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第1章
2話、婚約の保留
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「ハーフォード公爵様。この度は突然のご訪問失礼致します。」
そう言って私はいつもの様にカーテーシーをとった。
「シルフィ、そんなに畏まないでくれ、昔みたいにおじさんと呼んでおくれ。」
公爵邸の主人、ロード・ハーフォードは、突然訪れた私に嫌な顔一つ見せず、優しく微笑みを見せた後、客間に向かい入れてくれた。
「いえ、昔は身の程も弁えず、大変御無礼を払いました。今一度、謝罪をお受け入れ下さい。大変申し訳ありません。」
昔は失礼にもこの方にタメ口をきいていたのだと思うと己の図太さに恐れを抱く。
「そうか、戻す気はないか…。まぁ、いつか私に対する態度は変えてもらうつもりだからいいや。それより、そろそろ君がくる頃だと思ったよ。」
(私が来ることを予想していた?そんなバカな…。)
「と、言いますと?」
「この婚約に不満なんだよね?原因は家の愚息かな?」
(的中…この方はエスパーでもお持ちなのかしら…。)
「恐れながら申し上げますが、ご存知の通りネヴィル様は私のことが大変お嫌いです。もしご令息様のお幸せを願うなら、私のような小娘を娶るなど仰らないで下さい。それに、この婚約に何の意味があるのでしょうか?公爵様方の御利益になる様な価値など家の方にはあるとは思えませんが。」
そう早口にまくし立てると公爵様はゆっくりと口を開いた。
「利益ね…。入るとすれば息子の幸せと、君かな?」
謎である。その一言に尽く。
「御令息様の幸せと、私ですか??」
「ああ、と言うよりだ。ネヴィルが君を嫌い?」
「ご存知でないのですか??あんなに露骨なのは分かりやすいと思いますが…。」
首を傾げる私に公爵様は目を見開いた。
(あんなの誰が見てもどんな関係なのかなんて瞬時に分かりそうなものだけれど…。ここまで驚かれるなんて私なにか変なこと言ったかしら…。)
「いや、これは驚いた。息子は何をしているんだ。君には本当に何も言っていないのだな我が愚息は…。」
ますます謎が深まった。そこまで頭が悪いと思っていないけど、ここまで公爵様の言葉が理解できないとなると自分の頭が心配になってくる。
「先程から少し理解が追いつかないのですが…。いえ、それよりです。失礼ながら単刀直入に申し上げます。」
意を決して、公爵様を真っ直ぐ見つめ言い放った。
「この婚約はお取りやめ下さい。」
(言った。言ってしまった。)
恐る恐る公爵様をそっと見ると、考え込む様に顎に手を当てていた。
「少しだけ愚息に時間をくれないか?」
拍子抜けである。少しばかりきつい言葉を予想していたけれど、私に時間をくれなどと提案を持ちかけるとは思ってはいなかったのだ。
「時間ですか?」
「ああ、婚約は一度保留として今の息子をその目で見極めてほしい…。正直、我が息子はもう、手に負えない状態でな。重症と言ったところだ。」
「重症?病気をなされているのですか?」
まさか怪我でもしているのだろうか?消えてしまえと思ったことも…いや、今も思っているが、苦しんでほしいわけではない。お互いが関わりを持たず平和な日常を送りたい、取り戻したいだけなのだ。
「ははは、違うよ。まぁ、ある意味ワズラいもので長年の病気の様なものかな…。とにかく君を逃したら結婚は一生できないだろうねアイツは。」
(公爵様の様子からじゃ、彼の様子もそこまで酷いものでもなさそうね。)
と言うより、それが何故私との結婚につながるのかと疑問を持つ。
「取り敢えずだ。愚息に少しの猶予を。この通り。」
深々と公爵様が頭を下げた。
(こんな威厳のある優しいお方に頭を下げさせるなんて!私はなんて愚かなのかしら。)
「頭をお上げ下さい!分かりました!時間などいくらでも差し上げます!ですから!」
「本当かい?いやー、良かった良かった。これでネヴィルにもチャンスができたな。」
変わり身の早さよ…。なにか騙された気分になる。
「シルフィ、今回の婚約をもちかけたのは家内でね。」
「奥様がですか?」
「君は家内のお気に入りだから、他の家に君を取られてしまう前に繋ぎ止めておきたかったと言う図らいがあったんだ。だがその様子で婚約とはあまりに君が不憫だったね。」
(私は奥様に気に入られていたのですね…。 )
嬉しい気持ちもあるが、素直に婚約を受け入れられない事を申し訳なく思う気持ちもある。
「婚約を断りたいと思った時はすぐに私に言ってくれ。こっちから申し込んだんだ。気負う必要はないよ。そもそもこれだけお膳立てしてやったんだ。何もなかったらネヴィルは殴るだけでは足りない。」
お膳立て?その意味を問おうと口を開いたところ、公爵様は自分の口に人差し指を当てた。これは聞かないほうがいいのかしら。
「はい…。お気遣いありがとうございます。」
公爵邸の去り際、馬車に乗ろうとした時、呼び止められた。
「私はね、君が娘になってくれたら嬉しいと思ってるよ。まぁ、息子の手にかかっているわけだけど。」
公爵様がそう思ってくれていた事にくすぐったさを覚えた。
