副団長、一級フラグクラッシャーになる。

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鬱蒼とした森の中を進む。
右目で現在地を捉え、左目で騎士団のいる位置を探る。

「お前の目ん玉の力、役に立つよな。動きはきめえけど」
「そう思うなら見なきゃ良いだろ」
ぐっと首を傾げ覗き込んできた。
目前に迫った、肉食動物を思わせる黄金色の眼。
ぎくりとする。
「何を見るかは俺の勝手だ」
にやりと歪む顔。
何をすればそこまで凶悪な笑みを浮かべられるのだろう。
表情筋までもが豊かだ。

レウスの嫌がらせに反応する余裕すら無くなってくる。
木々に囲まれ同じような景色が続く森……。
文字通りの意味で、視野を広げても、油断した途端迷ってしまう。
前回、と言って良いのか。
その時も、獅子の魔物にたどり着くまで、随分手こずった。
──森の木々以外にも阻む要因はあったけれど。


騎士団の位置を捉えた。
先導無しで、たいした回り道もせず、前進している。
うん?
じゃあ前の回り道って、俺のせい?
いやいや、そんなコト。
村長に教わったという体で、獅子の魔物が洞窟に潜んでいるという事は伝えてある。
だからこそ、迷わずに目指せているのだろう。
それにしたって逸れないな……。

「なっさけねえツラ。先導が迷子かあ?」
「こっちであってるよ」

俺とレウスは野犬、もとい犬の魔物を叩く方針で進んでいた。
獅子の魔物討伐に加勢は必要ないだろう。

だって団長が1人で倒してしまうから。

刃も矢も一切を弾く獅子。
強者と弱者。
そこに居合わせた大半の者が、自らを弱者と位置付けてしまった中で
単身、素手で立ち向かって、獅子の首元を締め上げたんだ。
締め上げる時。
不動の口角が上がっていたように見えた。
見間違いだったのかもしれない。けれど。
どうかしている。


「犬っころに2人もいるか?」
「……獅子の魔物は団長たちが倒してくれるから」
「『くれる』ときたか。大物前にして怖気付いて、小せえのに行こうってのは気に食わねえ」
「魔物の脅威に大きさは関係ない」

「ならいいけどよ!」


突然、レウスが走り出した。
その足はねじろの1つへ、向かっている。

──森の木々以外の、探索を阻んだ要因。

以前も彼は、1人、ねじろ叩きに挑んでいた。
森の中を駆け回るせいで数日つかまらず苦労させられたっけ……。

訓練の時も、実戦の時も、
彼は赴くままに行動する。
2年間、王都での勤務と訓練を通じて彼が学んだことは一体何だったんだ?

「1人で突っ走、はっ!?」
魔物が飛んできた。
そのまま地面にどさりと落ち、動かない。
敵意剥き出しの唸り声、きゃひん、と悲しげな声が交互に聞こえてくる。
「レウス……!!もっと周囲をみて戦えないのか!」
「あぁ?腰巾着が避けりゃ、すむ話だろー、が!」
腰に携えた剣は一切使わずに、次から次へ殴り飛ばし倒していく。
「剣を使え!」
「得物で嬲る真似しろってか」
殴り飛ばすのはいいのかよ。
どうせ命を奪うのに変わりないのに。
早く仕留めてやったほうがいいだろう。

参戦するべく剣を抜く、が、死骸はどんどんこちらへ飛んで来た。
やっとの思いで駆け寄る。
「敵わねえ奴に圧倒されたとなりゃあ化けねえだろう」
本当に、意味がわからない。
死屍累々の中で仁王立ちする。
薄暗い森に差すわずか光が、レウスを照らす。
こいつも、どうかしているんだ。

