【本編完結】嫌われ偽聖者の俺に、最狂聖騎士が死ぬほど執心する理由

司馬犬

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3章

3.偽聖者は恋を知る

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 エンジに渡された本に書かれていたのは、シャウーマ神と彼に仕える使徒のことだ。
 シャウーマ神は本来翼を持っていたが、ある日自分の補助をさせるため、その翼を切って二人の使徒を作ったと言われている。自分の体を切ってという部分は、なんとなくだがゴートを思い出す。
 その左の翼で作った使徒の名前が、アンダリアだという。
 
「ああ、だから三体の像が多いのか……」
 
 そこまで読んで、ふと思い出したのは神像だ。宮殿内にある神像が三体並んで置かれていることが多いのは、つまりそういうことなのだろう。
 アンダリアはシャウーマの子供みたいなもの、という認識でいいだろう。
 とにかく、その使徒たちはシャウーマの補助として、建国の際にも大いに貢献したと書かれていた。しかし、彼らもシャウーマが去ると同時に消えてしまったそうだ。
 
「……おかしい」
 
 この部分を読む限り、アンダリアにとってシャウーマは仕えるべき相手であり、親にも近い。しかし、彼は俺にシャウーマから神の座を奪ってみろといった。何かしらの裏切りなのだろうか。
 それとも、俺をやり直しさせてまで神業務を行わせることが……アンダリアにとって都合がいいことがある、のか?
 それこそきっと、シャウーマに関わることのはずだ。その時、思い出すのは以前見たフシェンとそっくりな顔をしていたシャウーマと思われる人物の絵だ。
 フシェンにそっくりなシャウーマと、俺が初めての神業務で助けた相手が偶然にもフシェンだということ。そして、彼は神の声が聞こえる特別な人間だった。
 ──果たして、これら全てを偶然で済ませていいことなのだろうか。
 真っ暗な禁書庫の中、ゆらゆらと揺れる燭台の炎を見つめながら、考え続けるが答えは出てこない。大きな溜息を吐き出し、天井を仰ぐ。
 駄目だ、もう少し情報が必要だ。
 
「……恋、か」
 
 ぼんやりしていると、先ほどの出来事をふと思い出す。
 もし俺がフシェンに恋していたとしても、それが報われないものだと知っている。俺に呪いが掛かっている限り、望んだ愛は永遠に手に入れられないのだ。むしろ、フシェンには嫌われているはずだ。
 しかし、どう考えても、最近の俺の周りはおかしい。エンジから始まり、フシェンや周りも俺を露骨に嫌っている様子がない。
 以前なら考えられない状況だ。俺の不運はどこにいったんだ?
 
『ねえ、レダ』
 
 その時、金色の霧が俺の眼前に広がって文字を作った。そういえば、ゴートにしては珍しくさっきからずっと静かだった。いつもなら文句の一つでも書いているのに、俺が本を読んでいる時もずっと大人しくしていた。
 
「どうした?」
 
 前と同じように小声で問いかけると、ゴートは俺の肩から降りて、テーブルの上へと移動する。そして、ゴートは俺に向かって人差し指を向けた。
 
『最近おかしいと思わない? レダの周りに、人が集まってきてるでしょ』
「ああ。俺も今それを思っていた」
 
 俺の罰は、他人に嫌われ、俺自身を孤独にするように作用する。本当ならエンジどころか、フシェンだって側にいないはずだ。だというのに、今日の出来事なんてあり得ない。異常事態だ。
 
『多分だけど……レダはね、本物の神に近づいてきてるんだ』
「え」
『つまり、罰の力が薄まってきているんだよ』
 
 その言葉を聞いて、俺の頭は一瞬真っ白になった。 
 
『今の状態だったら我の強い人間はね、その罰の力に打ち勝つことができるんだと思う。エンジたちがそうだよ。彼らはレダの呪いの影響を受けないみたいなんだ」
「影響を受け……ない?」
『うん。レダは嫌われないってことだよ』
 
 俺は、それのせいで意味もなく何度も嫌われてきた。やったことのない罪を押し付けられ嫌われたり、顔を見ただけで罵られるということだってあった。
 しかしこれからは、理由もなく、ただ嫌われるなんてことがなくなるということだ。
 徐に、自分の手を見ると小さく震えていた。胸の奥から熱がじわりと全身へ広がっていき、口角が吊り上がる。俺はそのままじっとしていられず、勢いよく立ち上がった。
 
『そして彼らに巻き込まれて周りにも、その影響が……ってわわ、レダ!』
 
 俺はテーブルにいるレダを両手で掴むと、上へと掲げる。そして、その場でダンスで踊るかのようにくるりと回った。
 
「っははは! やった! ついにやったぞ、ゴート!」
 
 嬉しくて、俺の興奮しきった声が辺りに大きく響く。愛されたいとずっと願っていても、嫌われる俺には決して叶うことのなかった願い。これは、その念願に向けての大きな一歩だった。
 
『ま、待ってよ、レダぁ! 嫌われなくなっただけで、愛されるようになった訳じゃないと思うよ!』
「だが、嫌われないんだろう! それだけで、最高だ!」
 
 嫌われないというだけでも大きく違う。それにこのまま行けば愛されるようになるのもあと一歩だということになる。
 俺は上機嫌でゴートの掌を指先で撫でると、彼は擽ったそうに指先を震わせた。
 
『ちょ、ちょっと、擽ったいってば! で、でも忘れないでよ! 神業務を一回でも怠ったらまた戻っちゃうかもしれないからね』 
 
 それに対して俺は満面の笑顔を浮かべたまま頷いた。後少しだとわかっているのに、怠る理由なんてない。
 俺はこのまま、順調に進めて念願の愛を手に入れる。俺がいてよかったと思ってくれる人に、愛して貰って──。
 その瞬間、真っ先に愛して貰いたいと思った人物は翠色の瞳と暗闇に溶けるような黒色の髪をもったフシェンだった。
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