貴族の次男に転生した俺はこの身分を手放して自由を求めて生きていく

陽花紫

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深い夜※

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 いつものように唇を重ねて、そっと互いの肌に触れる。

 俺よりも薄いその胸元に頬を寄せれば、あたたかな温もりと確かな鼓動を感じることができた。
「アル、」
 そう見上げれば、細長い指が俺の髪を撫でていく。
 そのひとときが、何よりも幸せだった。

 決して、忘れたわけじゃない。
 決して、重ねているわけではない。そう言い聞かせても、あの落ち着いた声と穏やかな笑みがどうしようもなく恋しい時があった。

 ――フラン。

 彼は今、どのようにして生きているのだろうか。
 幸せなのだろうか、飢えてはいないだろうか。
 同じ平民になったからこそ、貴族の屋敷の使用人として働くということがどれほど大変であるのかを知った。

 ――もしフランに再び出会うことができたのなら、真っ先に謝りたい。そして、俺は……。

「何を、考えているんだ?」
 その言葉に、俺はアルの痛んだ髪を撫でかえす。
「……なにも。幸せだなって……」
 誤魔化すように口づけをせがんで、アルの愛に深く溺れていく
 狭い寝台ではあったけれど、かえってその窮屈さがよかった。
 肌をぴったりと寄せ合って、その吐息も一つになってしまいそうなほどに近かった。
「リオ。……愛しい俺のリオ」
 アルは俺の存在を確かめるかのように、ひどく丁寧にこの身を抱いた。

 もどかしい愛撫、焦らすような口づけ。その全てが初々しくて、我慢がきかなくて。
 はしたないとは思いながらも、俺はアルの熱に手を添えてこう伝えていた。

「欲しいんだ、アルの全てが……」

 アルは嬉しそうに笑って、この額に口づけをした。
「わかったよ」
 いっそう強く抱きしめられて、求めていたものが与えられる。
「俺も、幸せだ……。リオ、っ……」
 熱い吐息に混ざって、その幸せが素肌へと落ちる。

 アルの滾る熱をこの身に感じながら、俺もまた多くの幸せを感じていた。
 快楽の波に呑まれながら、それでもアルは決して俺の手を離しはしなかった。絡みつく指はそのままに、時折激しい口づけを交わして。
 気づけば俺は、両の目から涙を流していた。
 頬を伝う涙を舐め取って、アルは穏やかに微笑んでいた。
 その笑みは、俺が一番好きなものだった。
 幸せに満ち溢れた、優しい微笑み。

 ――心から愛する人ができたのだと、伝えたい。

 そのようなことを思いながら、俺はアルの身に強くしがみついていた。
 アルもまた熱い息を吐きながら、熱の全てを出し切った。

***

 愛を確かめ合ったあと、決まって俺はアルの身を強く抱きしめて眠りについた。
 初めは苦しいと言っていたけれど、今となっては、アルは諦めたかのように力なく腕を広げていた。
 もう二度と、この温もりを手放したくはない。
 そのように願いながら、俺は静かに胸元に唇を寄せた。
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