【完結】成り上がりの家に嫁いだ公爵令嬢

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第三章

第八話

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ウィリアムの製紙工場は本格的に生産を開始した。ちょうど一般民衆にも本や新聞を読む習慣が出来つつあったので、需要は増えていた。ウィリアムは、ビジネスをやるに当たって生産規模の拡大には否定的だったが、さすがに増産せざるを得なくなった。

ただ、仕入先には困ったようだ。当たり前だが、他の製紙工場も増産していたので、紙の原材料は不足していた。当初は国内だけで調達していたが、他国からも輸入することになった。

「しまったなあ、こんなに早く増産体制に入るとは思わなかった。」

ウィリアムはなぜか困った顔をしていた。

「そうですね、どこまで事業拡大したらよいか迷いますね。」

アンナもウィリアムの気持ちがわかるようになってきた。以前なら増産して儲かっているから、とても良いことに思えていたが、生産規模を拡大するのはリスクも孕んでいるとわかるようになってきた。

「当分は増産が続くだろうし、紙の需要が急に落ち込むこともないだろうが、どうしたものか。」

商売とは、売れなければ生きていけないが、売れすぎても危険を抱えるものなのである。
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