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元執事の使い方
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「これより第一回銀のうさぎ亭二号店発展会議を行う」
偉そうな口調のレオンさんが、テーブルについた私達を見回す。といっても、従業員は私とクロードさんだけなのだが。
「この店は立地も悪くないし、なかなか繁盛してる。いや、正しく言えば当初はしてた。ところがどうだ。今や来る客来る客女ばっかり。ちょっと偏りすぎだと思わねえか?」
どうやら客層の偏りが気にくわないらしい。
本店でも似たような問題はあったが、それに比べれば断然客数も多いし、そんなに深刻な問題でもないと思うのだが。それに、そんな事になっている理由は明白だ。
「でも、それは仕方ないことかと……男前すぎる料理人に加えて男前すぎるウェイターまでいたら、女性が押し寄せてくるのは想定の範囲内でしょ?」
イケメンがふたり存在する食堂となれば女性が黙っていないのは必然。つまり、この状況はなるべくしてなったのだ。
「またそれかよ……」
レオンさんは頭を抱えている。容姿で贔屓されるのが不本意みたいだ。私にしてみれば贅沢な悩みだと言えるのだが。
「待ってくださいユキさん」
そこでクロードさんが声をあげた。
「まさか『男前すぎるウェイター』とは私の事なのでしょうか?」
この人は自覚がないのか。
「知的で眼鏡で物腰柔らか、丁寧で姿勢も良いしかっこいい。どこからどう見ても男前すぎるウェイターじゃないですか」
その言葉にクロードさんは何事か考えていたようだったが
「それは光栄ですね。そんなところでお役に立てているのならウェイター冥利に尽きますよ」
その笑顔はちょっと喜んでいるみたいだ。
レオンさんと違って意外と素直。
「それを踏まえて、女性客をもっと増やすと言うのはどうでしょう」
レオンさんがこちらに目を向ける。
「あ? これ以上何しろってんだ?」
「私が男装して『可愛らしすぎるウェイター』としてお手伝いします。きっと増客間違いなしです!」
「はあ? 無理無理。お前どう見ても女じゃん。違和感だらけで逆に客が離れてくに決まってるだろ」
な……何気にひどい。
しかしこのままではレオンさんは満足しそうにない。お客様を増やす案、なにかないかな。私だったらどんな食堂だったら行きたくなるだろう。
レオンさんとクロードさんを見比べているうちに、まるで天啓のようにひらめいた。
「はいっ! はいっ!」
「なんだネコ子」
「ここはクロードさんの元執事という経歴を活かすというのはどうでしょう?」
「ユキさん、それはどういう意味でしょうか?」
「ずばり、週に一度『執事デー』を設けるんです!」
「執事デー?」
怪訝な顔をする二人を見回しながら私は説明する。
「女性客に対して、クロードさんが執事のように振る舞う日です。このお店が貴族のお屋敷だと仮定して、燕尾服を着たクロードさんが『おかえりなさいませ。お嬢様』だとか言いながらお客様をおもてなしするんです」
元の世界にいた頃も、執事喫茶やメイド喫茶などで溢れていた。もしかしたらこの世界でも流行るのでは? と考えたのだ。
それに私だったらクロードさんみたいな人がお出迎えしてくれるお店なんて、きっと通いまくるだろうな。
「なんだよその突拍子のない案は……いや、でも、案外いけるかもしれねえな」
どことなく人の悪そうな笑みを漏らすレオンさん。この人は、自分に火の粉が降りかからなければ構わないようだ。
「いえ、でも、そんな事……」
クロードさんが困惑しているうちに畳み掛ける。
「それでは決をとりましょう。執事デー賛成の人ー。はーい」
私とレオンさんが手を挙げた。
「それでは、執事デー決定でーす。クロードさん、今まで培ってきた執事スキルを存分に発揮しちゃってくださいね!」
クロードさんは少しの間呆気にとられていたようだったが、やがで正気に戻ったように咳払いする。
「それなら私からもひとつ提案が」
言いながら私達を見回す。
「執事デーがあるのなら『メイドデー』があっても不自然ではないと思うのですが。例えばユキさんがメイドの格好をしてお客様をおもてなしするだとか。それなら男性客の増加が見込めると思うのですが」
「は?」
何を言いだすんだこの人は。
「お、そりゃいいな。語尾は『にゃん』でな。『おかえりなさいませにゃん。ご主人様』って言えよ」
レオンさんまで同調している!
「そ、そんなの無理ですよ! 第一、私はメイドの教育を受けたことなんてないんですから!」
「それなら私がお教え致しましょう。なに、そんなに難しくありませんから」
クロードさんがどこか邪悪な笑みを浮かべている。
「いやいやいや、無理ですよ。無理無理」
語尾が「にゃん」とかどんな罰ゲーム!?
拒否する私に、クロードさんは楽しそうに手をこすり合せる。
「それでは決をとりましょうか。ユキさんによるメイドデー賛成の方。ちなみに語尾は『にゃん』で」
私以外の二人が手を挙げた。
偉そうな口調のレオンさんが、テーブルについた私達を見回す。といっても、従業員は私とクロードさんだけなのだが。
「この店は立地も悪くないし、なかなか繁盛してる。いや、正しく言えば当初はしてた。ところがどうだ。今や来る客来る客女ばっかり。ちょっと偏りすぎだと思わねえか?」
どうやら客層の偏りが気にくわないらしい。
本店でも似たような問題はあったが、それに比べれば断然客数も多いし、そんなに深刻な問題でもないと思うのだが。それに、そんな事になっている理由は明白だ。
「でも、それは仕方ないことかと……男前すぎる料理人に加えて男前すぎるウェイターまでいたら、女性が押し寄せてくるのは想定の範囲内でしょ?」
イケメンがふたり存在する食堂となれば女性が黙っていないのは必然。つまり、この状況はなるべくしてなったのだ。
「またそれかよ……」
レオンさんは頭を抱えている。容姿で贔屓されるのが不本意みたいだ。私にしてみれば贅沢な悩みだと言えるのだが。
「待ってくださいユキさん」
そこでクロードさんが声をあげた。
「まさか『男前すぎるウェイター』とは私の事なのでしょうか?」
この人は自覚がないのか。
「知的で眼鏡で物腰柔らか、丁寧で姿勢も良いしかっこいい。どこからどう見ても男前すぎるウェイターじゃないですか」
その言葉にクロードさんは何事か考えていたようだったが
「それは光栄ですね。そんなところでお役に立てているのならウェイター冥利に尽きますよ」
その笑顔はちょっと喜んでいるみたいだ。
レオンさんと違って意外と素直。
「それを踏まえて、女性客をもっと増やすと言うのはどうでしょう」
レオンさんがこちらに目を向ける。
「あ? これ以上何しろってんだ?」
「私が男装して『可愛らしすぎるウェイター』としてお手伝いします。きっと増客間違いなしです!」
「はあ? 無理無理。お前どう見ても女じゃん。違和感だらけで逆に客が離れてくに決まってるだろ」
な……何気にひどい。
しかしこのままではレオンさんは満足しそうにない。お客様を増やす案、なにかないかな。私だったらどんな食堂だったら行きたくなるだろう。
レオンさんとクロードさんを見比べているうちに、まるで天啓のようにひらめいた。
「はいっ! はいっ!」
「なんだネコ子」
「ここはクロードさんの元執事という経歴を活かすというのはどうでしょう?」
「ユキさん、それはどういう意味でしょうか?」
「ずばり、週に一度『執事デー』を設けるんです!」
「執事デー?」
怪訝な顔をする二人を見回しながら私は説明する。
「女性客に対して、クロードさんが執事のように振る舞う日です。このお店が貴族のお屋敷だと仮定して、燕尾服を着たクロードさんが『おかえりなさいませ。お嬢様』だとか言いながらお客様をおもてなしするんです」
元の世界にいた頃も、執事喫茶やメイド喫茶などで溢れていた。もしかしたらこの世界でも流行るのでは? と考えたのだ。
それに私だったらクロードさんみたいな人がお出迎えしてくれるお店なんて、きっと通いまくるだろうな。
「なんだよその突拍子のない案は……いや、でも、案外いけるかもしれねえな」
どことなく人の悪そうな笑みを漏らすレオンさん。この人は、自分に火の粉が降りかからなければ構わないようだ。
「いえ、でも、そんな事……」
クロードさんが困惑しているうちに畳み掛ける。
「それでは決をとりましょう。執事デー賛成の人ー。はーい」
私とレオンさんが手を挙げた。
「それでは、執事デー決定でーす。クロードさん、今まで培ってきた執事スキルを存分に発揮しちゃってくださいね!」
クロードさんは少しの間呆気にとられていたようだったが、やがで正気に戻ったように咳払いする。
「それなら私からもひとつ提案が」
言いながら私達を見回す。
「執事デーがあるのなら『メイドデー』があっても不自然ではないと思うのですが。例えばユキさんがメイドの格好をしてお客様をおもてなしするだとか。それなら男性客の増加が見込めると思うのですが」
「は?」
何を言いだすんだこの人は。
「お、そりゃいいな。語尾は『にゃん』でな。『おかえりなさいませにゃん。ご主人様』って言えよ」
レオンさんまで同調している!
「そ、そんなの無理ですよ! 第一、私はメイドの教育を受けたことなんてないんですから!」
「それなら私がお教え致しましょう。なに、そんなに難しくありませんから」
クロードさんがどこか邪悪な笑みを浮かべている。
「いやいやいや、無理ですよ。無理無理」
語尾が「にゃん」とかどんな罰ゲーム!?
拒否する私に、クロードさんは楽しそうに手をこすり合せる。
「それでは決をとりましょうか。ユキさんによるメイドデー賛成の方。ちなみに語尾は『にゃん』で」
私以外の二人が手を挙げた。
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