婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。

三葉 空

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第1話 婚約破棄、そして家からの追放

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「ユリナ、お前に婚約破棄を言い渡す」

 オメルダ公爵家の長男、ブリックス様がそうおっしゃいます。

「あの、それは……なぜですか?」

「俺はお前よりも、妹のアメリアの方を愛しているのだ」

 ハッキリと言われてしまいます。

 そう、私、ユリナ・バラノンは伯爵令嬢。見た目は決して悪くないと思いますが、ハッキリ言って地味な女だそうです。一方、妹のアメリアは華やかな装いで、社交界でも人気があります。なぜなら、彼女は私よりも両親から溺愛されており、欲しいドレスもネックレスも何でも、手に入ってしまうからです。

「話はまとまりましたかな?」

 まるで図ったかのように、部屋の中に私の家族が入って来ます。

 父のニック、母のヒルダ、そして、妹のアメリアです。

「これはこれは、バラノン伯爵ご一行。たった今、そちらの長女さまに婚約破棄を言い渡したところです」

 そう言って、ブリックス様はもう私には目もくれず、サッと立ち上がってアメリアの下に向かう。

「アメリア、今日から君が僕の婚約者だ」

「まあ、本当ですか?」

「すぐにでも君と結婚したいが、色々と段取りがあるからね」

「いえ、とても嬉しいですわ」

 まるで、この世界で私だけ1人ぼっちのように、他のみんなで盛り上がっています。

「……と言う訳だから、ユリナ。お前はもう用済みだ。本日をもって、我が家から除籍する」

「えっ?」

「つまりは、追放だ。今すぐ出て行け」

 父を初め、私の家族は……いえ、元家族たちは、容赦なく睨みを利かせて言います。

「早く、立ち去りなさい。もうあなたは、私の娘ではりません」

「お姉さま……いえ、元お姉さま。あなたがいなければ、最初から私がブリックス様と婚約者になれたのよ。全く、余計な回り道をしてしまったわ」

「まあまあ、アメリア。けどそのおかげで、僕らは愛を育むことが出来たじゃないか」

「ブリックス様……もう、惚れ惚れしちゃいますわ」

「今さらかい?」

「いえ、とっくの前から」

「おいおい、親の前ではしたないぞ、君たち」

「まあまあ、良いじゃないですか、あなた」

 ワハハ!とまた私を置いてけぼりにして、盛り上がる元家族と元婚約者たち。

 私はスッと黙って、その場から立ち去ります。元より、あまり持ち物は無いので。最低限の衣類などをリュックにまとめて、家を出ました。
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