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ヒロの部屋に戻ると、机に教科書や参考書、ノートを広げ、熱心に勉強中だ。

学校には通わず、部屋で独自に勉強し、テストの時だけ登校していたらしい。

「あまり根を詰めすぎないようにね」

お茶を手にした俺にようやく気がついたようだ。

お茶を受け取ると、ありがとう、と笑顔を見せた。

中退はしたが、一応、大学までいった俺もたまにヒロの勉強を見てあげた。

「母さんとすっかり仲良くなったみたいだね、凄く喜んでるよ。ずっと専業主婦で暇を持て余していたみたいだから」

「でも料理教室していたなんて凄いね」

「母さんの趣味だよ。それに寂しさを解消する為だったのかも」

「そっか...」

「おいで、瑞希」

手招きされ近づくと後ろから抱き締められた。

「めっちゃ好き。瑞希」

「私も」

「今度、デートしよっか」

女装したまま外を歩いたことはまだない。

黙っていると、

「どうしたの?瑞希」

「大丈夫かな...」

「なにが?」

「変な目で見られちゃうかも、ヒロ」

「変な目、て?」

抱き締めたまま、優しくヒロが尋ねてくる。

「...女装した変態と歩いてる、てヒロが後ろ指差されるの、嫌だ」

すぐにヒロは後ろから頬に可愛らしいキスをくれた。

「そんな事ないよ。瑞希は凄く可愛いし。違和感もなんもない。もし、瑞希や俺たちを後ろ指差したら、そいつを俺はぶん殴る」

強い口調。頼もしいけれど、不安に駆られた。

「やめてよ、暴力はよくない」

ヒロの手を握る。

「ヒロが殴りそうになったら私、力ずくで止める」

「瑞希...」

俺を正面に向かい合わせると俺の手を握る。

見つめ合った。

「愛してる、瑞希」

「...私も」

口付けを交わした。深いけれど、優しいキス。

俺はヒロに溺れてしまいそう....。
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