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大庭園でのおもてなし

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 そんなこんなで翌日のお昼……。

 俺達は領主邸内の大庭園に来ていた。

 東京ディズニーランドも真っ青な広さと、幾何学的な美しさがあるフランス式庭園……。

 庭園のど真ん中に配置された大きな池には青空とゆったりと流れる白い雲が綺麗に写っており、その池にひらりと落ちた葉が呼ぶ波紋がまた何とも言えない情緒を醸し出している。

 更にはその真ん中に配置された噴水がまた何とも涼しそうに見える。

 また、両手を広げて堂々と立っているその女神の銀像は所々に宝石が散りばめられているのもあり、神秘的でとても輝かしくて、それを見ているだけでも飽きない仕様だ。

 まるでベルサイユ宮殿のような建物の隅には、整然と並んだ刺繍のようなカラフルな花々が綺麗に配置されてある。

「うわあ……広いし立派だね……」
「ああ……こりゃ、スゲー緊張するな」 
「ウ、ウォン!」

(昔は庭園の広さが権力の象徴だったらしいが、こりゃまたゴージャスすぎるな)

 凄すぎて大庭園を散策するだけでも飽きないし、ここの領主の富の具合が浮き彫りになるよ、ホント。

 俺達は丸や四角・渦巻き状など、美しく刈り込まれたトピアリーの木技を見ながら、多数の人が賑わう庭園を散策していた。

 料理の前の場馴れと、調理場所の配置を考えてってことだけどね。

 ちな、俺達は今日は調理人兼ウェイトレスとしてここにきているので、恰好は白帽子に白調理服だ。

 それだからか、ユキ嬢も何だか嬉しそうだ。

「じゃ、杉尾。ブースは例の場所でいいかな?」
「ああ……そこが色々いいだろうしな」
「ウォン!」

 うん、ユキ嬢もそう言っておられるし。

 という事で数十分後、俺達は噴水の真横の大きな通りに陣どり、様々な魚料理を調理していた。

 この世界には便利な事に魔法や魔法具があるため、炎や冷蔵、それに荷物を運ぶ手段には困らないのが素晴らしい。

 なので、ガスバーナーや冷蔵庫のようなアイテムをサクサク使用しながら調理していく。

 俺は主に寿司などの和洋折衷料理担当。

 レノアはギルド長直伝のレシピ洋食担当。

 オヤジさんとその従業員達は店自慢の一品という分業でだ。

 料理が出来次第、次々と運んで貴族連中や豪商などの客人達に料理を説明していく俺達。

「おお……見たことない装飾料理……白とカラフルな野菜の見事なコントラスト。だが見た目生の様だが?」

 俺の手に持つ銀のお盆に乗った、洋風創作エビ寿司に早速質問が入る。

 純白のコタルディを纏った初老の落ち着いた貴族……。

 話し方と身なりと言い結構な身分と見た。

「生が苦手でしたら、炙りもございます」

 俺はにっこり笑う【チャラ男スマイルレベル4】を使い、相手の警戒心を解いて行く。

「ほお? 気が利くね? では折角なのでそちらを……」
「かしこまりました……」

 静かに一礼し、俺は炙り寿司をその老貴族にお渡しする。

『①職業チャラ男スキルの内訳 【チャラ男スマイルレベル5】会話相手を明るくし、警戒心を解く』

 まあ、スキル効果もだが、ここら辺の接客教育は昨日オヤジさん達に急遽叩きこんで貰った成果だが。

 元々こちとら接客業でバイトしてたんで、特に問題なかったわけですが……。

「……おお、ほんのり甘いエビに少しツンとくる不思議な味……。このライスがまた優しい味がして食欲をそそるね……?」
「はい! ありがとうございます! それは当店でしかない創作寿司というものでして……」

「ほう……とても興味深いね? また後できても良いかな?」
「勿論です!」

 老貴族は白ワインが注がれたグラスを上手そうに飲み干し、満足しながら去って行った……。

(良し! 取り敢えず掴みはオッケーかな?)

 俺の周りを見ると、オヤジさん達やレノアの周りにも人が沢山集まってきている。

 皆、俺同様にお客さん達に軽く説明し、料理を配って行っている。

 ちなみにユキは、俺達の調理場所で大人しく番犬ならぬ番狼としてお留守番中だ。

 適材適所という奴ですねハイ……。

 数十分後ふと見ると、俺達の選んだ場所が良かったのか、凄い人だかりが出来てきている。

「大成功だね……」
「ああ……」

 すれ違いになったレノアは銀のお盆に料理を持ちながら俺にウィンクする。

 選んだ場所がまず良かったしな……。

 噴水という良く目立つ場所……。

 更にはど真ん中にあるため、通行人はここを必ず通るしね。

 真正面のお店が肉料理専門店なのもこちらには都合が良かった。

 専門料理だとどうしても飽きるから、こちらにもお客が流れて来るんだよね。

 でも、それはこちらも同じ、こちらに飽きたら当然あちらにも客が流れる。

 速い話が運よく相乗効果でお客さんが集まりつつあった。

 もう一つ、ここを選んだ理由。

 それは噴水の涼しさで、新鮮な魚が傷みにくい。

 だからこそ、肉料理屋もここをブースとして選んだんだろうけど。

 とか考えていると、オヤジさんが忙しそうに空になった銀のお盆を抱えてこちらに向かってくる。

「おお、杉尾君! お陰で大盛況だね!」

 唇の上のカールした立派なヒゲを片手でいじりながら、満面な笑みを浮かべるオヤジさん。

「まあ、やはり昨日取り組んだアレが良かったですよね」
「ああ、アレは成功だったよね!」

 俺達が昨日取り組んだアレ……。

 それは……。
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