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解放
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「さて、ヴィンセントよ」
国王陛下の声が響く。
「お前は先ほど、その娘を連れ戻しに来たと言ったな。本当にそれだけなのか?」
どういう意味だろう。思わず花咲きさんを見上げる。
「我輩が王位継承権を主張しに参ったとでも思いましたか? まさか。そんな事はありえないと断言しましょう。我輩とこの娘と、それに関わる者たちに今後一切の危害を加えないと約束してくださるのなら」
花咲きさんが私を引き寄せるので、思わずその身体にしがみつく。
「王位よりその娘を取るというのか」
「ええ。勿論。ジーンは両方を手に入れたがっていたようでしたが、我輩もこれだけは譲れません。それに、亜人である我輩には王位継承権など無いも同然。父上も判っていらっしゃるでしょう? 今すぐ我々を解放して頂けませんか?」
国王陛下は暫く何事か考えていたようだったが、やがて口を開く。
「わかった。お前たちの身の安全は保障しよう。誰か、馬車を用意しろ。この二人を居住区まで送るのだ」
「それはありがたい。聖印を晒したままで街を歩きたくはありませんから」
確かに、今の花咲きさんが人通りの多い場所を歩いたら、聖印の存在によって王子だとバレてしまう。だからこそ国王陛下はそのような提案をし、花咲きさんはその申し出を受けたのだろう。
「それではお達者で。父上」
「ヴィンセント。お前もな。もう逢う事もないだろうが」
「ええ。わかっております。私はこの国の一市民に過ぎませんからね」
どこか冷めたような親子の別れ。これも一つの家族の在り方なんだろうか。
私達は国王陛下や家臣たちの見守る中、馬車に乗る。
座席に座ると、すぐに馬車は動き出した。まるでこの場所から私達を追い出すかのように。
◇◇◇◇◇
家に帰りついて扉を開けると、懐かしい香りがした。絵具や画材の匂い。またここに戻ってこられるとは思わなかった。わずかな間離れていただけだというのに、すでに懐かしい。
と、その時、腕を強く引かれる感触。
気づけば私は花咲きさんに抱きしめられていた。
「ユキ。無事でよかった」
「私もです。もう逢えないかと思っていました」
私も花咲きさんの背中に手を回す。温かい胸の感触。いつもの花咲きさんだ。
不意に、抱きしめられる力が強くなった。
「ユキ。昨日の答えを言っていなかったな。我輩もお前の事が好きだ。お前に告白されて、やっと自分の気持ちに気づいた。馬鹿みたいに鈍い男だったんだな。我輩は」
花咲きさんの囁きに、胸の鼓動が早くなる。
「ほ、本当に?」
顔を上げると花咲きさんが頷く。
「ああ、神に誓って本当だ。これからも一緒にいてくれるか? 我輩にはお前が必要なのだ」
その言葉に、胸が熱くなる。本当に好きな人からの愛の告白。これ以上幸せで素晴らしい事があるだろうか?
「勿論です。ずっとずっと一緒にいます」
その言葉を聞いて花咲きさんの胸が安堵したように上下した。
「ユキ。愛している」
その手が私の頬に添えられると、彼の整った顔がゆっくりと近づいてくる。
思わず目を閉じると、唇に柔らかで甘美な感触がした。
国王陛下の声が響く。
「お前は先ほど、その娘を連れ戻しに来たと言ったな。本当にそれだけなのか?」
どういう意味だろう。思わず花咲きさんを見上げる。
「我輩が王位継承権を主張しに参ったとでも思いましたか? まさか。そんな事はありえないと断言しましょう。我輩とこの娘と、それに関わる者たちに今後一切の危害を加えないと約束してくださるのなら」
花咲きさんが私を引き寄せるので、思わずその身体にしがみつく。
「王位よりその娘を取るというのか」
「ええ。勿論。ジーンは両方を手に入れたがっていたようでしたが、我輩もこれだけは譲れません。それに、亜人である我輩には王位継承権など無いも同然。父上も判っていらっしゃるでしょう? 今すぐ我々を解放して頂けませんか?」
国王陛下は暫く何事か考えていたようだったが、やがて口を開く。
「わかった。お前たちの身の安全は保障しよう。誰か、馬車を用意しろ。この二人を居住区まで送るのだ」
「それはありがたい。聖印を晒したままで街を歩きたくはありませんから」
確かに、今の花咲きさんが人通りの多い場所を歩いたら、聖印の存在によって王子だとバレてしまう。だからこそ国王陛下はそのような提案をし、花咲きさんはその申し出を受けたのだろう。
「それではお達者で。父上」
「ヴィンセント。お前もな。もう逢う事もないだろうが」
「ええ。わかっております。私はこの国の一市民に過ぎませんからね」
どこか冷めたような親子の別れ。これも一つの家族の在り方なんだろうか。
私達は国王陛下や家臣たちの見守る中、馬車に乗る。
座席に座ると、すぐに馬車は動き出した。まるでこの場所から私達を追い出すかのように。
◇◇◇◇◇
家に帰りついて扉を開けると、懐かしい香りがした。絵具や画材の匂い。またここに戻ってこられるとは思わなかった。わずかな間離れていただけだというのに、すでに懐かしい。
と、その時、腕を強く引かれる感触。
気づけば私は花咲きさんに抱きしめられていた。
「ユキ。無事でよかった」
「私もです。もう逢えないかと思っていました」
私も花咲きさんの背中に手を回す。温かい胸の感触。いつもの花咲きさんだ。
不意に、抱きしめられる力が強くなった。
「ユキ。昨日の答えを言っていなかったな。我輩もお前の事が好きだ。お前に告白されて、やっと自分の気持ちに気づいた。馬鹿みたいに鈍い男だったんだな。我輩は」
花咲きさんの囁きに、胸の鼓動が早くなる。
「ほ、本当に?」
顔を上げると花咲きさんが頷く。
「ああ、神に誓って本当だ。これからも一緒にいてくれるか? 我輩にはお前が必要なのだ」
その言葉に、胸が熱くなる。本当に好きな人からの愛の告白。これ以上幸せで素晴らしい事があるだろうか?
「勿論です。ずっとずっと一緒にいます」
その言葉を聞いて花咲きさんの胸が安堵したように上下した。
「ユキ。愛している」
その手が私の頬に添えられると、彼の整った顔がゆっくりと近づいてくる。
思わず目を閉じると、唇に柔らかで甘美な感触がした。
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