28 / 104
新しいゲーム
しおりを挟む
「飽きた」
言いながら、花咲きさんはスケッチブックを抱えて埃っぽい床に寝転がる。
「ちょっと花咲きさん、飽きたってどういう意味ですか!? 朝からずっと同じポーズをとってるこっちの身にもなってくださいよ!」
思わず私は抗議の声を上げる。
このところずっとこの調子だ。せっかく徐々にモデル業にも慣れつつあるのに、肝心の描き手である花咲きさんが、すぐに「飽きた」と言って手を止めてしまうのだ。
そして私にちらりと視線を向ける。
「そろそろ我輩はまな板以外の女が描きたいのだ。筋骨隆々な男も描きたいのだ」
「またその話ですか!? 仕方ないじゃありませんか! 描きたいなら自費で好みのモデルを雇ってください!」
「む……」
それを聞いた途端に花咲きさんは現実から逃避するようにごろりと背中を向ける。自分でもそれが難しいことがわかっているのだ。
かといって手頃に描ける私のまな板ボディには飽きたらしい。面倒だな。そんなに凹凸が欲しいなら、この際ひょうたんでも描いてればいいのに。
「黒猫娘。我輩のやる気が復活するまで何か気を紛らわすようなことをしてくれ」
おまけにそんな図々しい要求まで。
この分だと、今日はもうデッサンする気はないみたいだ。
このまま薄着でいる意味もなさそうだし、と、上着を羽織りながら、仕方なく提案してみる。
「それじゃあ、気分転換にゲームでもしますか? トランプとか」
花咲きさんがこちらに顔を向けた。
「トランプ? なんだそれは」
「あれ? 知りませんか? トランプ」
あんなメジャー級カードゲームを知らないとは。もしかしてこの世界には存在しないのかな?
「私の国にあったカードゲームなんですけど……でも、この国に無いなら仕方ありませんね。別の暇つぶしでも――」
花咲きさんはがばりと身を起こす。
「いや、気になる。気になるぞ。そのトランプとやら。どんなものか是非とも教えろ」
「とは言われても…… 口頭で説明するのも難しいですねえ……」
しかし花咲きさんは興味津々と言った様子だ。こうなるとしつこいんだよなあ……となれば少々面倒くさいが……。
「……ここは実際に作るしかありませんね」
「そんなにたやすく作れるものなのか?」
「簡易的なものならなんとか……まずは手のひらに乗るくらいの同じ大きさの長方形の紙が53枚必要なんですが……」
すると花咲きさんは早速画材置き場から画用紙を引っ張り出してきた。
かと思うと定規で線を引き、ハサミでベースになる紙を次々と量産してゆく。
そして53枚のカード型の白紙ができた。
私はその中から9枚のカードを花咲きさんに渡す。
色鉛筆を借りると、カードの隅に対角になるよう数字の2を書いてみせる。
「今、私は数字の2を書きました。これを参考に残り8枚の紙の隅にも3から10までの数字を書いてください。それが終わったらもう9枚にも同じようにお願いします」
花咲きさんが数字を書いている間に、私は何も描かれていない紙に赤鉛筆でダイヤとハートを描いてゆく。
簡易的なものだからそんなに凝らなくてもいいよね。
適当に1枚につき記号1個。ついでにエースとジャック、クイーン、キングの肖像とアルファベットを隅に書き加える。人物画はなんだか雪だるまみたいになってしまったが。
それが済んだら花咲きさんと交換だ。先ほど私が記号を入れたカードに、今度は赤鉛筆で数字を書き足してもらう。代わりに私は黒い鉛筆でクラブとスペードを書き足してゆく。
最後に残った紙にジョーカーを描けば完成だ。と、そこで手が止まった。
ジョーカーってどんなんだっけ? なんだかピエロっぽかったような気もするけど……。
まあいいか。適当に描いちゃえ。
そうして、少々雑ながらもトランプは完成した。
「それで、これはどのように使うのだ?」
「いろいろ遊び方はありますけど……そうですね、まずはババ抜きでもやってみましょうか」
トランプを使う遊びといえば定番中の定番。それがババ抜きだ。
とはいえ、ババ抜きって二人でやってもあんまり盛り上がらないような……。
いや、でも、トランプの基礎を知ってもらうには丁度いいかもしれないし。
私はトランプの使い方とババ抜きのルールを説明する。
すると花咲きさんは首を傾げた。
「ルールはわかったが、なぜジョーカーの事をババと言うのだ? 『ジョーカー抜き』のほうが自然ではないか」
「それは……」
言われてみればなんでだろう。そもそもババってなに……?
