

「相手の女の子にも、出来た子どもにも申し訳なくて申し訳なくて」

「ええ……」

「その時、一生懸命になぐさめてくれた別の女の子のお陰で呪力じゅりょくは発現できたんだけど、時間が経つほどに最初の子どものことで心が重くなるばかりで……」

と呼ばれた、ウンランさんの祖先そせんだ。

「でも、またどんどん女の子をあてがわれて……。まだ発現してないとわからないと思うんだけど、子どもを作るたび、つまり霊縁れいえんむすばれるたび呪力じゅりょくすのは本当なんだ」

「そうなんですね……」

呪力じゅりょくが増すっていうか、呪力じゅりょく解明かいめいの働きが解明できるって言う方が正確なんだけど……。まあ、とにかくそれで、頑張って女の子を好きになって4人と子どもを作ったところで、ボクの心に限界が来たんだ」

「限界……」

「誰とも会いたくなくなって、特に女の子は見るだけでダメで……。見るだけでも恐くてふるえが止まらなくて……。あ、性的嗜好しこうは女性なんだけどね」

俺以上に異世界エロイベントがしょうに合わない人が召喚されてた……。それも結構、深刻めで。

「でも、ボクのときダーシャンがおそわれてた危難きなん疫病えきびょうだったんだけど、解決しないと天帝てんていが帰らせてくれそうになくて……」

「天帝と話が出来るんですね?」

「ううん。祖霊それいつうじて……、なんて言うか気配? 呪力じゅりょくの流れで分かるんだよ」

「なるほど……」

「それで、こもってる中で必死に考えた結果、呪符じゅふを開発したんだ。ボクや呪術師じゅじゅつしが直接会わなくても疫病を治せるように」

なんという呪符開発秘話……。

「疫病が収まってきて、天帝に帰してもらえそうになったんだけど……。そこで、やっぱり最初の子どものことが気になってきて……」

「はい」

「その子にボクの呪符じゅふをあげて、行方ゆくえをくらませて、しばらく見守ろうと思ってるウチに……」

山口さんは苦笑いした。

「300年経ってたんだ」

窓の外に視線を移した山口さんは、少し軽い口調になった。

呪符じゅふが使われるとボクにも伝わるようにしてあって、使われる度に、あの子の子孫しそんが頑張ってるんだなあって、ホッとして。……変だよね? 望まずに出来たはずの子どもが一番可愛かわいいなんて。それでズルズル帰らずにいたんだけど……。まさか300年も生きられるとは思わないよね?」

「ええ……。あの……、異世界こっちでは、地球の28倍のスピードで時間が流れてるみたいなんです」

「そうなんだ。じゃあ300年って言っても、地球じゃ、だいたい10年か」

「はい」

「勇吾くんは、それ。どうやって分かったの?」

俺はこれまでのこと、里佳とリーファ姫と俺の話を山口さんにした。すると、山口さんは興奮こうふん気味ぎみに何度もうなずき始めた。

「偉い! 偉いなあ! 好きなのために、誘惑を断り続けたんだ」

「いや、まあ……」

「ボクも偉そうなこと言ったけど、結局、誘惑されてムラムラしちゃったのおさえられなかっただけだから」

「あはは……」

笑うしかない。

「うん。協力するよ」

「ほんとですか?」

「たぶん、召喚の応用で彼女さんのたましいを呼び戻せると思うんだ。ほんとは術者じゅつしゃの命が必要になるんだけど、ボクが日本に帰ることで代わりに出来ると思う」

「山口さん、帰るんですね」

「うん。ありがとう。ようやく、ボクが帰ることに意味が出来た。勇吾くんの純愛をまっとうするのに役立てるなら嬉しいよ」

「あ、ありがとうございます」

「まあ……、帰ったら帰ったで10年無職むしょくだったことになるんだろうから、大変だとは思うけど。いつまでも異世界こっちでグジグジしてても仕方ないしね」

300年生きた総括そうかつが「グジグジ」の一言とは、意外に大人物だいじんぶつなんじゃないかって気がした……。それは、さておき……。

俺は1人で小屋を出て、アスマたちに山口さんの女性恐怖症を説明して、姿を隠してもらった。

山口さんのかくしルートを使ってがけを登り、山口さんの目に誰もふれれさせないまま馬車の中に入ってもらった。

そして、俺たちは一路いちろ、ジーウォへの帰還きかんに着いた。

いよいよ、里佳に会える――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...