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第1章
14話、執事のロバート(ネヴィル視点)
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僕は本日二度目となる侯爵邸にいる。今は七時を過ぎた辺りだろう。
ここに来るまでが大変だった。
どうにかして使用人や両親の目をかいくぐって、家を出る必要があったからだ。
もし、夜に彼女の家を訪ねると言えば止められるに決まっている。母に至っては、夜に淑女の家を訪れるとは何事だと、また鉄槌を食らいかねない。
うまく抜け出して来たはずだが、警戒は怠ってはいけない。
家を出た後は、途中で馬車を捕まえて侯爵邸の近くまで降ろしてもらった。
そして今に至る。
「坊ちゃん。夜に淑女の家を訪れるとは何事ですか?」
「うわっ!!」
背後の影に気づき、思いっきり振り返る。
そこには執事のロバートが呆れ顔で突っ立っていた。
「うわ、ではありません。何をなさるつもりなのかは大方予想はつきますけど、夜這いはいけませんよ、夜這いは。」
「夜這いであるものか!大体なんでお前がここにいるんだ。」
変装のために目深にかぶっていたフードを取る。
「それは勿論、ついて来たからに決まっているでしょう。全く、夜道に公爵子息一人とは剥ぎ取りにでも会いたいのですか?あと、その変装、不審者にしか見えませんから。」
(注意を怠ったつもりはないが…。)
「うまく抜け出したと思ったんだがな。お前には参るよ。」
昔から家を抜け出しては、この執事に連れ戻されていた記憶がある。
「まぁ、坊ちゃんの手口など把握済みですし。で、今日はまた、夜這いでなければ何しにここへ?」
いきなり核心に迫るロバートに言葉を詰まらずが、彼に事の次第を言わずして侯爵邸に入れるとは思えない。
「その、、彼女に会いたいのだ。顔さえ見れれば満足する…。」
こんな事を何故こいつに言わねばならんのかと恥ずかしさで最後の方は、力が抜けていくように小さな声になる。
「これはまた健気な。」
揶揄うのかと思い彼の顔を見れば、意外と真面目な表情で返され少し戸惑う。
「あまりにも坊ちゃんが可哀想なので、今回ばかりは旦那様や奥様にチクらないでおきます。」
ロバートは日頃、こう言う事には厳しい男だが、なにかと甘い男でもある。現に僕を見逃すと宣言した。
「しかし、わたしめが毎週コレッタから貰う情報だけでは満足いかないんですか?これは呆れた、男なら辛抱も大事ですよ。」
「言っとけ。大体、一度会ってしまって抑えが効くわけないだろ。じゃあ、ここで。僕は彼女に会って来る。」
「会って来るって…。坊ちゃん無鉄砲にもほどがありますよ。今日のこともありますし、フツーにはいどうぞで入れてもらえるわけでもないでしょう。大体、向こうの若に目の敵の様にされてるのでしょう。わたしめ、坊ちゃんを無事に旦那様達に返せる自信がありません。」
ロバートの言い分は最もだ。だが、僕が何の策なしにここに訪れるはずはない。対策という対策は済んでいるのだ。
「今日は侯爵邸に彼女の兄は居ない。それにバカ真面目に玄関から入るわけがないだろ。」
「何でそんな情報持ってるんですか?あっ!わたしめを通さないでコレッタと会ったんですね!そんな事してたらいつか必ず関係がばれちゃいますよ。ストーカーまがいのことしてましたなんてもっと嫌われるに決まってます!」
夕食を終えてから、彼女の家に行こうと決意を固めて、侯爵邸に侵入するための策を立てるためコレッタと両家の中間地点で落ち合ったのだ。
と言うかストーカーまがいとはなんだ、まがいとは。
「大丈夫だ。もうこれ以上無いくらいには嫌われている。後は好感度も上がるだけだ。」
「そこですか!?しかも何気ポジティブ!はあ、もう良いですよ。で、その玄関を使わずしての侵入とは?」
「僕とシルフィ、こんな事になるまでは割と仲よかっただろ?」
ロバートとは五歳としが離れており、僕が六歳ぐらいの時からの付き合いだ。彼女との関係や何があったかまで知り尽くしているだろう。
「ああ、坊ちゃんがあの方に嫉妬を向けた辺りから仲がこじれたんでしたっけ?あの時の坊ちゃんときたら、なんとかシルフィ嬢の気を引こうと意地悪ばかりしていたんですもんね。」
「その話は今いいだろ…。」
「はは、すみません。」
「で、まあ、僕も、父も母も含めて家族ぐるみで仲が良かったもんだから、シルフィの家によく僕は出入りしていたわけだ。出入りと言っても玄関から入った事なんて正式な場でしか無かったけどな。」
「と、言いますと?」
「シルフィには侯爵邸の隠し通路を教えてもらっていたんだよ。」
「ほお!」
「今回はそれを使わせて貰うつもりだ。」
すると今までペラペラと煩かったロバートがいきなり黙り込む。
「……坊ちゃん、もうそれは犯罪の粋ですね…。完っ全に不法侵入ですし、変に納得しかけましたけど、なんて言うか本当にバレたらまずいヤツですよ。」
普段不真面目でどこか掴めないロバートに、ど正論を返されるとは思ってもみなかった。
「かっ、構うものか!!今更止めたって遅いぞ、僕は行くからな。」
「坊ちゃん、上手くやってくださいよー!骨は拾いますから!」
(こいつ此処まで来て付いてこないと言うのか?)
