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1.転職!転勤!→異世界

第一現地人(に)発見(された)

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第10話 第一現地人(に)発見(された)


 
 アカン、これ現地人きた…!
 ここに現地人まだ来ないんじゃないの?!
 イケオジ、どう言う事?!?!

 俺が心中アワアワしてる中、現地人さんがどっかりと俺の斜め向かいに勝手に座り込む。…うあ、土足だ。最悪だ。後で掃除だわ。

「なあアンタ、何処から攫われて来たんだ?小綺麗なナリしてるから貴族なんだろ?金次第だが家まで送ってやるよ。」

 ヤバい、なんか誘拐に誤解されてるし、金ヅル扱いの気配がビッシビシ感じる!

「あ、あの、えーと、どうやってコチラまで来たんです?道は塞がってたと思うんですが…。」

 緊張し過ぎて文脈無視の質問してしまった!

「ああ、土で埋まってたな。普段ここはただの洞穴ほらあななんだが、不自然に入り口が土に埋まってたからロックス(※土魔法)で吹っ飛ばした。たまにここ野宿で使ってたから気になったんだわ。」

 おっと、ここ未使用じゃなかったんだ。あと意外に人里近いっぽい?
 あとロックスってなんだろ…。あの土壁5ブロック、多分5メートル分は入り口に詰めたけどそれ吹っ飛ばすとかマジ怖すぎる。これは後で外部のカモフラもしないとヤバいな。

「んで、中に入ったらいつもの洞穴ほらあなが様変わりしてんじゃねえか。驚いたぜ。前よりずっと広くなってるし、天井に灯りだろ?しかもでっかい変な魔道具なのまである。で気づいた訳だ、あ、これは実は遺跡だなってな。今まで隠蔽の魔法かなんかで洞穴ほらあなに見せかけてたんだろう。」

 すいません…、それ隠蔽の魔法じゃなくて、昨日ガチ改造後の洞穴ほらあなです…。出来たてほやほやのダンジョン(仮)です…。

「よく見ると奥に遺跡にしては不自然なドアがあったから一応確認で入った。そしたらアンタがここで倒れてた訳だ。閉じ込められてたようだけど、縛られたり打たれた傷とか無いし部屋は豪華だし…高位貴族の身代金目的か?」

 最後のほうは俺に聞くと言う訳ではなく自問自答のようだ。うーむ、と唸りながら腕を組んで首を傾げる現地人さん。
 普通遺跡に住んでる人がいるとはあんまり思わないよなあ。入り口塞がれてたし。
 まいったな、どう説明すればお引き取りいただけるのか…。
 俺もうーむとなりながら首を傾げた。

「ま、考えても仕方ねえ。アンタ、名前は?家名は何家だ?」

「え、はい、鈴木航です。家名って言うのは鈴木ですけど…。」

 あ、うっかり名乗ってしまった。

「スズキ家??聞いた事ねえな。名前もお貴族にしちゃ短くて変わってんな。もしかして国外の貴族か?」

 現地人さんが小さくめんどくせえ、元とれっかなとかブツブツ呟いている。

「とりあえずここ出るぞ。いつ誘拐犯が戻ってくるかわかんねえからな。一旦、近くの街に寄って手配書かけて、あとそっからは帝都だな。領事館まで行きゃなんとかなるだろ。」

 よっこいせ、と現地人さんが立ち上がり、ついでに俺も手を引かれ立ち上がってしまう。
 うお、この人デカいな!168センチの俺より頭ひとつ分以上はデカいから180センチは余裕で超えてる。体も筋肉で分厚いし、まさにザ前衛職って感じだ。何食ったらそんなデカくなるんだろ、羨ましいわ…。
 現地人さんは掴んだ手をそのままに歩き出そうとしたが、不意に現地人さんの視線が俺の足元に落ちた。そう俺はおウチ裸足族。
 フワッと一瞬の浮遊感の後、腹にドフっと衝撃。

「うぶっ!」

 気づけばまるで俵のように肩に担がれていた。

「悪りぃけどしばらくコレで我慢してくれや。片手開けるにはコレが一番なんだ。」

 ケツをポンと叩かれる。

 って、アカーーーンッッ!!
 俺、完全に連れ去られのピーーーンチッッ!!

