117 / 140
第二章
第117話 【新学期に向けて・3】
しおりを挟むレイン達に剣術を見せた翌日、朝から俺はエルドさんから呼び出しを受けた。
「突然、呼び出してすまんな」
「いえ、それは大丈夫ですけど、今日はどういった件で呼ばれたんですか?」
「最近、アルフとは話せてなかったから少し話をしたいと思ったのと、昨日アレンからアルフが目標を持ってないと聞いてな」
エルドさんは師匠から俺が目標を持ってない事を聞いて、それが心配になって話しをしようと思ったとそう言った。
「儂としては商会の役に立ちたいと思ってくれてる事は嬉しい。ただアルフはまだ若いから、色んな事に挑戦して欲しいと思ってるんだ。何かしたい事とか叶えたい夢とか無いのか?」
「特に無いんですよね……やっぱり、何か目標を持った方が良いんですかね?」
「無理に持つものではないが……アルフは商会に縛られて、自分の叶えたい事を見失ってるんじゃないかと心配に思ったんだ」
「そんな事は無いですよ? 商会に縛られてるなんて思った事は一度も無いです」
心配そうな顔をしてるエルドさんに俺はそう伝えると、エルドさんは「本当か?」と聞き返してきた。
「嘘じゃないですよ。商会には感謝しかしてません。それに目標を持てないのは、多分俺の性格なんだと思います」
「う~む……まあ、そこまで言うのであれば今のアルフの本音はそうだと信じる。だがもし、何か目標が出来たら儂にも教えてくれるか?」
「勿論です」
そうしてエルドさんとの話し合いは終え、寮の方に戻るとアリス達が集まっていたので、遅れた事を謝罪して勉強会を始めた。
「クラリス。クラリスは何か目標とかってあるのか?」
「兄さん、どうしたの急に?」
その日の夜、師匠達やエルドさんから目標について聞かれた俺は、クラリスとの勉強会の時にそう聞いた。
「いやさ、昨日今日と師匠達やエルドさんから目標は無いのか? って聞かれて、今の目標って商会の役に立ちたいってだけでそれ以外は無いんだよ。それで師匠達は、もっと他に目標は無いのかって聞いてくるんだけど特に無くて……」
「今の私の目標は、兄さんと同じで商会の役に立ちたいって事もあるけど、立派な魔法使いになる事も目標だね。兄さんに訓練つけてもらって、家に居る時よりも更に魔法の腕が上がったから、このまま頑張って国に認められる魔法使いになるのが目標だよ」
「国に認められる魔法使いって、クラリスはいつか国に仕えたいのか?」
「ううん。そうじゃないよ。ただ一応は魔法使いの一族として生まれた訳だから、それ位の名声は得ないと私達を苦しめたあの人達よりも劣ってる存在だと思われるでしょ?」
魔法使いとしての認められるという目標の裏には、俺達を苦しめた家族を超えたと言う証明をしたいと言う思いが隠れていたのか……。
本当に俺の妹は、兄である俺より凄いな~。
「クラリスは色々と考えてるんだね。俺はただ今の生活に満足して、商会の役に立ちたいとだけ思ってたよ……」
「私もこの目標が出来たのは、兄さんと訓練を始めてからだし、兄さんもゆっくり決めたらいいと思うよ? そんなに焦ってても、目標は決まらないと思うし」
「……そうだよね。師匠達から言われて、目標を持った方が良いのかな? って焦ったけど、焦っても良い事ではないもんね。あれがとうクラリス」
クラリスに俺はお礼を言って、明日また師匠達にまた目標は決めないという事を伝えようと考えた。
「目標が決まったら私にも教えてね?」
「勿論、決まったらクラリスにも教えるよ。まあ、いつ決まるか分からないけどね。暫くは、今のまま取り合えず商会の役に立つ為に色々と頑張ってみるよ」
その後、勉強を終えて就寝した俺は昨日は考え事をして、寝つきが悪かった。
しかし、クラリスと話した事で頭の中がスッキリし、今日は直ぐに寝る事が出来た。
そして翌日、朝食を食べに食堂に行くと丁度フローラさんが居た。
「おはようございます。フローラさん」
「おはよう。アルフ君、今日も早起きね」
「この時間に起きるのは習慣付いてますから、そういうフローラさんも早起きですよね」
「普通は結構寝る方なんだけど、やっぱり訓練だけじゃ疲れないから、あまり長時間は寝れないのよね。それより、昨日よりアルフ君の顔色がスッキリしてるみたいだけど、もしかして何か悩みでも解消されたのかしら?」
フローラさんからそう言われた俺は、昨日の夜にクラリスと目標について話をして、ゆっくりと決めて行こうと決めたからだと伝えた。
「そうなのね。それじゃ、目標が決まったら私にも教えてね。力になれる事があったら、力を貸すわ」
「ありがとうございます。その時は、よろしくお願いします」
その後、食事を終えてレイン達が来るまで少し待ち、皆が揃ったら今日もテストに向けて勉強会を行った。
454
あなたにおすすめの小説
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる