1 / 6
速攻ポチりました
しおりを挟む
今年の冬は、これまで以上に寒かった。
花屋に勤める俺は、朝早く起きなくちゃならないのに、布団から一歩たりとも出られなくなっていた。
「寒い、無理。無理すぎだろこれ!仕事行きたくない!」
暖房をつけっぱなしにして寝ていても、夜明け前になると気温は容赦なく下がっていく。
布団の中にいても寒さで凍りそうで、それでもさらに寒い外には出たくなくて二度寝の誘惑に抗えなかった。
夜も同じだ。
冷えたシーツの中で震えながら、眠りにつくまでに時間がかかっていた。
そんなある日、布団の中でスマートフォンを握ったまま震える指先で画面をスクロールしていた時に、俺はひとつの商品に出会っていた。
「あつあつちんちんめざまし?」
商品説明には、こう書いてあった。
あったか睡眠、あったか起床。
人間の形を模した、等身大の抱き枕兼目覚まし。
土台となる肉体の肌、髪、瞳、唇、体格、体温設定、肝心な目覚まし機能もフルカスタム可能な優れもの。
そして最も目を引いたのは、多種多様なアタッチメント式の目覚ましちん……。いや、竿だった。
そのサイズに種類も豊富で。
スタンダード、特大、特小、細身、極太、果ては獣型や触手型まで。
その説明を眺めているだけでも、この身がほかほかと温まるようでもあったんだ。
何を隠そう、俺はゲイだ。童貞処女の寂しいゲイだ。
値段は可愛くなかったが、寝坊をすれば死活問題だ。
気付けば俺は、画像を何度か叩いていた。
男型を選択し、まずは肌の色。ベースとなる体つき。
髪の色と長さ、瞳の色。唇の色に乳首の色を選択して、肝心の目覚まし部分へ。
画面に大きく載った竿の種類に、思わずごくりと唾をのむ。
「どうしよう、迷うなー……」
迷う俺に向けて、画像はさらに続いていく。
そして最後のページに、ランダムパックやまとめ買い5点、3点セットなるものを見つけていた。
悩みに悩んだ末、俺は3点セットを選択していた。
スタンダード、特大、極太を。
手早く支払いを済ませて、俺は目覚ましが届くのを待っていた。
痛い出費でもあったけど、寝坊をするよりかはましだと思ったんだ。
***
思ったよりも早く、それは到着していた。
仕事を終えて帰宅した後すぐに、俺の家にはどでかい段ボール箱が届いていた。
「やったー!」
夕飯を食べてすぐ、開封作業にあたっていた。
何枚もの緩衝材に包まれて厳重な包装でやってきたそれは、俺の理想以上のものでもあったんだ。
まるで、本物の人間みたいだった。
触れた瞬間に、じんわりと指先に馴染むその肌。
筋肉の隆起まで精巧に再現された、分厚いこの胸板。
はじめから装着されていたスタンダードな竿は、控えめな存在感を放ちながらも、無骨な美しさを持っていた。
バキバキに腹が割れた、俺よりも図体がでかい黒髪黒目イケメンゴリマッチョがそこにはいたんだ!
「やっべえ!もう、癖の化身だろこれ!」
これだけでも、もう元は取れたんじゃないかというほど俺は喜びに踊り狂う。
しかし、すぐには使えない。
とりあえず充電を始めて、俺は風呂に入ることにする。
今日は特に丁寧に身体を洗って、後ろの部分も何度も念入りに洗浄した。
鏡に映る俺の姿は、彼氏ができたんじゃないかというほどにやけていて、下半身もばりばりやる気に満ちていた。
風呂から上がると、充電が終わっていたようで、そいつは静かに目を開いた。
人工知能が搭載されているようで、設定などは会話形式で行うらしい。
「はじめまして、よろしくお願いいたします」
機械的な音声が流れたものの、その目が俺の姿を映してにっこりと微笑むような顔に変わる。
イケメンの笑顔、やばいわ。
「この度はお買い上げいただき、ありがとうございます。これから初期設定を行います」
そしてその声に促されるがまま、声色、性格、表情、俺に触れるときの温度まで細かく設定をした。
名前を登録して、就寝時間と起床時間もだいたい決めた。
「タケト、今日からよろしく頼む」
落ち着きのある、低い声。
あつあつちんちん目覚ましは、俺の手によって真面目で、無骨で、不器用な性格に仕上がった。
たまに見せるその控えめな笑顔だけで、暴発しそうになってしまうほどに。
「俺好みの男が、ここにいた……!」
「それは、よかった」
機械に恋をするだなんて、馬鹿げていると笑われるかもしれない。
でも今、俺の目の前で微笑むこの存在に、確かにこの心は震えていたんだ。
「これから、よろしくな。そういえば君の名前は、なんて呼べばいいんだ?」
「好きなように決めてくれ。いくつか候補を出すこともできるが」
