女同士のオムニバス

陽花紫

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初体験

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現代、バイ×ノンケ
――――――――――


「どうして男って、あんなにがさつなの?」
「それ、わかるわー」

 何度も夜を繰り返すたびに、鬱憤だけが溜まっていた。
 乱暴な愛撫に、やたらと短い前戯。そのくせ腰の動きも単調で、いつも私は演技をしていた。
 正直言って、セックスの時間が苦痛だった。

 その不満は、次第に私の欲望の形を変えていく。
 私だったら、こう触るにに。私だったら、こう愛するのに。

 そう思って、友達のミク相談にしてみたのがきっかけだった。
 ミクはバイセクシャルで、男とも女とも交わったことがあると言っていた。

「でも、相手にもよるかもね。男でも、繊細に愛してくれる人はいたよー?」

 ミクはこれまでに出会った誰よりも性に奔放で、それでも誰よりも気が合う親友だった。
 互いの彼氏彼女の事情もつつみ隠せず話せるような仲でもあったし、何より彼女には色気があった。
 最初は、私もその色気にあやかりたいとも思っていた。
 でも、それは違っていた。

「サエはさ、そういう人に出会ってないだけだと思うな」
「そういう人って?」
「本当に好きな人」

 いつしか私は、ミクに恋心を抱くようになっていた。
 私よりも女らしい長い髪に、いつでも綺麗なネイル。メイクも完璧で、ファッションセンスも抜群だった。

 思わず頬が、熱くなる。
 誤魔化すようにお酒を飲めば、ミクは明るく笑っていた。

「やだー!サエ、実はピュア?」
「そんなんじゃないって」
「うっそだー」

 さらりと、ミクの長い髪が私の肩へと流れていく。

「私は、サエのこと好きだよ?」

 大きな瞳が、私のほうを向いていた。
 この目に騙された男女は、これまで何人いるのだろうか。

「サエは?」
 そう促されて、私は思わず口にしていた。
「私も、……好きだけど。でもそれは……」

 友達としての好きだと、言いたかった。
 でもその言葉を呑み込む原因になったその口づけは、ひどく柔らかくて優しいもので。
 気づいたら、私はこの身を委ねていた。

 何度か唇を重ね合わせて、気づけば押し倒されていた。
 正直言って、友達とこういう関係になるなんてもっと恥ずかしいものだと思っていた。
 けれども今は、今だけでもいいからミクのぬくもりを感じていたかった。

「サエ、痛くない?」
「うん」

 その場所に、ミクの細長い手が入ってくる。
 まだ一本だけなのに、ひどく丁寧に私の中を探っていく。

「……っ、」

 思わず声を我慢すれば、ミクは嬉しそうに笑っていた。
「かわいいよ、サエ」
 これまで付き合った誰よりも甘い声で、ミクはそう囁いた。

「気持ちいい?」
「……っ……」

 同じ器官を持っているからこそ、ミクは躊躇なくその指を増やしていく。
 けれどひどくゆっくり動いて、私はあまりのもどかしさに思わずミクの顔を見つめていた。

「もう少し、早くても……いいから……」
「ん、わかった」

 ミクはにっこりと笑って、私の額にキスをした。

「サエもさ、いつもここいじる?」

 いつしか溢れ出た液体をぷっくりと膨らんだその部分に塗りつけるようにして、ミクは明るく問いかける。

「……いじるよ。好きだから」
「そ、私も好き」

 くり、と撫で上げられただけなのに私の身体はこれまでにないくらい震えていた。
 心臓の音がやけにうるさくて、いつしか目も開けていられないほど私はサエの手つきに夢中だった。

「こら、なに一人で気持ちよくなってるの?」

 時折深くキスをされて、私の意識は呼び戻される。
 荒々しくされても、いつものミクの優しさは消えなかった。むしろかえって、甘い刺激であるようにも感じていた。
 薄く短い舌に、甘く香るシャンプーの香り。私よりも大きなその胸の感触はひどくあたたかくて、まるでミクの思いが詰まっているようにも思えていた。

 ひとしきり絶頂を迎えた後で、私たちは静かに水を飲んでいた。

「ごめん、やりすぎた」

 そうミクは頭を下げていたけれど、私は静かに髪を撫でた。

「ううん。気持ちよかった。……ありがとう」

 そう頬にキスをすれば、ミクはいつもの笑顔を浮かべていた。

***

 あれから、私がミクとどうこうなるようなことはなかった。
 お互い、なかったことにしようと言ったから。
 私にとってミクは大切な友達で、ミクにとっても私はかけがえのない理解ある友達らしい。

 だけど時々、ものすごくあの肌が恋しいときがある。
 ミクのあの細い指で、また、掻き回してもらいたいとも。

END
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