「ここまで来たらお前も来い。乗り掛かった船だろ?最後まで付き合え。死なば諸共だ。」
「乗りたくて乗った船じゃ無いんですけど!?坊ちゃんの横暴!暴君!エゴイスト!」
僕は嫌だ嫌だと駄々をこねるロバートの首根っこを掴み、地面にずるずると引きずった。
「のわぁあ!分かりました、わかりましたから!服破れますって!自分め付いていきます、ですのでお放しください!」
僕は首根っこを掴んでいた手をパッと放した。
そんな僕にロバートは不服そうな顔を隠すことなく顔全面に出し服をなおし始める。
「全く、乱暴なんだから…。行けばいいんでしょ、行けば。きっと坊ちゃんの醜態が見れそうですし、それを報酬について行く事にしますよ。」
ようやく行く気を見せたロバートの気が変わらないうちに、行くぞと投げ掛け、フードをかぶり直すとスタスタとその隠し通路に向かった。
ここに来るまでが大変だった。
どうにかして使用人や両親の目をかいくぐって、家を出る必要があったからだ。
もし、夜に彼女の家を訪ねると言えば止められるに決まっている。母に至っては、夜に淑女の家を訪れるとは何事だと、また鉄槌を食らいかねない。
うまく抜け出して来たはずだが、警戒は怠ってはいけない。
家を出た後は、途中で馬車を捕まえて侯爵邸の近くまで降ろしてもらった。
そして今に至る。
「坊ちゃん。夜に淑女の家を訪れるとは何事ですか?」
「うわっ!!」
背後の影に気づき、思いっきり振り返る。
そこには執事のロバートが呆れ顔で突っ立っていた。
「うわ、ではありません。何をなさるつもりなのかは大方予想はつきますけど、夜這いはいけませんよ、夜這いは。」
「夜這いであるものか!大体なんでお前がここにいるんだ。」
変装のために目深にかぶっていたフードを取る。
「それは勿論、ついて来たからに決まっているでしょう。全く、夜道に公爵子息一人とは剥ぎ取りにでも会いたいのですか?あと、その変装、不審者にしか見えませんから。」
(注意を怠ったつもりはないが…。)
「うまく抜け出したと思ったんだがな。お前には参るよ。」
昔から家を抜け出しては、この執事に連れ戻されていた記憶がある。
「まぁ、坊ちゃんの手口など把握済みですし。で、今日はまた、夜這いでなければ何しにここへ?」
いきなり核心に迫るロバートに言葉を詰まらずが、彼に事の次第を言わずして侯爵邸に入れるとは思えない。
「その、、彼女に会いたいのだ。顔さえ見れれば満足する…。」
こんな事を何故こいつに言わねばならんのかと恥ずかしさで最後の方は、力が抜けていくように小さな声になる。
「これはまた健気な。」
揶揄うのかと思い彼の顔を見れば、意外と真面目な表情で返され少し戸惑う。
「あまりにも坊ちゃんが可哀想なので、今回ばかりは旦那様や奥様にチクらないでおきます。」
ロバートは日頃、こう言う事には厳しい男だが、なにかと甘い男でもある。現に僕を見逃すと宣言した。
「しかし、わたしめが毎週コレッタから貰う情報だけでは満足いかないんですか?これは呆れた、男なら辛抱も大事ですよ。」
「言っとけ。大体、一度会ってしまって抑えが効くわけないだろ。じゃあ、ここで。僕は彼女に会って来る。」
「会って来るって…。坊ちゃん無鉄砲にもほどがありますよ。今日のこともありますし、フツーにはいどうぞで入れてもらえるわけでもないでしょう。大体、向こうの若に目の敵の様にされてるのでしょう。わたしめ、坊ちゃんを無事に旦那様達に返せる自信がありません。」
ロバートの言い分は最もだ。だが、僕が何の策なしにここに訪れるはずはない。対策という対策は済んでいるのだ。
「今日は侯爵邸に彼女の兄は居ない。それにバカ真面目に玄関から入るわけがないだろ。」
「何でそんな情報持ってるんですか?あっ!わたしめを通さないでコレッタと会ったんですね!そんな事してたらいつか必ず関係がばれちゃいますよ。ストーカーまがいのことしてましたなんてもっと嫌われるに決まってます!」
夕食を終えてから、彼女の家に行こうと決意を固めて、侯爵邸に侵入するための策を立てるためコレッタと両家の中間地点で落ち合ったのだ。
と言うかストーカーまがいとはなんだ、まがいとは。
「大丈夫だ。もうこれ以上無いくらいには嫌われている。後は好感度も上がるだけだ。」
「そこですか!?しかも何気ポジティブ!はあ、もう良いですよ。で、その玄関を使わずしての侵入とは?」
「僕とシルフィ、こんな事になるまでは割と仲よかっただろ?」
ロバートとは五歳としが離れており、僕が六歳ぐらいの時からの付き合いだ。彼女との関係や何があったかまで知り尽くしているだろう。
「ああ、坊ちゃんがあの方に嫉妬を向けた辺りから仲がこじれたんでしたっけ?あの時の坊ちゃんときたら、なんとかシルフィ嬢の気を引こうと意地悪ばかりしていたんですもんね。」
「その話は今いいだろ…。」
「はは、すみません。」
「で、まあ、僕も、父も母も含めて家族ぐるみで仲が良かったもんだから、シルフィの家によく僕は出入りしていたわけだ。出入りと言っても玄関から入った事なんて正式な場でしか無かったけどな。」
「と、言いますと?」
「シルフィには侯爵邸の隠し通路を教えてもらっていたんだよ。」
「ほお!」
「今回はそれを使わせて貰うつもりだ。」
すると今までペラペラと煩かったロバートがいきなり黙り込む。
「……坊ちゃん、もうそれは犯罪の粋ですね…。完っ全に不法侵入ですし、変に納得しかけましたけど、なんて言うか本当にバレたらまずいヤツですよ。」
普段不真面目でどこか掴めないロバートに、ど正論を返されるとは思ってもみなかった。
「かっ、構うものか!!今更止めたって遅いぞ、僕は行くからな。」
「坊ちゃん、上手くやってくださいよー!骨は拾いますから!」
(こいつ此処まで来て付いてこないと言うのか?)
「ここまで来たらお前も来い。乗り掛かった船だろ?最後まで付き合え。死なば諸共だ。」
「乗りたくて乗った船じゃ無いんですけど!?坊ちゃんの横暴!暴君!エゴイスト!」
僕は嫌だ嫌だと駄々をこねるロバートの首根っこを掴み、地面にずるずると引きずった。
「のわぁあ!分かりました、わかりましたから!服破れますって!自分め付いていきます、ですのでお放しください!」
僕は首根っこを掴んでいた手をパッと放した。
そんな僕にロバートは不服そうな顔を隠すことなく顔全面に出し服をなおし始める。
「全く、乱暴なんだから…。行けばいいんでしょ、行けば。きっと坊ちゃんの醜態が見れそうですし、それを報酬について行く事にしますよ。」
ようやく行く気を見せたロバートの気が変わらないうちに、行くぞと投げ掛け、フードをかぶり直すとスタスタとその隠し通路に向かった。
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