「では、失礼いたしました。」
見送りに出て来た公爵様に一礼して馬車に乗り込み、侯爵邸を訪れた時よりも幾分和やかな気持ちで行きと同じ帰路を辿った。
そう言って私はいつもの様にカーテーシーをとった。
「シルフィ、そんなに畏まないでくれ、昔みたいにおじさんと呼んでおくれ。」
公爵邸の主人、ロード・ハーフォードは、突然訪れた私に嫌な顔一つ見せず、優しく微笑みを見せた後、客間に向かい入れてくれた。
「いえ、昔は身の程も弁えず、大変御無礼を払いました。今一度、謝罪をお受け入れ下さい。大変申し訳ありません。」
昔は失礼にもこの方にタメ口をきいていたのだと思うと己の図太さに恐れを抱く。
「そうか、戻す気はないか…。まぁ、いつか私に対する態度は変えてもらうつもりだからいいや。それより、そろそろ君がくる頃だと思ったよ。」
(私が来ることを予想していた?そんなバカな…。)
「と、言いますと?」
「この婚約に不満なんだよね?原因は家の愚息かな?」
(的中…この方はエスパーでもお持ちなのかしら…。)
「恐れながら申し上げますが、ご存知の通りネヴィル様は私のことが大変お嫌いです。もしご令息様のお幸せを願うなら、私のような小娘を娶るなど仰らないで下さい。それに、この婚約に何の意味があるのでしょうか?公爵様方の御利益になる様な価値など家の方にはあるとは思えませんが。」
そう早口にまくし立てると公爵様はゆっくりと口を開いた。
「利益ね…。入るとすれば息子の幸せと、君かな?」
謎である。その一言に尽く。
「御令息様の幸せと、私ですか??」
「ああ、と言うよりだ。ネヴィルが君を嫌い?」
「ご存知でないのですか??あんなに露骨なのは分かりやすいと思いますが…。」
首を傾げる私に公爵様は目を見開いた。
(あんなの誰が見てもどんな関係なのかなんて瞬時に分かりそうなものだけれど…。ここまで驚かれるなんて私なにか変なこと言ったかしら…。)
「いや、これは驚いた。息子は何をしているんだ。君には本当に何も言っていないのだな我が愚息は…。」
ますます謎が深まった。そこまで頭が悪いと思っていないけど、ここまで公爵様の言葉が理解できないとなると自分の頭が心配になってくる。
「先程から少し理解が追いつかないのですが…。いえ、それよりです。失礼ながら単刀直入に申し上げます。」
意を決して、公爵様を真っ直ぐ見つめ言い放った。
「この婚約はお取りやめ下さい。」
(言った。言ってしまった。)
恐る恐る公爵様をそっと見ると、考え込む様に顎に手を当てていた。
「少しだけ愚息に時間をくれないか?」
拍子抜けである。少しばかりきつい言葉を予想していたけれど、私に時間をくれなどと提案を持ちかけるとは思ってはいなかったのだ。
「時間ですか?」
「ああ、婚約は一度保留として今の息子をその目で見極めてほしい…。正直、我が息子はもう、手に負えない状態でな。重症と言ったところだ。」
「重症?病気をなされているのですか?」
まさか怪我でもしているのだろうか?消えてしまえと思ったことも…いや、今も思っているが、苦しんでほしいわけではない。お互いが関わりを持たず平和な日常を送りたい、取り戻したいだけなのだ。
「ははは、違うよ。まぁ、ある意味ワズラいもので長年の病気の様なものかな…。とにかく君を逃したら結婚は一生できないだろうねアイツは。」
(公爵様の様子からじゃ、彼の様子もそこまで酷いものでもなさそうね。)
と言うより、それが何故私との結婚につながるのかと疑問を持つ。
「取り敢えずだ。愚息に少しの猶予を。この通り。」
深々と公爵様が頭を下げた。
(こんな威厳のある優しいお方に頭を下げさせるなんて!私はなんて愚かなのかしら。)
「頭をお上げ下さい!分かりました!時間などいくらでも差し上げます!ですから!」
「本当かい?いやー、良かった良かった。これでネヴィルにもチャンスができたな。」
変わり身の早さよ…。なにか騙された気分になる。
「シルフィ、今回の婚約をもちかけたのは家内でね。」
「奥様がですか?」
「君は家内のお気に入りだから、他の家に君を取られてしまう前に繋ぎ止めておきたかったと言う図らいがあったんだ。だがその様子で婚約とはあまりに君が不憫だったね。」
(私は奥様に気に入られていたのですね…。 )
嬉しい気持ちもあるが、素直に婚約を受け入れられない事を申し訳なく思う気持ちもある。
「婚約を断りたいと思った時はすぐに私に言ってくれ。こっちから申し込んだんだ。気負う必要はないよ。そもそもこれだけお膳立てしてやったんだ。何もなかったらネヴィルは殴るだけでは足りない。」
お膳立て?その意味を問おうと口を開いたところ、公爵様は自分の口に人差し指を当てた。これは聞かないほうがいいのかしら。
「はい…。お気遣いありがとうございます。」
公爵邸の去り際、馬車に乗ろうとした時、呼び止められた。
「私はね、君が娘になってくれたら嬉しいと思ってるよ。まぁ、息子の手にかかっているわけだけど。」
公爵様がそう思ってくれていた事にくすぐったさを覚えた。
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