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魔龍咆哮す

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 すっかり勢いづいた俺達は、そんな感じで水魔龍エウムの手下共をばったばったと倒していく。

 ……それからしばらくして……。

「なあ? 確かここだったよな?」
「……うん、間違いないですね。ここいらに沢山あった小さい岩礁群が無くなっていますし」 

 俺達の乗っている軍用船はひときわ大きい岩礁の目の前で待機していた。

 更にはギルド長がウィンフィルさんと何やら確認しあっている感じだ。

「良し! では祠の封印を解く。ウィンフィル・レノア・ドラネス・ハクドウ・サラニスそして、杉尾っ! 俺の前に」
「へ? 俺? 何故です?」

 正直、何故ギルド長に名前を呼ばれたのかが分からない。

「……えっとね完全には理解出来ないだろうけど、今呼ばれたメンバーって何かしろ女神アステラに所縁がある人なんだよね。ちなみにもう一人本当はいたんだけど、この前のデビルクラーケンとの戦闘でね……」
「成程、転生者の俺は代理の封印を解く該当者及びスペアというわけですね」

 ああ……「俺が討伐メンバーに選ばれた理由の1つはこれなんだな」と逆に理解出来てスッキリした。

(でないと実力を加味しても、評議会7人の満場一致とか考えられないしね) 

 理解出来た俺はその役目を果たすべくギルド長の前に歩み寄る。

「難しい事は考えなくていい。封印解除のコントロールはサラニス達が行う。俺達7人は手を繋ぎ輪になればいいんだ。いいな?」
「はい!」

 俺達は返事と共にギルド長に言われた通りそれぞれ手を繋ぎ円になる。

 おそらく配置やら属性とか何やらあるんだろうけど、もう専門外のとこはおまかせなのでどうでもいい。

 多分サラニスさんは神官か何かだと俺は予想している。

「ではすまんが、女神アルテナの司祭サラニス! 始めてくれ!」
「はっ!」

 白い布地のゆったりとした司祭服を着た銀髪ショートヘアの40代の落ち着いた雰囲気の女性。

 確かギルド長の2人目の奥さんでしたっけ……が満月を見上げる……。

「神よ! 月の女神アルテナよ! 今ここに7人の集いし貴方の従者が降ります故、彼や彼女らを触媒とし、再び貴方の神力にて祠の封印を解く力を与えたまえ!」

 すると不思議な事に俺達に向い月光がより強く輝き注がれる!

 そしてその強き光は更に強き光となって眩く輝き、それは司祭サラニスに向かって終結していく。

「……この神力にて祠の封印を解除したまえ!」

 司祭サラニスの力ある言葉と共に目の前にあった大きな岩礁は次第に海から上へ上へと盛り上がって来る……。

 数分後……岩礁だったものは大きな大きなまるで山のような大きさの祠となり、その本来の姿を表したのだった。

 その小舟が通れるくらいの入り口があるその祠。

(良く見ると形が何やらドラゴンの頭のように見えるのは俺の気のせいだろうか? なんか禍々しいものを感じるんですけど?) 

「ではサラニス達7人はこの船で待機及び見張りを頼む! では皆行くぞ!」
「おおーっ!」

 俺達はそれぞれ1人乗りの小舟に乗り換え、手荷物を乗せえっさほっさと漕いで中を進んでいく。

 ……中を進んでいくとまるで鍾乳洞のように上の空間は広がっていく感じだ。

 幸い壁には発光するコケのようなものが生息してくれている関係で、明かりが要らないのがラッキーだったが……。

 しばらくそのまま進んでいくと道は二手に分かれていた。

「……じゃ、僕達は左に進むから、杉尾たちはエウム討伐頑張ってね!」
「ああ……お前もな!」

 俺はレノア達に手を振り、ギルド長と共に船をひたすら漕いでいく。

 そう、水魔龍エウムに会う為に!

 結界で封印していた関係だろうか?

 幸いな事に中にはデビルシャークなどの海洋系のモンスターは見当たらない。

「着いたぞ……」

 ギルド長の言葉に息を飲む俺達……。

 目の前には海水がひいて岩肌がむき出しになった陸地になっている。

 俺達は小舟をそこに停留させ、そこから歩いて進んでいく。

 しばらく進むとだだっ広い空間が広がっている場所に到着する。

(……この感じ、いよいよってとこだろう……) 

「ここだ……」 

 ギルド長の視線を俺は追う。

 するとそこには隅で何やら両手を天に広げ呪文を唱えてる恰好をしている石像があった……。

 近づいそれを良く見ると、その人物像は3メートルはあり、何と驚いた事に龍の頭しているではないか!

(こ、これが魔王直属の幹部7魔将水魔龍エウムなのか……) 

 俺は緊張の余り、生唾を飲み込む……。

 もう一度その石像を見ると、何やら少し動いている気がした……。

「ギルド長、そろそろ奴の封印が完全に解けます!」
「だそうだ。……皆準備はいいか?」

「はいっ!」

 ウィンフィルさんとギルド長の言葉に対し、俺達はそれぞれ配置につき戦闘態勢に入る。

 目の前の石像に次第にヒビが入り、それはそのまま天を仰ぎ、大きな咆哮を上げる!

 そう、怒りとも歓喜ともとれる魔龍の咆哮が祠内に響き渡り、その振動からか岩壁からは小石が転がり落ちているのが見える……。

 そして俺達は嫌でも実感するのだ。

 水魔龍エウムが完全に復活した事を……。
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