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閑話4
しおりを挟む身体全身が熱を持ち、腹部からは劣情が込み上げる。
どこもかしこもジンジンと快楽の痺れを持つ。
扉を開いた先、まるで肉食獣を前にした獲物のように
佐々木の鋭い視線に縫い止められた気がした。
それに合わせて身体の疼きは増して、知らず期待するように股間は膨らむ。
そんな恥ずかしい姿を見せたくなくて
なるべく奴に身体を見せないように、だが気持ちを悟られないようにベッドへ歩み寄る。
ベッドの端に腰掛ける奴の堂々とした態度に腹立つ。
なーに当たり前みたいな面してやがんだ。
怒気は羞恥を上回り気づけば大股に歩み寄り、そのままどさっと腰を下ろし寝転がる。
このベッドは俺のもんだしなぁ?
少し目を見開く奴に少し胸が空く。ざ、ま、あ!
「んで?どうやって勝負すんだよ。」
腕を頭に回し、足を組む。
はだけたが知ったこっちゃねえ。
さっきからこいつのテンポに飲まれすぎてたわ。
「……俺のことテクなしっていうくらいですから
さぞかし中原さんはテクをお持ちだろうと思って。
でしたら中原さん本人に俺のテクを体験してもらった方がいいでしょう?」
少し考えたそぶりを見せたがその後は、さも当然とばかりに笑顔と共にさらっと爆弾をぶっ込んできやがる。
「はァ?お前に触られるとか気色悪いし最悪なんだけど」
「じゃあ中原さん、デリヘルでも読んでくれます?
裏オプOKな子でも。
あっ!でも彼女さんいるんですよね?
バレたらマズイかぁー、こっちもバカにされたまま引き下がれないんで。
どうします?選んでくださいよ。
嬢呼ぶか、中原さんが受けるか。」
佐々木の提案を受けて、咄嗟に俺は触られる方を選んでいた。
考えてみれば適当に悪かったとあしらって話を流せばよかったのに。
婚約者の事が頭をよぎり、あのお嬢様の家の事だ。
俺の身の回りについては、ある程度調査しているだろう。
そんな中でデリヘルの一回で破談にされたらごめんだ。
あの女からはまだ金も引っ張れるし、メリットしかない婚約。
こちら都合の破談などデメリットどころか今後の社会生活に関わる。
「仕方ないからまぁ我慢してやるよ。
上司だしな、テクなし野郎に1時間位なら時間をくれてやるよ。」
女の代わりのフリをしてやるっつったって
こちとらただの男だ。
前戯つっても体を撫でられる程度だろう。
それくらいなら問題はない。
「1時間ですか、いいですよ。
あ、でも男だからーとか言い訳されても面倒なんで
これ、つけてて下さい。」
そう言って渡されたのはアイマスク。
俺が寝る時につけてるやつ。
ベッドサイドに置いてたの勝手に触りやがったのか。
舌打ちしつつ佐々木をひと睨み。
盛大な溜息で不服を伝えつつも言う通りアイマスクをつけてやる。
「んで?どうすんだよ。」
「中原さんはリラックスしてくれてたらいいですよ。」
ぼんやりとした熱が体の近くにあると思った途端
耳元に佐々木の声が落ちる。
ぞわりと肌の上を何かが駆け上がると同時に
多分抱きすくめられたのだろう体は横たえられた。
しゅるりとバスローブを脱ぐような衣擦れの音。
自分の呼吸、佐々木の気配。
そして寛げられる俺のバスローブ。
するりと頬を撫で上げられて思わず身を竦める。
「そんな生娘みたいに怯えなくても大丈夫ですよ。
ま、中原さんはテクなし野郎に反応はしないでしょうから
そのまま寝ててくれてもいいですよ。」
軽口に自分の反応が恥ずかしくなり
顔に血が上りそうになる。
「1時間だけだからな。」
「ええ、ちゃんとスマホのアラームかけましたから」
スマホらしきものが枕元に置かれる音。
観念して俺は1時間昼寝してやろうと目を閉じた。
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