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あぁ、入学です
しおりを挟むあぁ、入学です…
目の前に立ちはだかる、豪華な校舎。いや、校舎というより城だわ。
これから起こるであろうゲームのストーリーを想像すると、足が動かない。
ランベール殿下の婚約者ではない
ヒロインをいじめない
悪態もつかない
だから、きっと大丈夫
そう言い聞かせて、うるさく脈を打つ心臓を拳で叩き喝を入れる。
「姉さん」
クロヴィスが手を差し伸べてきた。その手に自分の手を重ねると、クロヴィスが手を引いてエスコートしてくれる。
…昨日の夜、不安に駆られてクロヴィスに全部話しちゃったのよね
醜態を思い出し、クロヴィスの顔を見ることができないでいると、クロヴィスが私の顔を覗き込んできた。
「大丈夫です、私が側にいますから」
「…ありがとう」
手をぎゅっと握ると、クロヴィスも握り返してくれた。そのまま手を繋ぎ、会場へと向かった。
その途中でラルフと合流し、3人で歩いていると。
「やぁ、久しぶりだね」
「「「お目にかかります、ランベール殿下」」」
ランベール殿下が話しかけてきたので、私達は礼をとった。
「学園では身分は関係ないから、楽にしてくれ」
そう言われて、下げていた頭を上げた。
ランベール殿下の隣にはリリアン様がいて、何故か私を睨みつけている。
…リリアン様に敵対されるようなことした覚えないんだけどな
ゲームのストーリーとは違い、ランベール殿下に婚約者はいない。リリアン様が近いと言われているのだけど、ランベール殿下にその気はなさそうに見える。
「店をオープンしたみたいだね、おめでとう」
「ありがとうございます」
「シャルロットは見ていて飽きないね」
…それは褒めているの?
どう反応していいか分からず、曖昧に微笑んでおいた。
ふと、ランベール殿下の後ろに控えているイングリス様と目があった。イングリス様が少しだけ口角を上げて微笑んだので、私とクロヴィスは胸に手を当てて頭を下げた。
ランベール殿下の護衛だから気安く話しかけることはできないけど、一目でも会えるのは嬉しい。
「折角だからみんなで会場へ行こう」
ランベール殿下が言ったことを断れるわけもなく、渋々5人で会場へ入った。視線が集まるのは当然で、居心地が悪い。私の悪口はもちろん、男爵家のラルフを蔑む言葉も聞こえてくる。
「ラルフ…こんなことになってごめん」
「シャルロットのせいじゃないし、気にしてないから。てか、お前も酷い言われようだな」
ラルフにだけ聞こえるように言うと、ラルフは気にしてなさそうに微笑んだ。それにつられて私も笑う。
「きゃあ!!」
という女の子の悲鳴と同時に、背中に何かが突進してきた。急な出来事で体勢を整えることができず、前に転びそうになる。
目を瞑って痛みに耐えようとすると、手を強く引かれ、クロヴィスの腕の中にいた。
「姉さん、大丈夫?」
「うん、ありがとう」
困惑しつつ、クロヴィスにお礼を言う。そして、振り返ると可愛らしいピンクの髪の少女が地面に膝をつき、目に涙を溜めている。
「突き飛ばすなんて…酷いです…」
えっ…
少女は怯えた様子で私を見ていた。周りから見れば、私が少女を突き飛ばしていじめたようにしか見えないだろう。
…この子、もしかしてヒロイン??
急に現れたヒロインに、私は言葉を詰まらせた。
きっと悪役令嬢役の私が何を言っても、ゲーム補正がかかって信じてもらえない。
クロヴィスの服をぎゅっと掴み、恐怖に耐えていると…
「故意にぶつかって来ましたよね、謝罪してください」
「シャルロット様に突き飛ばされて…」
「私がエスコートしていたので姉さんは片手が塞がっており、反対側にはラルフがいました。貴女を突き飛ばすことは不可能です」
「でも!」
「公爵令嬢に怪我させておいて謝罪もなしですか?」
クロヴィスがかなり怒っている。初めて起こっているところを見た。
剣術を極めただけあり、威圧感にヒロインは怯えて言葉を話せないようだ。
「男爵家のマリー・コレット様ですよね。このことは家に抗議させていただきます」
「えっ、ま、待ってください!」
焦った様子でマリー様が呼び止めたけど、クロヴィスは完全に無視をしている。そして、私の背中を優しくさすり、心配をしてくれた。
「姉さん、痛いですか?式の前に保健室へ行きましょう」
「…式に間に合わなくなるから、大丈夫」
思わず涙が出そうになるのを、歯を食いしばって耐えた。誰も信じてくれないと思ったのに、クロヴィスが庇ってくれた。
そのことが嬉しくて、エスコートしてくれているクロヴィスの手をぎゅっと握った。
…ありがとう
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