「そうだなー。じゃあ、候補を教えて」
そして俺はその中から、ぴったりな名前を選んでいた。
「ムサシ。改めて、これからよろしくな」
「タケト、ありがとう」
そして俺は、寝ることにする。
ムサシを布団の中に入れて、その体を触りまくって感激する。
ムサシには全身あったか機能が搭載されているため、抱きつくだけでも湯たんぽのようにあったかかったんだ。
おまけにムサシは全裸だった。
どんなシチュエーションだよと言われそうだけど、服を買う余裕まではなかったんだ。
ごめん、ムサシ。
それにしても、ぽかぽかと温かい熱が俺を睡眠へと誘う。
「このまま、眠れそうだな……」
しかしせっかくこの体を清めたのに、この竿を使わなければ勿体ないという気持ちも生まれてしまう。
静かにスタンダード竿に手を伸ばすものの、そこもほかほかとあったかかった。
「あー、試したい。でも、もう今日は眠い……」
そんなことを言えば、ムサシは静かにこう言った。
「無理に竿を使わなくても、タケトが眠れるのならそれでいい」
「そうなんだ?」
「もちろんだ。タケトが安眠してすっきりと目覚められることが、俺の役目だ。手段は問わない」
そうムサシは、控えめに笑った。
プログラムされている動きだとはわかっていても、これまで恋人に恵まれてこなかった俺にとってはその笑顔が何よりも深く胸に刺さる。
「ムサシ……ありがとう。今日は、このまま寝るよ」
「おやすみ。明日は、どう目覚めたい?」
「どうって?」
「このまま俺が肩を叩いて起こすか、それとも竿を使うかだが」
「とりあえず、明日は普通でいいよ。初日だから」
「わかった。おやすみ、タケト」
「おやすみ、ムサシ」
温かい胸に顔を埋めて、俺は久しぶりに熟睡することができていた。
抱きしめられるだけでも、じゅうぶん温かくて心地よかったんだ。
花屋に勤める俺は、朝早く起きなくちゃならないのに、布団から一歩たりとも出られなくなっていた。
「寒い、無理。無理すぎだろこれ!仕事行きたくない!」
暖房をつけっぱなしにして寝ていても、夜明け前になると気温は容赦なく下がっていく。
布団の中にいても寒さで凍りそうで、それでもさらに寒い外には出たくなくて二度寝の誘惑に抗えなかった。
夜も同じだ。
冷えたシーツの中で震えながら、眠りにつくまでに時間がかかっていた。
そんなある日、布団の中でスマートフォンを握ったまま震える指先で画面をスクロールしていた時に、俺はひとつの商品に出会っていた。
「あつあつちんちんめざまし?」
商品説明には、こう書いてあった。
あったか睡眠、あったか起床。
人間の形を模した、等身大の抱き枕兼目覚まし。
土台となる肉体の肌、髪、瞳、唇、体格、体温設定、肝心な目覚まし機能もフルカスタム可能な優れもの。
そして最も目を引いたのは、多種多様なアタッチメント式の目覚ましちん……。いや、竿だった。
そのサイズに種類も豊富で。
スタンダード、特大、特小、細身、極太、果ては獣型や触手型まで。
その説明を眺めているだけでも、この身がほかほかと温まるようでもあったんだ。
何を隠そう、俺はゲイだ。童貞処女の寂しいゲイだ。
値段は可愛くなかったが、寝坊をすれば死活問題だ。
気付けば俺は、画像を何度か叩いていた。
男型を選択し、まずは肌の色。ベースとなる体つき。
髪の色と長さ、瞳の色。唇の色に乳首の色を選択して、肝心の目覚まし部分へ。
画面に大きく載った竿の種類に、思わずごくりと唾をのむ。
「どうしよう、迷うなー……」
迷う俺に向けて、画像はさらに続いていく。
そして最後のページに、ランダムパックやまとめ買い5点、3点セットなるものを見つけていた。
悩みに悩んだ末、俺は3点セットを選択していた。
スタンダード、特大、極太を。
手早く支払いを済ませて、俺は目覚ましが届くのを待っていた。
痛い出費でもあったけど、寝坊をするよりかはましだと思ったんだ。
***
思ったよりも早く、それは到着していた。
仕事を終えて帰宅した後すぐに、俺の家にはどでかい段ボール箱が届いていた。
「やったー!」
夕飯を食べてすぐ、開封作業にあたっていた。
何枚もの緩衝材に包まれて厳重な包装でやってきたそれは、俺の理想以上のものでもあったんだ。
まるで、本物の人間みたいだった。
触れた瞬間に、じんわりと指先に馴染むその肌。
筋肉の隆起まで精巧に再現された、分厚いこの胸板。
はじめから装着されていたスタンダードな竿は、控えめな存在感を放ちながらも、無骨な美しさを持っていた。
バキバキに腹が割れた、俺よりも図体がでかい黒髪黒目イケメンゴリマッチョがそこにはいたんだ!
