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第二章
第119話 【新学期に向けて・5】
しおりを挟む「はぁ~……緊張した! まさか、エルドさんが来るなんて思わなかったよ」
「私達、食事会に誘われたけどこの格好で大丈夫かな……」
「勉強をするだけと思って、普段着で来ちゃったよ……」
二人はエルドさんが居なくなった後、緊張が解けてそう心配そうに言った。
「大丈夫だよ。エルドさんも言ってたけど、ちょっとした豪勢な食事をするだけでパーティーとかでは無いよ。それに俺達の思い出作りが目当てだし、そこまで考えなくても大丈夫だよ」
食事会の参加者は俺達学生組とリサ達の両親、そしてクラリスとルクリア家の人達だけだ。
だから緊張しなくても大丈夫だと言ったが、二人からしたらルクリア家が参加する時点で緊張すると言った。
「ごめんね。この食事会、本当は私が提案したの……」
「えっ、アリスちゃんが!?」
「そ、そうだったの!?」
二人があまりにも緊張していた為、エルドさんが考えたと言っていた食事会は実はアリスが提案した事だと二人に告げた。
自分の提案に慌ててる二人を見て、申し訳なく思ったのかアリスは悲し気な表情を浮かべていた。
「難しそうなら、今からお爺ちゃん止めて来るよ……」
「ちょっと動揺しちゃっただけだから、大丈夫だよ!」
「うん。ごめんね心配かけちゃって」
「……本当に大丈夫?」
二人の言葉に対して、アリスは心配そうな表情を浮かべてそう聞くと。
二人は首を縦に振ってアリスに「本当に大丈夫だよ」と強がりながらも、そう二人はアリスに言った。
それから数時間後、食事会が始まる少し前にリサ達の両親が緊張した表情をして、ルクリア商会に訪れた。
「れ、レイン。何があったんだ? 突然、家にルクリア商会から連絡が来て父さん達本当に驚いたんだぞ?」
「リサ、何があったんだい? ルクリア商会にいつか行きたいとは言ってたけど、こんな急に招待されるなんてお父さんを驚かせたかったのかい? だったら、本当に成功だよ!?」
レインのお父さんと、リサのお父さんはレイン達と会うとそう言った。
物凄く緊張している様子のリサ達の父親達とは違い、母親組は緊張こそしているが多少は落ち着いていた。
そうして食事会を行う部屋にレイン達の両親を案内すると、既にルクリア家が集まっており、その顔触れにリサ達の両親は更に緊張した。
「突然の食事会に応じてくれて、感謝しておる。儂はルクリア商会長をしておるエルド・ルクリアだ」
「初めまして、リオス・フィネットと申します。私共の方こそこの度の食事会に招待して頂き、感謝しております」
「は、初めまして私はライアン・ネルソンです。招待して頂き、本当に感謝しております」
リサのお父さんは、多少こういう場に慣れてるのかエルドさんの言葉に緊張こそしているが返事を返した。
しかし、こういう場になれていないレインの父親は、リサの父親の後に続けて言うので精一杯だった。
母親組はと言うと、冷静さを保っていてそれぞれ挨拶を交わしていた。
それから今夜の食事会は立食形式の為、食事会開始の合図をエルドさんが言うとそれぞれ食事を始めた。
「レイン達の両親、凄く緊張してたね」
「そりゃそうだよ。お父さん、ルクリア家に認められるのが夢だし」
「僕の両親は認められるとかは無いけど、昔からルクリア家の凄さは知ってるからそれであそこまで緊張してるんだと思う」
学生組で集まって食べながら、レイン達の両親について話をしていると、レイン達の母親達が近くに寄って来た。
「貴方がアルフ君かしら?」
「はい。初めまして、アルフレッドと申します」
「初めまして、私はレインの母のレイナ・ネルソンというわ」
「私はリサの母親のマーサ・フィネットよ。初めまして、アルフ君」
そうレイン達の母親と挨拶を交わすと、俺の後ろに隠れていたアリスもヒョコッと顔を出し、レイン達の両親に挨拶を交わした。
「アルフ君には物凄く感謝してるわ。リサは昔から薬学には情熱を注いでる子だったんだけど、それ以外は興味が殆どなくて成績もいい方だとは言えなかったわ」
「ちょ、ちょっとお母さん!? 何でそれを今ここで言うのよ!」
「お礼を言いたいからよ。成績が落ちてたリサを救ってくれたアルフ君に感謝するのは親として当然でしょ?」
慌てるリサに対し、冷静にマーサさんはそう言うと、レインの母も「私も感謝してるわ」と言った。
「レインはお父さんに憧れてて、冒険者になるんだって昔から言っててどうにか学園だけは卒業して欲しくて無理矢理行かせたのよ。でも、成績も特に言い訳でも無く剣術以外は真剣に取り組んでくれなくて、何度も喧嘩したのよね……」
「ちょ、ちょっと母さん昔の事は言わないでよ……」
「レインはアルフ君と出会ってから本当に変わって、色んな事を頑張り始めて母親として嬉しかったわ……アルフ君、あの子と友達になってくれてありがとう」
レイナさんはそう俺に言うと、マーサさんも同じように俺に「ありがとう」と言うと二人して頭を下げた。
その後、エルドさんと緊張した様子で喋っていた父親達がこっちに寄ってくると、レイナさん達と同じように俺に感謝の言葉を伝えて来た。
今日はそういう場ではないのにと思いつつも、無理に突き返すのは失礼だと感じ、素直にその言葉を受け取る事にした。
それからルクリア家の人達も俺達の所へと集まり、一緒に食事をする事にした。
レイン達の両親は最後まで緊張した様子ではあったが食事会を楽しんでおり、食事会は長期休みの一つの思い出となった。
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