「すみません。私も由来は知らないんですよ。昔からババ抜きと呼ばれてて……」
「ふうん。おかしな話だ」
ともあれ、ババ抜きの語源は置いておいて、早速実践だ。
とはいえ、二人ババ抜きなんて単調すぎる。あっという間に私の手札はがラスト1枚、花咲きさんはジョーカー含めて2枚だ。
トランプ初心者にこのまま負けるのはそれはそれで悔しい。ここは経験者としての格の違いを見せつけてやるのだ。
気合を入れて思い切ってカードを一枚引く。が、残念なことにジョーカーだった。
でもまだチャンスはある。ここで花咲きさんがジョーカーを引いてくれれば延長戦突入だ。
ジョーカー引けー。ジョーカー引けー。
心の中でそんな呪詛の言葉を唱えながら、花咲きさんに2枚のカードを向ける。
そして花咲きさんが引いたのは――
「どうやら我輩の勝ちのようだな」
得意げにペアになった手札を見せつけてくる。
ぐぬぬ。悔しい……! 私のトランプテクは初心者以下だというのか……。
と、そこで手の中のジョーカーのカードの隅が若干折れ曲がっていることに気づいた。
あれ? なにこれ? まさかこれって……。
「花咲きさん。もしかしてジョーカーのカードに細工したり……しました?」
「おや、気づかれてしまったか。実は角を少々折り曲げておいたのだ」
「それってイカサマじゃないですか! ずるい! ずるーい! 今のは無効試合ですよ! ノーカンですよ!」
トランプ初挑戦ながらそんな手を使ってくるとは……なかなか小賢しい。
「もう! ババ抜きはこれで終わりです! 次は違うゲームにしましょう!」
そうして神経衰弱やら七並べ、ポーカーにブラックジャックなどで一通り遊ぶ。
なんだか子供の頃を思い出す。お正月とかに、集まった親戚の子たちとこうやって遊んだっけ。時にはチップの代わりにお菓子なんかを賭けたりして。
「そうだ花咲きさん、今度は何か賭けて勝負しませんか? 例えば、負けた方がお昼ご飯を奢るとか」
「……我輩はカツサンドが食べたいのだが」
「またですか?」
花咲きさんのカツサンド熱はいまだ収まっていないらしい。
「今日だって、お前のカツサンドが食べられるものだと楽しみにしていたのに……それなのに外食しようとでも言うのか……」
言いながらチラッとこちらへ視線を向ける。
むむむ。そんな捨てられた仔犬のような瞳をされると良心が痛む。しかもそんなにカツサンドを楽しみにしていたと言われたらなおさら。
「……わかりました。それじゃあ負けたほうが2人分のカツサンドの材料を自費で買ってくるというのではどうでしょう?」
「うーむ。それならまあ……」
よし、決まりだ。絶対に負けられない戦いがここにある。
そして選んだゲームはポーカー1回勝負。短時間で決着がつくからだ。
早速5枚のカードが各々に配られ、一度だけ不要なカードを交換する。
「花咲きさん、準備はいいですか?」
「ああ、負ける気がしない」
え、やだ何それ怖い。そんなに良い手なのかな……。
多少の不安を抱えながらも「せーの」という掛け声とともに手札をオープンする。
結果は、花咲きさんがクイーンのワンペア。
そして私はキングのワンペアだった。
「やったあ! 私の勝ちですね!」
少々危なかったが、それでも勝ちは勝ちだ。
花咲きさんは無念そうに眉間に皺を寄せている。
「仕方ないな。材料を買ってくれば良いのだろう?」
「はい。パンと豚肉お願いしますね」
「昼食が終わったら、もうひと勝負だ」
「え?」
「負けたままというのも悔しいからな。それに、そのトランプとやらを使ったゲームはなかなか面白いではないか。良い気分転換になりそうだ」
どうやら花咲きさんはトランプにも興味を示し始めたらしい。
カツサンドみたいにどハマりしないといいけど……
言いながら、花咲きさんはスケッチブックを抱えて埃っぽい床に寝転がる。
「ちょっと花咲きさん、飽きたってどういう意味ですか!? 朝からずっと同じポーズをとってるこっちの身にもなってくださいよ!」
思わず私は抗議の声を上げる。
