外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

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第一章

第39話 【レベル上げ・3】

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「あっ、レベルが上がりました」

「初日は約50体でレベルが上がったが、今日は大体100体位倒してレベルが上がったみたいだな。戦いにちゃんと集中していたし、数が変化したのか?」

 一日目は、ゴブリンを約50体程でレベルが上がった。
 しかし、今日はゴブリン以外の魔物も狩り、約100体程討伐してレベルが上がった。

「数が変化する事ってあるんですかね? もしかしたら、スキルを授かる前の経験値があったからとかだったら、初日の倒した魔物の数でレベルが上がった理由にもなりますけど」

「ふ~む……まあ、そう思うしか無さそうだな」

 そうして改めて、俺はレベルに必要な個体の数は100体として考える事にして少し早いが帰宅する事にした。
 帰宅する際、ギルドによって換金を済ませたが今日は酒場には寄らず、真っ直ぐ家に戻って来た。

「あら、今日はお酒は飲みに行かなかったのね」

「昨日の事もあるからな……リアナ。飯は出来てるか?」

「ええ、作ってあるわよ」

 リアナさんはそう言い、俺と師匠は配膳の手伝いをして夕食を食べる事にした。
 今朝も思ったが、リアナさんの料理は凄く美味しい。
 貴族として生活していた頃、貴族が開くパーティーに参加した事があるが、その時に食べた料理よりも美味い。

「リアナさんの料理って、本当に美味しいですよね。もしかして、料理人さんなんですか?」

「両親が料理人だったのよ。それで、私も小さい頃から教え込まれていたんだけど。休み無く働く両親の姿を見て、憧れはあったけど、料理人にはならない選択をしたの」

「リアナの両親は、多分アルフも知ってる有名な料理人だぞ」

 師匠は俺に、リアナさんの両親について教えてくれた。
 その人達の名前を聞いた俺は、聞いた事のある名前で行った事もある場所だった。

「そんな凄い人達が両親なんですね」

「まあ、料理人としては凄いけど、親としては凄いとは思えない人達だったわ。今は同じルクリア商会の一員だけど、あまり親とは会わないようにしてるのよ」

 リアナさんの言葉を聞き、リアナさんは両親とそこまで仲が良さそうとは思えなかった。
 これ以上この話題を続けないようにする為、話題を今日の狩りの話へと変えた。

「へ~、アルフ君の能力って本当に変わってるのね。普通、そのレベルならそれだけ倒したらもっとあがりそうじゃない?」

「今はアルフの能力がレベルを上げるのを制限していて、邪魔をしているように見えるが。レベルが高くなれば、この能力は冒険者なら誰もが欲しがる能力と生まれ変わるからな。まあ、現時点でもスキル習得の事とか考えたら、誰もが欲しがる能力なのは変わりないけどな」

「アルフ君ならなんにでもなれそうね。今はアレン君の弟子として、魔法使いを目指してるみたいだけど。鍛冶師とか、そういう職人系の仕事も出来そうね」

 そうリアナさんが言った後、俺がどんな風になるのか楽しみと師匠達は言い。
 夕食を食べ終えた後、俺は風呂に入り、借りてる部屋のベッドに横になると今日も直ぐに眠りについた。
 そうして翌日、朝食を済ませて街の外に出ると師匠から「試したい事がある」と言われ、異空間で寝ていたフェルガを呼び出した。

「久しぶりに出てきたと思ったらら、弱い魔物を倒せと……戦うなら、もう少し強い魔物と戦いたいのだが?」

「今日は検証の為だから力を貸せ。アルフの力になれるかも知れないんだから」

 師匠がそう言うと、フェルガは嫌々ながらも魔物を探し始めた。
 そして、少し歩いていると前方に数体の魔物を発見。
 俺の場合、ここから敵の数等を把握して戦闘を始めるのだが。
 フェルガの場合は【風属性魔法】の風の刃を一瞬で作り出し、魔物に向かって放った。
 フェルガの魔法を食らった魔物は、それまで呑気に寝ていたが一瞬にして絶命した。

「で、これを100体分続けるのか?」

「そうだ。普通の従魔使いだと、従魔が倒した分も経験値は主である者に入る。これがフェルガとアルフにも適用されるのであれば、より早くレベルを上げられるかも知れない。ちなみに相手が弱くても、適当に戦うんじゃなくて真剣にやってくれよ。そうでないと、アルフに経験値がいかないかも知れないからな」

「ふ~む……分かった」

 師匠の話を聞いたフェルガは話に納得したのか、そこから物凄い速さで魔物を狩り始めた。
 フェンリルであり、深緑の森の元王であるフェルガに太刀打ちできるような魔物はこの近くには存在しない。
 何も出来ずにフェルガに蹂躙される魔物達に対し俺は、素材を剥ぎ取りながら憐れんだ。

「師匠。これなんだが、冒険者さんに最後の一撃を譲って貰ていた時と同じ感じがするんですけど……」

「従魔使いの戦い方には、従魔に前衛を任せて主は後衛を務めるという戦法がある。これから先、フェルガを戦闘で使わないって事は無いだろう。だから、今のうちにフェルガの戦い方を見ておくのも大事だと思うぞ」

 本当は見学しているのは嫌だったが、師匠からそう言われて一応は納得する事にした。
 その後、フェルガは魔物が固まって生息していない為、移動に少し時間が掛りながらも一時間程で大体100体程の魔物を討伐した。
 そして俺はステータスを確認すると、一度も戦ってないのにレベルが1上がっていた。

「……師匠。レベルが上がってました」

「従魔であるフェルガが倒しても、主であるアルフにも経験値が与えられるみたいだな……【従魔】スキルを与えた神は、この事も分かっていたのか?」

 師匠はフェルガという強い魔物を従魔にさせた神様に対し、神がどんな考えで俺に【従魔】スキルを与えたのか疑問に感じていた。
 そんな師匠から視線を外し、今回の検証で活躍してくれたフェルガの方を見ると、フェルガは疲れた表情をしていた。

「フェルガお疲れ様。やっぱり、100体も戦うと流石に疲れた?」

「……魔物を倒す事自体は別に大した事は無い。ただ真剣に戦うというのが、我にとっては精神を削る作業だった。もう少しマシな相手ならまだしも、あんな低級の魔物相手に真剣に戦うなど我はもうしたくはない」

 フェルガの気持ちを知った俺は師匠と相談した。
 そして相談の結果、フェルガと一緒に戦うのはもう少し俺が強くなってからにする事にした。
 正直、見ているだけでレベルが上がるのは俺自身もそこまで嬉しくなかった。
 師匠も俺のそんな気持ちを汲み取り、今回の件について謝罪をしてくれた。

「弟子の嫌がる事を押し付けようとした。すまん」

「いえ、師匠の気持ちも分かってます。なので頭を上げてください」

 その後、フェルガを異空間に戻して自分の力で魔物狩りを始めた。
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