外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

文字の大きさ
29 / 140
第一章

第29話 【ルクリア商会の動き・1】

しおりを挟む
 冒険者登録から数日が経ち、冒険者ギルドの事を忘れて訓練を続けている。
 冒険者登録を終え商会に戻ってから、ルクリア商会はいつも以上に忙しそうだった。
 俺も何か手伝える事は無いか、師匠に聞いたが。

「今は訓練がアルフのやる事だ」

 と言われて、俺は黙々と訓練に集中している。

「おばちゃん、何か新しい事分かった?」

「いや~、それが一昨日から変わらないのよね。何か決め事をしてるみたいだけど、私達も流石にそこまで詳しく調べられないから」

「ごめんね。アルフ君」

 師匠達から仲間外れにされている俺は、商会が何をしているのかの情報は食堂のおばちゃん達経由で一つだけ教えて貰った。
 聞いた内容は、冒険者ギルドを仲介しないで素材や冒険者への依頼をするやり方を考えているという内容だった。

「でもここ最近、商業ギルドの幹部の人達も来てるみたいだから、もしかしたら商業ギルドも巻き込んで何かするんじゃないかしら?」

 商業ギルド、それは冒険者ギルドと二大巨頭のギルド。
 冒険者ギルドは武力で成功を収める者達が集まるのに対し、商業ギルドは商売で成功を収めようと集まった者達が登録するギルド。
 エルドさんはそんな商業ギルドの中でもかなり高い地位を持っていると、おばちゃん達に聞いて知った。

「商業ギルドを巻き込むって、本当に大事に発展してるな……」

 おばちゃん達との話し合いを終えた俺は、朝食を食べながら自分のせいで色んな事が起こっている事に対して少し不安を感じた。
 元を辿れば、冒険者ギルドから嫌な扱いをされたからだ。
 しかし、それだけで数ヵ国から認められている商会と、更には商業ギルドから敵対される王都の冒険者ギルドが少し可哀想に思えて来た。

「アルフ君、こっちに居たのね」

「エリスさん、どうしたんですか?」

「エルド様からアルフ君を連れて来るように言われたのよ。この後、会議があってそこにアルフ君も出席するようにって」

「俺が会議にですか!?」

 そんな反応をした俺だったが、呼ばれたなら早く行かないといけないと考え、残っていた朝食を急いで食べてしまった。
 朝食を終えた俺はエリスさんと一緒に、商会の建物の会議室へと向かった。
 そして会議室に着き、中に入ると既に会議室には多くの人達が集まっていた。
 その中には勿論、師匠も居て俺の顔を見ると「アルフも呼ばれたのか」と声を掛けてくれた。

「はい。ついさっき、エリスさんに呼ばれてきたんですけど……俺、本当に会議に出席して大丈夫なんですかね?」

 周りを見渡すと、商会でも重役を担っているような人達ばかりで俺は本当にここに居ていいのか不安な気持ちになった。

「エルドさんがアルフを呼んだって事は、出席していいと思うぞ。そもそも、この話の始まりはアルフだしな」

「そ、それもそうですけど……」

「あれ、もしかしてその青年がアレン君の弟子かな?」

 俺と師匠が話していると、遠くの方から近くに寄って来たエルフ族の方からそう声を掛けられた。
 声を掛けられるまで、俺はその人の容姿が整っていてスラッとした体形から女性かと思っていたが、そのエルフ族の方は男性だった。

「そうですよ。アルフ、この人はルクリア商会の素材管理部長をしているマルクスさんだ」

「初めまして、アルフレッドです」

「うん。話は聞いてるよ。よろしくね」

 マルクスと紹介されたエルフ族の方は、親し気にそう言って握手を交わした。

「ねえ、アレン君。君の弟子って、珍しいスキルを持ってるんだよね? どうかな、僕に見せてくれないかな?」

「ずっと忙しそうにしていたので声を掛けれませんでしたが、マルクスさんから頼まれるとは思いませんでしたよ」

「ふふっ、ここ数年新しいスキルと出会ってなかったからね。話を聞いた時点で聞きに来たかったんだけど、どうしてもこの時期は忙しくていけなかったんだよ」

「そうだったんですね。アルフ、マルクスさんにステータスを見せられるか?」

 俺はそんな師匠に「大丈夫ですよ」と返事をして、俺は自分のステータスをマルクスさんに見せた。

「他のスキルは見た事があるけど、アルフレッドが授かった【経験値固定】は初めて見るよ……」

 マルクスさんはワクワクと楽し気にそう言うと、バッグから大きめの本を取り出した。

「あの、何をされてるんですか?」

「マルクスさんは素材管理部長って顔とは別にもう一つ、学者としての顔を持ってるんだ。スキルの知識なら、この国でマルクスさん以上に知ってる人は居ないと俺は断言できる」

「アレン君からそう言われると、なんだか照れるな~。ただ僕は自分の知りたいから欲が強すぎて、スキルについて色々と調べていたらいつの間にか知識が付いてたんだよね」

 マルクスさんは笑みを浮かべながらそう言うと、丁度エルドさんが会議室に現れた。
 エルドさんの登場で続きを話す事は出来ないと判断し、俺のスキルについては会議後に話す事になった。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...