碧の海

ともっぴー

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黒耀の事情

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**黒耀(碧)

俺が悪いのか?なんだよ。嫌な奴って、なんだよ。のこのこ別の男の部屋に入ったりするからつい「金を持ってこい」なんて言ってしまったんじゃないか。それに嫌なら頼めばよかったんだ。俺は、海が素直に頼めば許してやるつもりだった。それを・・・せっかく前みたいに戻れたと思っていたのに、違ったのかよ。
ズクズクと痛む胸を押さえて壁に寄りかかった。海は俺の力を持っている。一緒にあるべきものからの思い切りの反発は、結構キツイ。額の汗を拭い、どこかで休もうと身体の向きを変えると、さっき菫が出てきた部屋が目に入った。胡散臭い男の部屋だ。···少し調べておこうか
身体にぐっと力を入れて壁から離れた。目がぐるぐる回る。服の中から魔石を取り出し、握りしめた。中身は・・・空か。仕方なく服の中に戻し、目を瞑った。くそ、遠い。それに自分の目が回っているせいで上手く聞こえてこない。さっき拭ったばかりの額からは汗がにじんでいる。




「・・耀・・・・黒耀っ」
「んあっ・・!?」

なんだ?どこだ?どうした?勢いよく起き上がると視界が回ってボフン、と柔らかな物に受け止められた。・・・布団か?

「廊下に倒れてるんだもの。びっくりするじゃない!」
「あ?そうだっけ?」

杏奈の顔が見える。ここは家か。そういえば廊下で・・・

「あー・・、悪い、問題ない。」

思い出した。頭の中を覗く為に力を使い過ぎただけだ。

「ねぇ、黒耀何かおかしくない?何か隠してる?」
「いや、別に。普通。」
「その身体、あんまり良くないんじゃないの?もう出た方が・・」

「なぁ。。心配しなくてもちゃんと戻るし、だからここにいるんだろ。黙っててくれないか?」

強く言うと、杏奈は黙った。同居までさせられてるのに干渉されるのは鬱陶しい。俺だって、焦ってるんだ。時間が、惜しい。



**海(菫)


翌日、学校ヘ行くと碧が教室の前で立っていた。

「まだお金は準備出来てないわよ。」
「いや、そうじゃなくて・・」
「何?昨日あんな風に言っといて、まさかいつも通りに勉強教えろなんて言わないわよねっ?」
「・・・いや、悪い、そうじゃなくて、話があったんだ。」

あれ?と思った。どことなく雰囲気がいつもと違っている。

「何の話?」

へらへらした様子がなくて、思いつめたような・・

「あいつ・・・」
「あいつって?」
「お前のクラスの担任」

思わずビクリ、と肩を揺らしてしまった。

「なぁ、あいつは止めとけ。」
「ななななっ、何のこと!?」

まさか昨日、碧は話を聞いていたのかしら?

「なんか変だ。」
「へ、変ってなによ!? 何も知らないくせにっ」
「知らない。でも変だ、後悔するぞ。」
「そんな・・やめてよ。」

嫌な事を思い出した。碧は施設に一緒にいた頃も、周りの大人の事を、そう言う時があった。実際に恐い目にあうこともあり、そのたびに、碧が助けてくれた。それを、すっかり忘れていたのだ。その記憶と共に、ふっと、お父様が頭をよぎり、胸の奥が渦巻いた。嫌だっ、違う。お父様は、違う。

「何か、されたのか?」

肩を叩かれてはっとした。そうだった、今は十夜さんの事・・

「ちっ、違うわっ! 十夜さんは、そんな人じゃないっっ」

碧の瞳が、微かに揺れた。

「・・・へぇ、随分肩を持つんだな。だけど、なぁ、俺達は1つだ、って、教えたよな。」
「うん? ・・・2人で1つだったでしょ?」

昔の話だ。記憶を辿って言葉を探した。

「2人で、なんかじゃない。最初から、1つだ。」
「ええ? よく分からないわ。」

何のこと? そんな事、言われたかしら?

「菫は、俺のだよな。」
「どうしたのよ、そんな昔の事。」

幼い頃は、確かにそう言ってじゃれていたけど・・。

「今もだよ。 お前が言い出したんだろ。答えろよ、俺のだよな。」
「・・・言い出したっていうか、碧が拗ねるから仕方なくだったでしょ?」
「でも言ったんだ。言ったんだからな。」
「分かったわよ。言ったわよ、確かに。」
「よし。それから、お前を愛しているのは、俺だけだから。」
「へ?」

何それ?ポカンと碧を見ると、真面目な顔で私を見つめ返した。

「ぷっ、何それ。」

思わず吹き出してしまった。何を言い出すのかと思えば。

なんだからな。」
「はいはい。ありがとう。」

なんだ、結局、焼きもちってことか。可愛く見えたので、頭をわしわしと撫でてあげた。背が高くなっているから、背伸びをしながら。
碧は最初びっくりして後退り、「馬鹿にすんなよな。」と言ったけど、手を払うことはしなかった。

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