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第二十三話 出発

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「!」
「……」

 集落の場所を教えてもらって、今回はギルドに馬車も手配してもらった。
 早速準備をするために外へ向かおうとすると、ギルド内で赤髪の剣士を見掛けた。

「……?」
『ぷーい』
「ふん」

 ルリはいつものようにそっぽを向いたが、それはあちらも同様で俺らを視界に入れると、ふいっと踵を返した。

 もっと突っ掛かってくるかと思ったが……さすがにゼヤがいる手前、それはないか。

「一応ポーションの予備だけ買っておくか」
『でし~~』

 ゴブリンについてはゼヤと話してまぁなんとかなるだろうと予想。
 念のため先に向かったというBランクの男が怪我をしていた時のことを考えた。

「銀髪の剣士……かぁ」

 なんか、どっかで聞き覚えがあるんだが……どこだったかなぁ。

『ぷぅ~?』
「まぁ会えばわかるよな」

 ソロでよほどの自信があるみたいだし、大丈夫とは思うが……。
 とにかく、急いで向かうしかないな。


 ◆


「お、お客さん。本当にその装備で向かわれるので?」
「え?」
『ぴゃっ!?』
「……」

 ギルドの手配した馬車の元へ到着すると、開口一番御者の者に言われる。
 その装備……。言われてみると、俺はいわゆる防具や魔道具のようなものは身に付けておらず、ローブや上から羽織る外套も特別な素材を使った装備ではない。

 元のパーティではソロで受けても稼ぎは全部アレクスに渡して、1割もらえればいい方だったからなぁ。
 そういえばあいつらの装備は日を追うごとに充実していたっけか。

 ゼヤもゼヤで、冒険者ってよりはスパイみたいな感じだからな……。

「問題ない」
「まぁゼヤはそうだろうけど」
『ルリもおようふく着るでし?』
「いや、ルリも大丈夫」
「まぁ、お客さんが良いなら……。あ、申し遅れました、センバと申します」

 ちょび髭が似合うセンバは、よくこういった依頼で要請を受ける商業ギルドの者だそうだ。

「俺はモルドラン、モルドと呼んでくれ。
 こっちはルリに、ゼヤ。ルリは水うさぎなんだが、風うさぎの特徴も持つ俺の従魔だ」
『でしー!』
「……」
「(ゼヤ、あいさつ)」

 肘で小突くと、ゼヤは仕方ないとでも言いたげに、

「ゼヤだ」

 たった一言だけ発した。

「はい、よろしくお願いします。
 通常は二時間の行程ですが、……飛ばします。そのため揺れますからご注意ください」
「あぁ、分かった」

 馬車を見れば、屋根はついているものの低く、全体を布で覆っている訳ではなく簡素な造りだった。
 風の抵抗を減らしているのだろうか。

「出発しますぞ!」

 荷台に乗り込み俺たちは早速出発した。

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