このところずっとこの調子だ。せっかく徐々にモデル業にも慣れつつあるのに、肝心の描き手である花咲きさんが、すぐに「飽きた」と言って手を止めてしまうのだ。
そして私にちらりと視線を向ける。
「そろそろ我輩はまな板以外の女が描きたいのだ。筋骨隆々な男も描きたいのだ」
「またその話ですか!? 仕方ないじゃありませんか! 描きたいなら自費で好みのモデルを雇ってください!」
「む……」
それを聞いた途端に花咲きさんは現実から逃避するようにごろりと背中を向ける。自分でもそれが難しいことがわかっているのだ。
かといって手頃に描ける私のまな板ボディには飽きたらしい。面倒だな。そんなに凹凸が欲しいなら、この際ひょうたんでも描いてればいいのに。
「黒猫娘。我輩のやる気が復活するまで何か気を紛らわすようなことをしてくれ」
おまけにそんな図々しい要求まで。
この分だと、今日はもうデッサンする気はないみたいだ。
このまま薄着でいる意味もなさそうだし、と、上着を羽織りながら、仕方なく提案してみる。
「それじゃあ、気分転換にゲームでもしますか? トランプとか」
花咲きさんがこちらに顔を向けた。
「トランプ? なんだそれは」
「あれ? 知りませんか? トランプ」
あんなメジャー級カードゲームを知らないとは。もしかしてこの世界には存在しないのかな?
「私の国にあったカードゲームなんですけど……でも、この国に無いなら仕方ありませんね。別の暇つぶしでも――」
花咲きさんはがばりと身を起こす。
「いや、気になる。気になるぞ。そのトランプとやら。どんなものか是非とも教えろ」
「とは言われても…… 口頭で説明するのも難しいですねえ……」
しかし花咲きさんは興味津々と言った様子だ。こうなるとしつこいんだよなあ……となれば少々面倒くさいが……。
「……ここは実際に作るしかありませんね」
「そんなにたやすく作れるものなのか?」
「簡易的なものならなんとか……まずは手のひらに乗るくらいの同じ大きさの長方形の紙が53枚必要なんですが……」
すると花咲きさんは早速画材置き場から画用紙を引っ張り出してきた。
かと思うと定規で線を引き、ハサミでベースになる紙を次々と量産してゆく。
そして53枚のカード型の白紙ができた。
私はその中から9枚のカードを花咲きさんに渡す。
色鉛筆を借りると、カードの隅に対角になるよう数字の2を書いてみせる。
「今、私は数字の2を書きました。これを参考に残り8枚の紙の隅にも3から10までの数字を書いてください。それが終わったらもう9枚にも同じようにお願いします」
花咲きさんが数字を書いている間に、私は何も描かれていない紙に赤鉛筆でダイヤとハートを描いてゆく。
簡易的なものだからそんなに凝らなくてもいいよね。
適当に1枚につき記号1個。ついでにエースとジャック、クイーン、キングの肖像とアルファベットを隅に書き加える。人物画はなんだか雪だるまみたいになってしまったが。
それが済んだら花咲きさんと交換だ。先ほど私が記号を入れたカードに、今度は赤鉛筆で数字を書き足してもらう。代わりに私は黒い鉛筆でクラブとスペードを書き足してゆく。
最後に残った紙にジョーカーを描けば完成だ。と、そこで手が止まった。
ジョーカーってどんなんだっけ? なんだかピエロっぽかったような気もするけど……。
まあいいか。適当に描いちゃえ。
そうして、少々雑ながらもトランプは完成した。
「それで、これはどのように使うのだ?」
「いろいろ遊び方はありますけど……そうですね、まずはババ抜きでもやってみましょうか」
トランプを使う遊びといえば定番中の定番。それがババ抜きだ。
とはいえ、ババ抜きって二人でやってもあんまり盛り上がらないような……。
いや、でも、トランプの基礎を知ってもらうには丁度いいかもしれないし。
私はトランプの使い方とババ抜きのルールを説明する。
すると花咲きさんは首を傾げた。
「ルールはわかったが、なぜジョーカーの事をババと言うのだ? 『ジョーカー抜き』のほうが自然ではないか」
「それは……」
言われてみればなんでだろう。そもそもババってなに……?
