外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

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第二章

第116話 【新学期に向けて・2】

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 その後、準備運動を終えた俺はフローラさんとの模擬試合を始めた。
 お互い使用するのは、訓練用の木の剣で魔法等は一切禁止というルールで試合を始めた。

「アルフ君、友達に良い所見せたいと思うけど手加減はしないわよ?」

「逆にされると訓練になりませんから、いつも通りで構いませんよ」

 試合開始早々、フローラさんは激しい剣技で攻めて来た。
 普段からこの攻撃に耐えている俺だが、日に日にフローラさんは力が上がっている。
 元々、謹慎を食らう少し前に怪我をしていたらしく、それで一時的に能力を全力で出す事が出来なかったらしい。
 それを聞いたのはここ最近で、俺とはじめて会った時の試合も全力は出していたが、その時に出せる全力という意味だった。
 だから師匠は、フローラさんに全力を出して勝負をしろと言っていたのだろう。
 白金級冒険者に勝てたという自信が付いていた俺だったが、それを知ってからは少し恥ずかしい気持ちを感じた。

「ふぅ~……」

 試合が始まって20分程戦い、俺とフローラさんは体力を消耗しているが、身体が温まり更に速度を上げて行った。
 そうして更に10分程戦いは続き、時間切れでこの試合は引き分けとなって終わった。

「私も大分、力を取り戻してる筈なのにアルフ君は本当に成長が早いわね。師匠としては嬉しい半分、負けたくないって悔しさも感じるわ」

「剣術の技術では、まだ俺はフローラさんには追い付けませんよ。能力値が高くとも、経験が圧倒的に足りないですから」

「ふふっ、そうなるとアルフ君が経験を積む前に私も強くならないといけないわね……」

「まあ、その前にフローラさんは謹慎を解いてもらえるように頑張らないといけませんよね」

 そう言うと、フローラさんは「いつ解けるのかしら……」と少し落ち込んだ様子で言った。
 それから試合が終わり、アリス達の所に行くと、俺の剣術の上達の早さに皆は驚いていた。

「アルフ君って、一体何を目指してるの? 魔法もあんなに凄いのに、剣術も白金級冒険者の方と、あんなに戦えるなら色々と目指せそうだけど」

「う~ん……まあ、特に目標としてる事は無いけど、ルクリア商会の役に立つ事をしたいとは思ってるよ。今の俺があるのは、エルドさんのおかげだからね」

 【経験値固定】のおかげでここまで強くなることが出来たが、このスキルの強さを認識する機会をくれたのはエルドさんだ。

「アルフ君の凄さは十分知ってたけど、魔法の才能もあれだけあって剣術もこんなに出来るって本当に凄いな……」

「それにアルフ君の凄さは、その才能に怠らず努力してる所だよね。私だったら、魔法か剣術どっちか出来たらもう片方を死ぬ気で努力なんてしないと思うもん」

 レインとリサはそう言った後、俺は久しぶりに皆と一緒に訓練をしてその日は解散した。

「昼間、アルフ君の友達が言ってたけど、アルフ君の目標って本当にルクリア商会の役に立ちたいってだけなの?」

 皆を見送った後、食堂に行き夕食を食べているとフローラさんからそう聞かれた。

「はい。今の所は特にそれ以外は無いですね。逆にフローラさんは何か目標としてる事とかはないんですか?」

「まあ、今は無いわね。強いて言うなら、強くなりたいって事だけかしら? 白金級冒険者になるまでは、先に白金級冒険者になったアレン君に負けない為に死に物狂いで白金級冒険者になろうとしていたわ」

 そう俺とフローラさんで話していると、丁度師匠も食堂に来て俺達の所に寄って来た。

「俺の名前が聞こえたけど、また俺の悪口でも言ってたのか?」

「違うわよ。アルフ君が目標が商会の役に立つ事以外ないって言うから、それの話をしていたのよ」

「ふ~ん……確かに、アルフから商会の役に立ちたいって目標以外は聞いた事が無いな。本当に何もないのか? 大物になりたいとか、金持ちになって贅沢したいとか」

「はい。今の生活に満足してますし、お金にもそこまで執着してませんので……」

 夢の無い奴だと思われるかも知れないが、今の生活は昔に比べたら本当に良い生活を送れている。
 そんな生活を与えてくれた商会や、エルドさんに対して役に立ちたいと思うが、それ以外は特に思い浮かばない。

「でも強いて、これだな~と思うのは強くなる事ですかね? 商会の役に立つ為には、力が必要ですから」

「……まあ、目標が無くともアルフの場合は努力が出来る人間だし、この先の人生の中で見つければいいのかな」

「無いからって言っても、問題がある訳じゃないものね……」

 師匠達はそう言うと、それから学園がもうそろそろ始まるので、それからの事を話し合いを行った。
 それから夕食を終えた俺は、風呂に入りいつも通りクラリスの勉強を見てからベッドに横になり眠りについた。
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