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229. 物語る大浴場
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――くにっ。
と、シーシが泡だらけに背中を流してくれる。
――むにゅん。
と、メイファンが左腕をはさんで流し。
――むにんっ。
と、アスマが右腕をはさんでいる。
リーファもシアユンさんに手拭いで背中を流してもらってニコニコしている。
3代マレビト探索から帰ったばかりで、俺も56日ぶりの大浴場だったけど、すっかりいつもの調子を取り戻した皆んなはキャッキャと賑やかだ。
ただ俺は、最初の頃のように緊張している。ま、まあ、彼女に見られてる訳で……。
シアユンさんが申し訳なさそうにリーファに話し掛けているのが見えた。
「私が始めたのです……」
「シアユンが?」
「純潔の乙女の身体を捧げ、子種を授かる。そのシキタリの前半分だけでも果たさせて欲しいと……」
「そうなんだ」
「マレビト様が望まれた訳では……」
「うん。それは分かってる。シアユンも、そんなに小さくならないで」
「はい……」
恐縮しながらも、あんなに嬉しそうな表情をしたシアユンさんも初めて見た。
――くにっ(背中/上)。
「リーファ姫は王族の中では元から気さくな方だったけど、あんなにボクたちの中に入って来てくださる方だとは知らなかったのだ」
と、シーシが興奮気味に言った。
――むにんっ(右腕/上)。
「うむ。王族の鑑のようなお方だ。私もあのようにあるべきだった」
アスマはリーファに心酔したような表情を浮かべている。
――むにゅん(左腕/下)。
「お風呂までご一緒してくださるなんて、夢みたい」
メイファンは憧れのスターを見る視線でチラチラ見てる。
3人にしっかり流してもらって、前は自分で洗い湯船に浸かる。
と、チョイチョイっと指でリーファに呼ばれた。賑やかな湯船の中を、スススッと移動して隣に座る。
「温泉に浸かる私の裸を見ても動じてなかった訳が分かったわ」
「え……?」
「スゴいね。勇吾は」
「あ、え?」
「この状況で純潔を守ってくれたんだ?」
「あ、それは……、うん……」
「これが日本なら信じてあげられなかったかもしれないけど、ここでは呪力が発現してないっていう確かな証拠があるからね」
「う、うん……」
「身体を捧げてたのは、むしろ勇吾ね。彼女たちの願いを叶えるために」
そ、そういう考え方もあるか……。
「皆んな、楽しそうだし」
リーファは大浴場をゆっくりと見渡した。
「勇吾が城をまとめるのに、ここが拠点だったんだ?」
「あ、それはそう……」
たくさんのアイデアや作戦が、この大浴場で生まれた。ここで皆んなで悩み、皆んなで考え、皆んなで励まし合った。
「日本で育った恋人として妬ける気持ちもあるのよ? でも、あの恐ろしい人獣に立ち向かうのに、こうして皆んなの気持ちを一つひとつ大切にしながら頑張ってた、勇吾への尊敬の方が遥かに大きいな」
「そ、そっか」
「皆んなの笑顔が、全部物語ってるよ」
キャッキャと賑やかな女子たちを、改めて一人ひとり眺めた。
「ありがとう。勇吾」
リーファは赤くした顔を、湯に半分沈めた。
俺にはリーファの王族としての誇りや呪術師としての責任感の全部は分からない。けど、大浴場を後ろめたく思ってた自分が、ちょっとだけ恥ずかしくなった。
大浴場に頑張ってない人は、一人もいなかったのだ。
リーファはそれを見抜いて、受け止めてくれている。
改めて、あの闘いの日々と、それを皆んなで力を合わせて勝ち抜いたんだってことに、胸が熱くなった。
「それはそれとして……」
と、リーファは悪戯っ子のような笑顔で、俺の顔を斜めに見上げた。
「ん?」
「エッチね。勇吾」
「あ、はい……」
と、シーシが泡だらけに背中を流してくれる。
――むにゅん。
と、メイファンが左腕をはさんで流し。
――むにんっ。
と、アスマが右腕をはさんでいる。
リーファもシアユンさんに手拭いで背中を流してもらってニコニコしている。
3代マレビト探索から帰ったばかりで、俺も56日ぶりの大浴場だったけど、すっかりいつもの調子を取り戻した皆んなはキャッキャと賑やかだ。
ただ俺は、最初の頃のように緊張している。ま、まあ、彼女に見られてる訳で……。
シアユンさんが申し訳なさそうにリーファに話し掛けているのが見えた。
「私が始めたのです……」
「シアユンが?」
「純潔の乙女の身体を捧げ、子種を授かる。そのシキタリの前半分だけでも果たさせて欲しいと……」
「そうなんだ」
「マレビト様が望まれた訳では……」
「うん。それは分かってる。シアユンも、そんなに小さくならないで」
「はい……」
恐縮しながらも、あんなに嬉しそうな表情をしたシアユンさんも初めて見た。
――くにっ(背中/上)。
「リーファ姫は王族の中では元から気さくな方だったけど、あんなにボクたちの中に入って来てくださる方だとは知らなかったのだ」
と、シーシが興奮気味に言った。
――むにんっ(右腕/上)。
「うむ。王族の鑑のようなお方だ。私もあのようにあるべきだった」
アスマはリーファに心酔したような表情を浮かべている。
――むにゅん(左腕/下)。
「お風呂までご一緒してくださるなんて、夢みたい」
メイファンは憧れのスターを見る視線でチラチラ見てる。
3人にしっかり流してもらって、前は自分で洗い湯船に浸かる。
と、チョイチョイっと指でリーファに呼ばれた。賑やかな湯船の中を、スススッと移動して隣に座る。
「温泉に浸かる私の裸を見ても動じてなかった訳が分かったわ」
「え……?」
「スゴいね。勇吾は」
「あ、え?」
「この状況で純潔を守ってくれたんだ?」
「あ、それは……、うん……」
「これが日本なら信じてあげられなかったかもしれないけど、ここでは呪力が発現してないっていう確かな証拠があるからね」
「う、うん……」
「身体を捧げてたのは、むしろ勇吾ね。彼女たちの願いを叶えるために」
そ、そういう考え方もあるか……。
「皆んな、楽しそうだし」
リーファは大浴場をゆっくりと見渡した。
「勇吾が城をまとめるのに、ここが拠点だったんだ?」
「あ、それはそう……」
たくさんのアイデアや作戦が、この大浴場で生まれた。ここで皆んなで悩み、皆んなで考え、皆んなで励まし合った。
「日本で育った恋人として妬ける気持ちもあるのよ? でも、あの恐ろしい人獣に立ち向かうのに、こうして皆んなの気持ちを一つひとつ大切にしながら頑張ってた、勇吾への尊敬の方が遥かに大きいな」
「そ、そっか」
「皆んなの笑顔が、全部物語ってるよ」
キャッキャと賑やかな女子たちを、改めて一人ひとり眺めた。
「ありがとう。勇吾」
リーファは赤くした顔を、湯に半分沈めた。
俺にはリーファの王族としての誇りや呪術師としての責任感の全部は分からない。けど、大浴場を後ろめたく思ってた自分が、ちょっとだけ恥ずかしくなった。
大浴場に頑張ってない人は、一人もいなかったのだ。
リーファはそれを見抜いて、受け止めてくれている。
改めて、あの闘いの日々と、それを皆んなで力を合わせて勝ち抜いたんだってことに、胸が熱くなった。
「それはそれとして……」
と、リーファは悪戯っ子のような笑顔で、俺の顔を斜めに見上げた。
「ん?」
「エッチね。勇吾」
「あ、はい……」
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