「すみません。私も由来は知らないんですよ。昔からババ抜きと呼ばれてて……」
「ふうん。おかしな話だ」
ともあれ、ババ抜きの語源は置いておいて、早速実践だ。
とはいえ、二人ババ抜きなんて単調すぎる。あっという間に私の手札はがラスト1枚、花咲きさんはジョーカー含めて2枚だ。
トランプ初心者にこのまま負けるのはそれはそれで悔しい。ここは経験者としての格の違いを見せつけてやるのだ。
気合を入れて思い切ってカードを一枚引く。が、残念なことにジョーカーだった。
でもまだチャンスはある。ここで花咲きさんがジョーカーを引いてくれれば延長戦突入だ。
ジョーカー引けー。ジョーカー引けー。
心の中でそんな呪詛の言葉を唱えながら、花咲きさんに2枚のカードを向ける。
そして花咲きさんが引いたのは――
「どうやら我輩の勝ちのようだな」
得意げにペアになった手札を見せつけてくる。
ぐぬぬ。悔しい……! 私のトランプテクは初心者以下だというのか……。
と、そこで手の中のジョーカーのカードの隅が若干折れ曲がっていることに気づいた。
あれ? なにこれ? まさかこれって……。
「花咲きさん。もしかしてジョーカーのカードに細工したり……しました?」
「おや、気づかれてしまったか。実は角を少々折り曲げておいたのだ」
「それってイカサマじゃないですか! ずるい! ずるーい! 今のは無効試合ですよ! ノーカンですよ!」
トランプ初挑戦ながらそんな手を使ってくるとは……なかなか小賢しい。
「もう! ババ抜きはこれで終わりです! 次は違うゲームにしましょう!」
そうして神経衰弱やら七並べ、ポーカーにブラックジャックなどで一通り遊ぶ。
なんだか子供の頃を思い出す。お正月とかに、集まった親戚の子たちとこうやって遊んだっけ。時にはチップの代わりにお菓子なんかを賭けたりして。
「そうだ花咲きさん、今度は何か賭けて勝負しませんか? 例えば、負けた方がお昼ご飯を奢るとか」
「……我輩はカツサンドが食べたいのだが」
「またですか?」
花咲きさんのカツサンド熱はいまだ収まっていないらしい。
「今日だって、お前のカツサンドが食べられるものだと楽しみにしていたのに……それなのに外食しようとでも言うのか……」
言いながらチラッとこちらへ視線を向ける。
むむむ。そんな捨てられた仔犬のような瞳をされると良心が痛む。しかもそんなにカツサンドを楽しみにしていたと言われたらなおさら。
「……わかりました。それじゃあ負けたほうが2人分のカツサンドの材料を自費で買ってくるというのではどうでしょう?」
「うーむ。それならまあ……」
よし、決まりだ。絶対に負けられない戦いがここにある。
そして選んだゲームはポーカー1回勝負。短時間で決着がつくからだ。
早速5枚のカードが各々に配られ、一度だけ不要なカードを交換する。
「花咲きさん、準備はいいですか?」
「ああ、負ける気がしない」
え、やだ何それ怖い。そんなに良い手なのかな……。
多少の不安を抱えながらも「せーの」という掛け声とともに手札をオープンする。
結果は、花咲きさんがクイーンのワンペア。
そして私はキングのワンペアだった。
「やったあ! 私の勝ちですね!」
少々危なかったが、それでも勝ちは勝ちだ。
花咲きさんは無念そうに眉間に皺を寄せている。
「仕方ないな。材料を買ってくれば良いのだろう?」
「はい。パンと豚肉お願いしますね」
「昼食が終わったら、もうひと勝負だ」
「え?」
「負けたままというのも悔しいからな。それに、そのトランプとやらを使ったゲームはなかなか面白いではないか。良い気分転換になりそうだ」
どうやら花咲きさんはトランプにも興味を示し始めたらしい。
カツサンドみたいにどハマりしないといいけど……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さくら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
湊一桜
恋愛
王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。
森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。
オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。
行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。
そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。
※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる