婚約破棄された侯爵令嬢は、王都を出て西の島にやってきた

第一章

第四話

スザンヌたち一家はエース・アイランドで１週間ほど過ごした。その間に近くの別荘に来ていたアラン公爵家の人たちと親しくなった。毎年、夏季休暇が重なることもあればそうでない時もあり、互いに顔を合わせたことはある程度の仲であった。もちろんモンターニュ侯爵とアラン公爵は、宮中では互いを知っていたが、そこまで深く関わることもなかった。

アラン公爵にはフレデリクという男の子がいた。年齢はスザンヌより２歳年上で、彼と話すのが次第に楽しくなった。フレデリクは、お調子もののところがあり、２家族合同でバーベキューをやった時は皆をたくさん笑わせていた。

特にフレデリクはものまねが上手で、宮中の若い貴族の特徴をよくとらえて皆を笑わせていた。

スザンヌは夏季休暇の最後の夜、フレデリクを誘ってみた。ものすごく興味があるところまではいかなかったが、２人で会うのも悪くないと思えた。

「両親にはうまく言っといたわ。」

スザンヌはマーガレットに告げた。

大丈夫かしら？とマーガレットは思った。できればスザンヌに元気になってほしいけど、今フレデリクと会うのはどうなんだろう？

「わかりました、楽しんでいらしてください。」

それでもマーガレットは、笑顔でスザンヌを送り出した。

モンターニュ侯爵一家がエース・アイランドで過ごす最後の夜、スザンヌは持ってきた服の中で一番オシャレなものを着て外に出た。星が光る、澄み切った夜空であったが、別荘のテラスにはスザンヌの席となるはずであった椅子だけが空席のまま置かれており、その周りで残りの家族は食事を楽しんだ。