魔物の他にも転がる死骸。
人の姿を僅かに保っている。

「村まで運ばないと…」
「んな状態のもんどうする」
「遺体をそのままにするわけにはいかない」
「犬に食われた残骸、持ってこられたって迷惑だ。
頼まれてもねえことやる必要ねえ」
「……。それは……」
「わざわざ時間かけて騎士団なんぞに縋る連中だ。
森に入ったやつらがとっくのとうに死んでるぐれえわかってんだよ」

衣服も土に塗れ、遺品らしいものも見当たらない。
確かに。
誰か判別もつかないほど、損壊した遺体を持ってこられても困惑するだろう。
だけど、このまま見過ごすわけには、いかない。
レウスは俺と遺体を交互に見て、舌をうつ。
腐葉土を拾い上げると魔物にも村人にもをかけ始めた。
「レウス」
森の、柔らかな地面を剣の鞘で掘る。
血生臭さと、生きた土の香りが混ざり合う。
「東の領土は確かに土葬が主流だ。
けれど、これじゃあ、ただ、土をかけただけに過ぎない。
簡単に埋葬するにも手順があるんだ」
「うぜえ」
手の土を払うと、レウスは何事もなかったかのように立ち上がる。

「おい次いくぞ!次!案内しろ!」
「さっき自分から走り出してたじゃないか。わかるんじゃないのか」
「あんだけ近けりゃな。ニオイでわかんだよ。すんだろうニオイ」
「たしかに獣っぽいにおいがする」
「俺を見ていうなバーカ。近くなきゃわかんねーんだよ。
だから、てめえに先導させてやってんだろうが」
偉そうって
こういうヤツのコト言うんだな。
獣じみた感覚は、騎士団に入る前にいたという闘技場で磨いたものだろうか。

形だけでも騎士らしく
と渡した剣は意外にも律儀に装備している。
闘技、というのは、俺は見たことがないし興味もないが
様々な武器や武術を用いて競い合う、らしい。
訓練をサボりにサボるレウスであるが、実際どの武器の扱いも
並以上ではあった。

「レウス。俺は仲間に、なるべく傷ついてほしくない。
素手で挑めば怪我は免れない。…剣を使ってはくれないのか?」
「…ッチ。
この、中途半端な長さの得物。
どうしてもしっくりこねえんだ。
トロイ相手なら素手よかマシだけどよ。
犬っころは、速えし、連携も取りやがる。
おまけに枝だのが邪魔臭え。
素手でいった方がマシだっての」

「そう、だったのか。なら、せめて、
これを使ってくれ。素手よりは良いだろう?」
予備に持ち歩いている小刀差し出すと、ギロリと睨まれる。

「いらねえよ。わかりもしねえやつから、そんなもん、受け取りたくもねえ」

レウスはズカズカと俺を追いぬいた。
刺々しい銀髪に耳まで赤く染まった顔。
いつにもまして鬼のよう。
柄悪く着崩した漆黒色の騎士団服が、人里から掠奪した品にすら見える。

何が逆鱗に触れてしまったのか。
伺いたかったがソレすらも怒りに触れそうで口をつぐんだ。
しっかりした足取りで進んでいると思いきや、突然、ぴたりと止まる。


「…案内しろよ!」
理不尽だ。
レウスの戦いぶりは血気迫るものであった。
飛んできた魔物に衝突する事もあったが
日が落ちる前に、無事にねじろを叩き尽くした。
慣れぬ埋葬を、グチグチ言いながらも手伝う。
悪いやつではないんだ。
「遠征が終わったら査定に入れろよ。埋葬代ってな」
態度が最悪なだけで。

騎士団の様子を左目で見る。
獅子の魔物を倒したあとのようで、洞窟から出て村へ向かっていた。
仕事が早い。
洞窟の中までは覗き込めないため、倒された獅子の様子はわからない。
けれど今回も団長が全部やっちゃったんだろうな。

団員たちの喝采の響く洞窟の中心で
憧憬の眼差しを一身に受ける
淀んだ目をした男の姿が脳裏を掠めた。
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