うさぎガチ勢の引きこもり魔導師は、今日もうさぎさんのために伝説を残す~なに?寝床が寒い?ならばコカトリスの羽毛で巣作りだ!~

蒼乃ロゼ

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三十九羽 世界樹

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「んじゃ、ま……」

 もう好きにしてくれ、と言いたげなメルティーヌ。
 泉の中に入ったまま呪文を唱えると、周囲の景色を映し出していたはずの水面がまったく別のものに変わっていた。

「!」

 世界樹らしきものがカルナシオンから見て逆さに映る。
 まるで泉を挟んで目の前にあるかのように、水面に映し出された。

「じゃ、行ってら」

 メルティーヌは泉に手を付けて眼を閉じ、世界樹へ心を開くようカルナシオンに伝える。
 カルナシオンはうさぎさんを自宅に送還して、言われた通りにした。







「────ここは……」

 瞼を開けば、そこは先ほどまでとはまったく異なる空間。
 自称三女神が精霊の力を借りて守る、結界の中である。

「……これはまた、巨大な」

 目の前にそびえるあまりに大きな樹を見上げる。
 それは根の大きさでも分かるように、とても人間では測りきれないほどの高さ。
 見上げても、見上げても先は見えない。

 ぐるりと周囲を見回せば、世界樹の周りに限っては草原や木々が生い茂るものの。
 遠方を見れば、突然空間が断絶されたかのように何もない。
 ぐにゃりと歪んだような、泡のようなものが浮かんでおり、それは結界により生じたものだろうとカルナシオンは推測した。

「──懐かしいですかねぇ?」
「ギル」

 カルナシオンの影より、ギルクライスが現れる。
 結界の中にいても主の影を見失わないのは、自称三女神でも予測できないことだ。

「……さてな」

 ギルクライスが問うのも無理はない。
 なにせ、カルナシオンはここで生まれた。
 いや。生まれた瞬間は誰にも見られることもなく、赤ん坊の姿でここにいた。

 人間の世界で生きていくには都合がわるい出自。
 養父であるエルゲーズは、冒険者により森へ捨てられていた……という設定で生きていくよう、カルナシオンを人間の街へと送り出していた。

「そうですかそうですか。それは残念」
「?」
「それで、枝。もらえますかねぇ?」
「ふむ。世界樹の元へ行くことは許可されたものの、あとは私次第というわけだな」

 世界樹。
 それは、生命を司る神が地上にもたらしたもの。
 はじめ神々と精霊以外、つまり肉体を持つ命のなかった地上に、最初にもたらされた命。

 世界はここを中心として草木や水、動物などが次々に誕生し、次第に人という高い知能を持つ種族をも生み出した。

 魔力の源である魔素。それを世界中に張り巡らしている『地脈』の大元であり、魔力の根源ともいえる。

 ともかく、生命は世界樹のもとに成り立っていると言えるだろう。

「世界樹の精よ、どうかその枝を分けてはくれまいか?」

 カルナシオンは特に悪びれるでもなく頼んだ。

『…………』
「返事がありませんねぇ」

 世界樹の精霊、神より遣わされし者は返事に困っていた。
 世界樹は地脈の大元。誰かの魔力にもなり、誰かの魔力が還る場所。

 魔力と魂は密接に関係している。
 つまり、ここには魂すらも還り、再びそれに命をもたらすことに他ならない。

 そんな世界の根底である世界樹の枝を寄越せと言うのだ。
 精霊でなくても関わりたくはないだろう。

「「……あ」」

 精霊は考えた結果、早めにお帰りいただくことを選んだ。
 世界樹の枝葉は絶えず伸び続ける。
 カルナシオンの感じたとおり、先が見えないものなのだ。

 精霊は観念したように、すでに役目を終えた古き枝をほんの少しだけ切り落とすと、ふわふわと浮かばせカルナシオンの手元に届けた。

「もらっていい……のか?」
「いいんじゃないですかねぇ。お礼くらい言ったらどうです?」
「ああ。礼を言う、世界樹の精よ」
『……』

 世界樹の精霊は心底思っていた。

 ──とにかく早く帰ってくれ

 わざわざ結界の補強にアイドラを呼び寄せるほどヤバい魔力の器を持つ者。
 彼の帰還に、ただただ怯えるばかりだった。


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