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254.なんぼのもんじゃい
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「今に見てろよ、神様め」
と、呟いたリーファは部屋に篭って、すべてがクリアに見えるようになった理の解読に没頭し始めた。
「勇吾は側室の乙女たちを寂しがらせたらダメでしょ?」
――側室の乙女?
と、思ったけど、毎晩、側室の部屋に通った。ま……、まあ、いわゆるめくるめく日々を送った。
紋様は俺にも見えていたので、昼間はリーファの解読を手伝う。
そして――。
「よし、出来た」
と、満足気な微笑みを浮かべたリーファが、まずは乙女たちを全員、部屋に集めた。
「私たちの結末は、何がなんでもハッピーエンドであるべきです!!!」
リーファの勢いに、皆んなが気圧された。
「私たちがいつか年老い寿命を終える時、子や孫が神に理不尽に殺されると怯えながら目を閉じていくなんて、まっぴらごめんです!」
「それは、そうね……」
と、シュエンが頷いた。
「だから! ジーウォの住民1200人全員……、いや! この世界に生きる人類全員で、日本に転生します!!!」
おぉぉぉ……。と、戸惑いと響めきが乙女たちに広がった。
三日三晩、リーファと俺と乙女たちの議論が続いた。俺たちが見聞きしてきた、この世界の成り立ち。転生先になる日本がどういうところか。
リーファの部屋で大浴場で、話し合い続けた。
「神様のところで数年過ごしたはずなのに、地上に戻ったら数秒しか経ってなかった。あれは時間の流れが違うというより、ページをめくるみたいに、どの時間にもアクセス出来るってことなんだと思う」
と、俺が言うとリーファも頷いた。
「遡って終わらせないのは、多分あの感じだと、神様同士の見栄があるからだけね」
「だから、その気になったらすぐに終わらせられると思うんだ。太陽を地上に落とすとか、全部凍らせるとか。それこそ、もう一回、人獣を10倍にして襲わせるとか」
「凝った終わらせ方をしようと頭を捻っているうちに逃げちゃって、神様を出し抜きたいのよ。だって、神様の思うままなんて、悔しいじゃない」
俺を召喚した呪術のいわば副作用だった箇所、つまりリーファを里佳に転生させた箇所を抜き出し、大幅に改良を加えて、転生の呪術は完成した。
はじめはポカンと聞いていた乙女たちも、だんだんリーファの言っていることを理解し始めた。
そして、
――やってみる。
と、ミンユーが呟いたのを皮切りに、皆が頷き始めた。
全員の意志が固まった時点で、手分けして住民全員への説明に走った。
「面白えじゃねえか。神様の裏をかくなんてよ」
と、フーチャオさんは愉快そうに笑った。
「あれまあ……。また、生まれるんですか? 私が?」
と、クゥアイのお祖母さんは目を丸くした。
リーファは率先して住民一人ひとりの手を取り、説明に奔走した。
「私も諦めが悪いのよ」
と、悪そうな笑顔を俺に向けた。
「創っておいてハッピーエンドも考えられないような神様が、なんぼのもんじゃい!」
塩対応がよっぽど悔しかったらしい。少しキャラに幅が出ている。
住民は皆んな既に、奇跡を目にしていた。
俺が最後にシアユンさんと結ばれた晩、光り輝く鎖が無数に照らす夜空を見上げていた。それは神や天帝の存在を体感させる経験で、皆んな俺たちの話に真剣に耳を傾けてくれた。
なにより、まだ終戦から1年も経たず、生々しく残る人獣の恐怖の爪痕が、異世界への移住を真剣に検討させた。
――アレをもう1回は、ほんとにムリ。
という気持ちには、温度差がなかった。
神様からの危難は気紛れにいつ降り掛かるか分からないけど、確実にやって来ることだけは間違いなかった。
そして、人獣が現れてちょうど1年という日、剣士団による追悼式典の場で、満場一致をもって『人類全員転生』が決まった。
「これで、良かったよね……?」
と、出身地を一目見ておきたい住民たちを乗せた、蒸気自動車を見送るリーファが俺に尋ねてきた。
「そう思うよ。ある日突然、世界がもぬけの殻になってたら、神様も悔しがるんじゃないかな?」
「そうね」
俺とリーファの異世界での旅が終わろうとしている――。
と、呟いたリーファは部屋に篭って、すべてがクリアに見えるようになった理の解読に没頭し始めた。
「勇吾は側室の乙女たちを寂しがらせたらダメでしょ?」
――側室の乙女?
と、思ったけど、毎晩、側室の部屋に通った。ま……、まあ、いわゆるめくるめく日々を送った。
紋様は俺にも見えていたので、昼間はリーファの解読を手伝う。
そして――。
「よし、出来た」
と、満足気な微笑みを浮かべたリーファが、まずは乙女たちを全員、部屋に集めた。
「私たちの結末は、何がなんでもハッピーエンドであるべきです!!!」
リーファの勢いに、皆んなが気圧された。
「私たちがいつか年老い寿命を終える時、子や孫が神に理不尽に殺されると怯えながら目を閉じていくなんて、まっぴらごめんです!」
「それは、そうね……」
と、シュエンが頷いた。
「だから! ジーウォの住民1200人全員……、いや! この世界に生きる人類全員で、日本に転生します!!!」
おぉぉぉ……。と、戸惑いと響めきが乙女たちに広がった。
三日三晩、リーファと俺と乙女たちの議論が続いた。俺たちが見聞きしてきた、この世界の成り立ち。転生先になる日本がどういうところか。
リーファの部屋で大浴場で、話し合い続けた。
「神様のところで数年過ごしたはずなのに、地上に戻ったら数秒しか経ってなかった。あれは時間の流れが違うというより、ページをめくるみたいに、どの時間にもアクセス出来るってことなんだと思う」
と、俺が言うとリーファも頷いた。
「遡って終わらせないのは、多分あの感じだと、神様同士の見栄があるからだけね」
「だから、その気になったらすぐに終わらせられると思うんだ。太陽を地上に落とすとか、全部凍らせるとか。それこそ、もう一回、人獣を10倍にして襲わせるとか」
「凝った終わらせ方をしようと頭を捻っているうちに逃げちゃって、神様を出し抜きたいのよ。だって、神様の思うままなんて、悔しいじゃない」
俺を召喚した呪術のいわば副作用だった箇所、つまりリーファを里佳に転生させた箇所を抜き出し、大幅に改良を加えて、転生の呪術は完成した。
はじめはポカンと聞いていた乙女たちも、だんだんリーファの言っていることを理解し始めた。
そして、
――やってみる。
と、ミンユーが呟いたのを皮切りに、皆が頷き始めた。
全員の意志が固まった時点で、手分けして住民全員への説明に走った。
「面白えじゃねえか。神様の裏をかくなんてよ」
と、フーチャオさんは愉快そうに笑った。
「あれまあ……。また、生まれるんですか? 私が?」
と、クゥアイのお祖母さんは目を丸くした。
リーファは率先して住民一人ひとりの手を取り、説明に奔走した。
「私も諦めが悪いのよ」
と、悪そうな笑顔を俺に向けた。
「創っておいてハッピーエンドも考えられないような神様が、なんぼのもんじゃい!」
塩対応がよっぽど悔しかったらしい。少しキャラに幅が出ている。
住民は皆んな既に、奇跡を目にしていた。
俺が最後にシアユンさんと結ばれた晩、光り輝く鎖が無数に照らす夜空を見上げていた。それは神や天帝の存在を体感させる経験で、皆んな俺たちの話に真剣に耳を傾けてくれた。
なにより、まだ終戦から1年も経たず、生々しく残る人獣の恐怖の爪痕が、異世界への移住を真剣に検討させた。
――アレをもう1回は、ほんとにムリ。
という気持ちには、温度差がなかった。
神様からの危難は気紛れにいつ降り掛かるか分からないけど、確実にやって来ることだけは間違いなかった。
そして、人獣が現れてちょうど1年という日、剣士団による追悼式典の場で、満場一致をもって『人類全員転生』が決まった。
「これで、良かったよね……?」
と、出身地を一目見ておきたい住民たちを乗せた、蒸気自動車を見送るリーファが俺に尋ねてきた。
「そう思うよ。ある日突然、世界がもぬけの殻になってたら、神様も悔しがるんじゃないかな?」
「そうね」
俺とリーファの異世界での旅が終わろうとしている――。
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