「あ、あ、あの!!すいません!!俺、攫われてないです!!貴族じゃないし!!大丈夫!!大丈夫!!」

 慌てて現地人さんの背中をぱんぱんと抗議タップする!って言うかめっちゃ僧帽筋ムッキムキだな、現地人さん!俺のタップ、ノーダメで通じてないんじゃ?!

「いや、マジ、ほんと大丈夫なんで!ここ、俺のウチなんで!!」

 さっきより少し強めに叩き直した。
 やっと現地人さんが俺を肩から外してくれた。が、何故か縦抱きにされた。今度はパンパンな胸筋様に歓迎されている。
 …あれ?普通下に降ろすとこでは…?

「は?ウチ??」

「え、はい、ここは俺の家なんです…。すいません。…なんで、誘拐犯とか悪い人はいないし、住居だから危険はないですから…。」

 ま、家って言うか職場なんだけど!
 説明面倒だから住んでる事だけバラす。遺跡好きが高じて親元から離れて遺跡暮らしてるとか適当な理由にしよ。
 それにしても縦抱きにされたからめっちゃ顔が近い…。北欧系のイケオジ様とは系統が違う、濃い目のラテン系イケメンだ。目力強すぎる。すまんがその顔を...しまってくれんか。俺には強すぎる...。
 少し身をよじって距離を取ろとしたが、胸筋様と前腕筋群様に挟まれうまくいかない。ガタイ良すぎぃ!

「あの、…降ろしてもらってもいいですか…?」

 この筋肉の檻は俺には破れそうもないぜ…。ならば、いっそ素直に聞いてみた。
 押してダメなら聞いてみろ、ってな。コレは去年定年になった先輩の教え。やり口はシンプルだけど意外に効くんだな、コレ。
 今回は物理的な押しだけど…。

「お、おう。無理に抱えちまって悪かったな。」

 現地人さんは微妙に戸惑いながらも素直に降ろしてくれた。
 数分ぶりの床、やはり人は地に足をつけ暮らすのが一番だ。え?地に足の使い方が間違ってる?細けえ事は気にすんな!要は抱っこはもういいって事です、はい。

「ありがとうございます。こちらも勘違いさせてしまってすいませんでした。」

 よし、ここから穏便にお帰りいただくぞ~。
 さり気なくドアへ向かって歩く。現地人さんもキョロキョロしながらも後ろについてくる。いい感じ、いい感じ。
 戸口へ立ち、ドアノブに手を置いて必殺ちょっと困った笑顔(謝罪用)だ!この笑顔とふんわり的を射ない返事コンボで有耶無耶退場だ!

「本当にここが家なのか?脅されてるんじゃねよな?」

「はい、大丈夫です。」

にこぉ。

「家族もいるのか?」

「ああ、そうですね。」

にこぉ。

「アンタ以外人の気配がないようだが、いま出払ってるのか?」

「ええ、まあ。」

にこぉ。

「………一人でここにいるのか?」

「そうですね、はい。」

にこぉ。

「おいお前、いま適当に返事してるだろ?」

「ええ、大丈夫……で……ス…」

 …あ、やべ、返し間違えた。
 現地人さん真顔ですね。

ドンッ
 
 ドアノブを握っていたほうの腕を捻り上げられドアに顔から押し付けられた。勿論、顔よこには現地人さんのこぶしがドンしてる…。

「お前、何モンだ?その魅了眼みりょうがん、人族じゃねえだろ?妖精族か?人、たぶらかしに来たのか?なあ?」

 耳元で現地人さんが…

 って、アカーーーンッッ!!!!
 俺、エマージェンシーーーッッ!!!!
 穏便どころか生命の危機ーーーッッ!!!!

「ウワアアアア!!!!人族です!!!!間違いなく人族ですから!!!!さっきは適当に答えてごめんなさいいいい!!!!本当にすいませんんんん!!!!」

 全力謝罪一択!!
 ジタバタとしながらも出来るだけ視線を現地人さんに合わせて謝罪する。ほんと適当してすいません。許してください。
 ひねられた腕と自らよじった首が地味に痛くて涙目だ。
 しかし、現地人さんの手は緩まない。寧ろ、じわじわと体重が掛かってきて逆手ぎゃくてになってる腕が正直ヤバい感じになってきた。
 これはかなり怒ってらっしゃる?腕の一本、謝罪に持ってかれるヤツ?

「…うっ、ほんとごめんなさ…、グスッ…」

 もう半泣きに謝る。全泣きでもいい。うう、腕折られたくないよおお!!
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