あぁ、そうですか。

ぷゆぷゆ

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婚約者 クロヴィスside

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高等部の入学を目前に、父の書斎に私は呼ばれた。

話の内容は大体の予想がついている。




「呼んだのは婚約者について、もう一度話しておこうと思ってね」

「はい」

「シャルと結婚をしたいという気持ちに変化はないのかい?」

「ありません」


目を逸らさず言い切ると、父は真剣な表情で私の顔をジッと品定めをするように見ている。

静まり返る部屋に父の溜息を吐く音で、殺伐とした緊張感が解けた。


「姉さんとずっと一緒にいたい。それに、お転婆な姉さんを支えられるのは私だけだと思います」

「シャルは突っ走ってしまうからね…クロヴィスがいてくれれば安心なのは間違いないね」

父は困ったように眉を顰めているが、その顔は姉さんを愛してやまないという気持ちが見てとれる。





7歳の時、父に自分を姉さんの婚約者にして欲しいとお願いしたことが昨日のように思える。

最初は貴族らしくない姉さんに興味が湧いただけだった。決定的だったのはデビュータントで、元兄に対して姉さんが怒ってくれたこと。私は姉さんに対して恋心を抱いたんだ。

それから姉さんの後ろを着いて回った。何に興味を持ち、どんな考えをしているのか、姉さんを知りたかった。


7歳になった時に、急に姉さんに婚約の話がきた。姉さんは未だに自分が貴族令嬢らしくないから婚約の話が来ないと思い込んでいるけど…公爵家の娘だよ?実際は何度も話は来ていた。

焦った私は父のもとへ行き、頭を下げてお願いをした。婚約をさせないで、そして、私と結婚させて欲しいと。今考えるとませた子どもだったな…

父は私に条件を出した。
・私の気持ちが本当か高等部卒業まで様子を見ること
・姉さんが他の人を選んだなら諦めること
・公爵家を継ぐ勉強を厳かにしないこと
これを守れたなら卒業と同時に、姉さんとの結婚も許すと。


それからの私はより一層努力をした。家紋を継ぐための勉強はもちろん、いざという時に姉さんを守るため苦手な剣術も学んだ。






「シャルとクロヴィスに婚約の話が来ているんだけど、いつも通り断ってもいいかい?」

「はい、よろしくお願いします」



私は頭を深く下げた。

父には頭が上がらない。私を養子にしてくれたこと、本当の家族のように大切にしてくれること、姉さんと結婚したいという意思を尊重してくれること。

そして何より、ランベール殿下の婚約者候補に再び選ばれそうになった時、父親ははっきりと断ってくれた。私との約束が既にあるのだと、王家に対して頭を下げてくれたんだ。

そのおかげで、姉さんはランベール殿下の婚約者候補になることもなく、自由気ままに生活ができている。








父の書斎をでて、姉さんの部屋に向かう。姉さんの部屋は土足禁止だから部屋の前で靴を脱ぐことは忘れずに。


「姉さん、入学の準備は進んでいますか?」

「えぇ、アンナがしっかり用意してくれたわ」


姉さんは寝る前に、お茶を飲んでゆっくりしているところだった。

姉さんの着ている服は、一般の貴族令嬢が着るネグリジェではない。前にファスナーがついていて脱ぎ着しやすく、舌はゆるいハーフパンツを着ている。それは、姉さんが作ったパジャマ。

その着心地の良さに驚き、私の分も姉さんにつくってもらっている。



「気分が優れないみたいですけど、何か不安なことでもありましたか?」


姉さんが腰掛けているソファの隣には座り、姉さんの手に自分の手を重ねる。姉さんは表情の変化に気づかれると思っていなかったのか、驚いたように目を見開いている。





「実は…幼い頃から夢を見るの」


そう切り出した姉さんの話の内容に、私は驚きをかすせなかった。

夢の中では姉さんはランベール殿下の婚約者で、殿下と仲のよいヒロインの男爵令嬢に嫉妬しいじめる。そして、最後にはヒロインをいじめた罪で断罪され、処刑もしくは国外追放になるというもの。

言葉を詰まらせながらも、話してくれた。



その話を聞いて、点と点が繋がり線になった。
商業を学んだのも、服屋を経営したのも、剣術を学んだもの、断罪された後のことを考えていたのだと。





「ランベール殿下に対して特に何も思わないけれど、クロヴィスに憎まれるのは…かなり辛いかも」


そう苦しそうに言い、泣きそうな顔で笑う姉さんを私は思わず抱きしめた。


「姉さんを憎むことは絶対にありません、姉さんを脅かす者がいたら私が守ります」

「…クロヴィス、ありがとう」



いつも強気で自由奔放に行動する姉さんの、初めて弱い部分をみた。幼い頃からどれだけの恐怖を味わい、それでも打開しようと努力してきたのか。

この小さな身体にどれほど溜め込んできたのだろう






…姉さんは俺が守る





腕の中に収まってしまうほど小さな姉さんを抱きしめ、そう自分に誓った。




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