「やっべえ!もう、癖の化身だろこれ!」
これだけでも、もう元は取れたんじゃないかというほど俺は喜びに踊り狂う。
しかし、すぐには使えない。
とりあえず充電を始めて、俺は風呂に入ることにする。
今日は特に丁寧に身体を洗って、後ろの部分も何度も念入りに洗浄した。
鏡に映る俺の姿は、彼氏ができたんじゃないかというほどにやけていて、下半身もばりばりやる気に満ちていた。
風呂から上がると、充電が終わっていたようで、そいつは静かに目を開いた。
人工知能が搭載されているようで、設定などは会話形式で行うらしい。
「はじめまして、よろしくお願いいたします」
機械的な音声が流れたものの、その目が俺の姿を映してにっこりと微笑むような顔に変わる。
イケメンの笑顔、やばいわ。
「この度はお買い上げいただき、ありがとうございます。これから初期設定を行います」
そしてその声に促されるがまま、声色、性格、表情、俺に触れるときの温度まで細かく設定をした。
名前を登録して、就寝時間と起床時間もだいたい決めた。
「タケト、今日からよろしく頼む」
落ち着きのある、低い声。
あつあつちんちん目覚ましは、俺の手によって真面目で、無骨で、不器用な性格に仕上がった。
たまに見せるその控えめな笑顔だけで、暴発しそうになってしまうほどに。
「俺好みの男が、ここにいた……!」
「それは、よかった」
機械に恋をするだなんて、馬鹿げていると笑われるかもしれない。
でも今、俺の目の前で微笑むこの存在に、確かにこの心は震えていたんだ。
「これから、よろしくな。そういえば君の名前は、なんて呼べばいいんだ?」
「好きなように決めてくれ。いくつか候補を出すこともできるが」
「そうだなー。じゃあ、候補を教えて」
そして俺はその中から、ぴったりな名前を選んでいた。
「ムサシ。改めて、これからよろしくな」
「タケト、ありがとう」
そして俺は、寝ることにする。
ムサシを布団の中に入れて、その体を触りまくって感激する。
ムサシには全身あったか機能が搭載されているため、抱きつくだけでも湯たんぽのようにあったかかったんだ。
おまけにムサシは全裸だった。
どんなシチュエーションだよと言われそうだけど、服を買う余裕まではなかったんだ。
ごめん、ムサシ。
それにしても、ぽかぽかと温かい熱が俺を睡眠へと誘う。
「このまま、眠れそうだな……」
しかしせっかくこの体を清めたのに、この竿を使わなければ勿体ないという気持ちも生まれてしまう。
静かにスタンダード竿に手を伸ばすものの、そこもほかほかとあったかかった。
「あー、試したい。でも、もう今日は眠い……」
そんなことを言えば、ムサシは静かにこう言った。
「無理に竿を使わなくても、タケトが眠れるのならそれでいい」
「そうなんだ?」
「もちろんだ。タケトが安眠してすっきりと目覚められることが、俺の役目だ。手段は問わない」
そうムサシは、控えめに笑った。
プログラムされている動きだとはわかっていても、これまで恋人に恵まれてこなかった俺にとってはその笑顔が何よりも深く胸に刺さる。
「ムサシ……ありがとう。今日は、このまま寝るよ」
「おやすみ。明日は、どう目覚めたい?」
「どうって?」
「このまま俺が肩を叩いて起こすか、それとも竿を使うかだが」
「とりあえず、明日は普通でいいよ。初日だから」
「わかった。おやすみ、タケト」
「おやすみ、ムサシ」
温かい胸に顔を埋めて、俺は久しぶりに熟睡することができていた。
抱きしめられるだけでも、じゅうぶん温かくて心地よかったんだ。
12
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる