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今年の冬は、これまで以上に寒かった。
花屋に勤める俺は、朝早く起きなくちゃならないのに、布団から一歩たりとも出られなくなっていた。
「寒い、無理。無理すぎだろこれ!仕事行きたくない!」
暖房をつけっぱなしにして寝ていても、夜明け前になると気温は容赦なく下がっていく。
布団の中にいても寒さで凍りそうで、それでもさらに寒い外には出たくなくて二度寝の誘惑に抗えなかった。
夜も同じだ。
冷えたシーツの中で震えながら、眠りにつくまでに時間がかかっていた。
そんなある日、布団の中でスマートフォンを握ったまま震える指先で画面をスクロールしていた時に、俺はひとつの商品に出会っていた。
「あつあつちんちんめざまし?」
商品説明には、こう書いてあった。
あったか睡眠、あったか起床。
人間の形を模した、等身大の抱き枕兼目覚まし。
土台となる肉体の肌、髪、瞳、唇、体格、体温設定、肝心な目覚まし機能もフルカスタム可能な優れもの。
そして最も目を引いたのは、多種多様なアタッチメント式の目覚ましちん……。いや、竿だった。
そのサイズに種類も豊富で。
スタンダード、特大、特小、細身、極太、果ては獣型や触手型まで。
その説明を眺めているだけでも、この身がほかほかと温まるようでもあったんだ。
何を隠そう、俺はゲイだ。童貞処女の寂しいゲイだ。
値段は可愛くなかったが、寝坊をすれば死活問題だ。
気付けば俺は、画像を何度か叩いていた。
男型を選択し、まずは肌の色。ベースとなる体つき。
髪の色と長さ、瞳の色。唇の色に乳首の色を選択して、肝心の目覚まし部分へ。
画面に大きく載った竿の種類に、思わずごくりと唾をのむ。
「どうしよう、迷うなー……」
迷う俺に向けて、画像はさらに続いていく。
そして最後のページに、ランダムパックやまとめ買い5点、3点セットなるものを見つけていた。
悩みに悩んだ末、俺は3点セットを選択していた。
スタンダード、特大、極太を。
手早く支払いを済ませて、俺は目覚ましが届くのを待っていた。
痛い出費でもあったけど、寝坊をするよりかはましだと思ったんだ。
***
思ったよりも早く、それは到着していた。
仕事を終えて帰宅した後すぐに、俺の家にはどでかい段ボール箱が届いていた。
「やったー!」
夕飯を食べてすぐ、開封作業にあたっていた。
何枚もの緩衝材に包まれて厳重な包装でやってきたそれは、俺の理想以上のものでもあったんだ。
まるで、本物の人間みたいだった。
触れた瞬間に、じんわりと指先に馴染むその肌。
筋肉の隆起まで精巧に再現された、分厚いこの胸板。
はじめから装着されていたスタンダードな竿は、控えめな存在感を放ちながらも、無骨な美しさを持っていた。
バキバキに腹が割れた、俺よりも図体がでかい黒髪黒目イケメンゴリマッチョがそこにはいたんだ!
「やっべえ!もう、癖の化身だろこれ!」
これだけでも、もう元は取れたんじゃないかというほど俺は喜びに踊り狂う。
しかし、すぐには使えない。
とりあえず充電を始めて、俺は風呂に入ることにする。
今日は特に丁寧に身体を洗って、後ろの部分も何度も念入りに洗浄した。
鏡に映る俺の姿は、彼氏ができたんじゃないかというほどにやけていて、下半身もばりばりやる気に満ちていた。
風呂から上がると、充電が終わっていたようで、そいつは静かに目を開いた。
人工知能が搭載されているようで、設定などは会話形式で行うらしい。
「はじめまして、よろしくお願いいたします」
機械的な音声が流れたものの、その目が俺の姿を映してにっこりと微笑むような顔に変わる。
イケメンの笑顔、やばいわ。
「この度はお買い上げいただき、ありがとうございます。これから初期設定を行います」
そしてその声に促されるがまま、声色、性格、表情、俺に触れるときの温度まで細かく設定をした。
名前を登録して、就寝時間と起床時間もだいたい決めた。
「タケト、今日からよろしく頼む」
落ち着きのある、低い声。
あつあつちんちん目覚ましは、俺の手によって真面目で、無骨で、不器用な性格に仕上がった。
たまに見せるその控えめな笑顔だけで、暴発しそうになってしまうほどに。
「俺好みの男が、ここにいた……!」
「それは、よかった」
機械に恋をするだなんて、馬鹿げていると笑われるかもしれない。
でも今、俺の目の前で微笑むこの存在に、確かにこの心は震えていたんだ。
「これから、よろしくな。そういえば君の名前は、なんて呼べばいいんだ?」
「好きなように決めてくれ。いくつか候補を出すこともできるが」
「そうだなー。じゃあ、候補を教えて」
そして俺はその中から、ぴったりな名前を選んでいた。
「ムサシ。改めて、これからよろしくな」
「タケト、ありがとう」
そして俺は、寝ることにする。
ムサシを布団の中に入れて、その体を触りまくって感激する。
ムサシには全身あったか機能が搭載されているため、抱きつくだけでも湯たんぽのようにあったかかったんだ。
おまけにムサシは全裸だった。
どんなシチュエーションだよと言われそうだけど、服を買う余裕まではなかったんだ。
ごめん、ムサシ。
それにしても、ぽかぽかと温かい熱が俺を睡眠へと誘う。
「このまま、眠れそうだな……」
しかしせっかくこの体を清めたのに、この竿を使わなければ勿体ないという気持ちも生まれてしまう。
静かにスタンダード竿に手を伸ばすものの、そこもほかほかとあったかかった。
「あー、試したい。でも、もう今日は眠い……」
そんなことを言えば、ムサシは静かにこう言った。
「無理に竿を使わなくても、タケトが眠れるのならそれでいい」
「そうなんだ?」
「もちろんだ。タケトが安眠してすっきりと目覚められることが、俺の役目だ。手段は問わない」
そうムサシは、控えめに笑った。
プログラムされている動きだとはわかっていても、これまで恋人に恵まれてこなかった俺にとってはその笑顔が何よりも深く胸に刺さる。
「ムサシ……ありがとう。今日は、このまま寝るよ」
「おやすみ。明日は、どう目覚めたい?」
「どうって?」
「このまま俺が肩を叩いて起こすか、それとも竿を使うかだが」
「とりあえず、明日は普通でいいよ。初日だから」
「わかった。おやすみ、タケト」
「おやすみ、ムサシ」
温かい胸に顔を埋めて、俺は久しぶりに熟睡することができていた。
抱きしめられるだけでも、じゅうぶん温かくて心地よかったんだ。
花屋に勤める俺は、朝早く起きなくちゃならないのに、布団から一歩たりとも出られなくなっていた。
「寒い、無理。無理すぎだろこれ!仕事行きたくない!」
暖房をつけっぱなしにして寝ていても、夜明け前になると気温は容赦なく下がっていく。
布団の中にいても寒さで凍りそうで、それでもさらに寒い外には出たくなくて二度寝の誘惑に抗えなかった。
夜も同じだ。
冷えたシーツの中で震えながら、眠りにつくまでに時間がかかっていた。
そんなある日、布団の中でスマートフォンを握ったまま震える指先で画面をスクロールしていた時に、俺はひとつの商品に出会っていた。
「あつあつちんちんめざまし?」
商品説明には、こう書いてあった。
あったか睡眠、あったか起床。
人間の形を模した、等身大の抱き枕兼目覚まし。
土台となる肉体の肌、髪、瞳、唇、体格、体温設定、肝心な目覚まし機能もフルカスタム可能な優れもの。
そして最も目を引いたのは、多種多様なアタッチメント式の目覚ましちん……。いや、竿だった。
そのサイズに種類も豊富で。
スタンダード、特大、特小、細身、極太、果ては獣型や触手型まで。
その説明を眺めているだけでも、この身がほかほかと温まるようでもあったんだ。
何を隠そう、俺はゲイだ。童貞処女の寂しいゲイだ。
値段は可愛くなかったが、寝坊をすれば死活問題だ。
気付けば俺は、画像を何度か叩いていた。
男型を選択し、まずは肌の色。ベースとなる体つき。
髪の色と長さ、瞳の色。唇の色に乳首の色を選択して、肝心の目覚まし部分へ。
画面に大きく載った竿の種類に、思わずごくりと唾をのむ。
「どうしよう、迷うなー……」
迷う俺に向けて、画像はさらに続いていく。
そして最後のページに、ランダムパックやまとめ買い5点、3点セットなるものを見つけていた。
悩みに悩んだ末、俺は3点セットを選択していた。
スタンダード、特大、極太を。
手早く支払いを済ませて、俺は目覚ましが届くのを待っていた。
痛い出費でもあったけど、寝坊をするよりかはましだと思ったんだ。
***
思ったよりも早く、それは到着していた。
仕事を終えて帰宅した後すぐに、俺の家にはどでかい段ボール箱が届いていた。
「やったー!」
夕飯を食べてすぐ、開封作業にあたっていた。
何枚もの緩衝材に包まれて厳重な包装でやってきたそれは、俺の理想以上のものでもあったんだ。
まるで、本物の人間みたいだった。
触れた瞬間に、じんわりと指先に馴染むその肌。
筋肉の隆起まで精巧に再現された、分厚いこの胸板。
はじめから装着されていたスタンダードな竿は、控えめな存在感を放ちながらも、無骨な美しさを持っていた。
バキバキに腹が割れた、俺よりも図体がでかい黒髪黒目イケメンゴリマッチョがそこにはいたんだ!
「やっべえ!もう、癖の化身だろこれ!」
これだけでも、もう元は取れたんじゃないかというほど俺は喜びに踊り狂う。
しかし、すぐには使えない。
とりあえず充電を始めて、俺は風呂に入ることにする。
今日は特に丁寧に身体を洗って、後ろの部分も何度も念入りに洗浄した。
鏡に映る俺の姿は、彼氏ができたんじゃないかというほどにやけていて、下半身もばりばりやる気に満ちていた。
風呂から上がると、充電が終わっていたようで、そいつは静かに目を開いた。
人工知能が搭載されているようで、設定などは会話形式で行うらしい。
「はじめまして、よろしくお願いいたします」
機械的な音声が流れたものの、その目が俺の姿を映してにっこりと微笑むような顔に変わる。
イケメンの笑顔、やばいわ。
「この度はお買い上げいただき、ありがとうございます。これから初期設定を行います」
そしてその声に促されるがまま、声色、性格、表情、俺に触れるときの温度まで細かく設定をした。
名前を登録して、就寝時間と起床時間もだいたい決めた。
「タケト、今日からよろしく頼む」
落ち着きのある、低い声。
あつあつちんちん目覚ましは、俺の手によって真面目で、無骨で、不器用な性格に仕上がった。
たまに見せるその控えめな笑顔だけで、暴発しそうになってしまうほどに。
「俺好みの男が、ここにいた……!」
「それは、よかった」
機械に恋をするだなんて、馬鹿げていると笑われるかもしれない。
でも今、俺の目の前で微笑むこの存在に、確かにこの心は震えていたんだ。
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「タケト、ありがとう」
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ムサシを布団の中に入れて、その体を触りまくって感激する。
ムサシには全身あったか機能が搭載されているため、抱きつくだけでも湯たんぽのようにあったかかったんだ。
おまけにムサシは全裸だった。
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ごめん、ムサシ。
それにしても、ぽかぽかと温かい熱が俺を睡眠へと誘う。
「このまま、眠れそうだな……」
しかしせっかくこの体を清めたのに、この竿を使わなければ勿体ないという気持ちも生まれてしまう。
静かにスタンダード竿に手を伸ばすものの、そこもほかほかとあったかかった。
「あー、試したい。でも、もう今日は眠い……」
そんなことを言えば、ムサシは静かにこう言った。
「無理に竿を使わなくても、タケトが眠れるのならそれでいい」
「そうなんだ?」
「もちろんだ。タケトが安眠してすっきりと目覚められることが、俺の役目だ。手段は問わない」
そうムサシは、控えめに笑った。
プログラムされている動きだとはわかっていても、これまで恋人に恵まれてこなかった俺にとってはその笑顔が何よりも深く胸に刺さる。
「ムサシ……ありがとう。今日は、このまま寝るよ」
「おやすみ。明日は、どう目覚めたい?」
「どうって?」
「このまま俺が肩を叩いて起こすか、それとも竿を使うかだが」
「とりあえず、明日は普通でいいよ。初日だから」
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