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プラスアルファ7.8
短杖を探そう
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前回のエピソードで主人公は仕事が増えました。
********************************************
魔法には杖が必要である。
そう答える者は魔法を知らないか、魔法の初心者だ。
何故なら、究極的に言えば杖をもたずとも魔法は使えるのだ。
そして、そもそも魔法における杖とは増幅の手段であると共に魔法使いの証明である。
大雑把に言えば、魔法石だけでも増幅は出来るのだ。
それを何故わざわざ杖という形にするかには諸説ある。
たとえば、杖という形にすることにより魔法石を使った増幅による身体への悪影響を最小限にすることができる……という者もいる。
そもそも杖という形態そのものに魔法的な意味があるという者もいる。
その真実についてはともかく、魔法使いが自分の魔法の威力を高めるのに杖は必須であるというところだけは間違いが無い。
魔法の杖には色々と種類があるが、大きく分類すれば二つ。
すなわち、長杖と短杖である。
長杖とは一般的に「魔法使い」から連想される杖で、木製や金属製、果ては装飾重視の儀礼杖などまである。
どれも大型の魔法石をつけているのが特徴で、魔法の威力を大きく増加することが出来る。
たとえば人類領域の魔法騎士団と呼ばれる部類の者達の場合は、近接戦闘にも耐えるように装飾の少ない金属杖が採用される傾向がある。
逆に研究者としての魔法使いなどの場合は、木製の杖を選ぶ傾向がある。
これが冒険者となると人それぞれだが、自分にあったものを使う者が多い。
さて、では短杖とは何なのか。
基本的な形を述べるならば、小型化した杖である。
長杖と違い基本的に金属製で、先端の魔法石も小さい。
当然、威力の増幅も長杖と比べれば少ない。
そんなあまり良い所が無いように見える短杖だが、意外に魔法熟練者が持っているのには理由がある。
それは、「携帯のし易さ」である。
たとえば、長杖はそれだけで荷物になる。
金属杖であるならば更に重く、色々と邪魔にもなる。
ちょっと魔法を使える程度の剣士とかであれば、その為にわざわざ長杖を持ち歩くのも実に馬鹿らしい話だ。
そういった事情から生まれたのが「短杖」であるが、最初に述べた通り杖が無くとも魔法は使える。
それでも何故、短杖を持つのか。
それは単純に僅かな増幅をあてにしているからという理由ではない。
魔法とは、基本的には魔力を現象に変換する技である。
それは自分の魔力であったり、自然の魔力をも変換するものであったりする。
そうしたものを変換する際に魔法石はその媒体として非常に優秀であり、変換作業を効率化してくれるのである。
故に、小さい魔法石しかついていないような短杖でも、あるのとないのとでは相当に魔法の発動に差が出てくる。
他にも、剣と同時に持っていても邪魔にならないから……という理由もあったりするが、とにかく短杖とは一本あると便利なものなのである。
そして、一度使うともう手放せない類のものでもある。
「……ふーむ……」
故に今、アークヴェルムの街中でイクスラースが短杖を探して歩いているのもまた、当然のことであった。
前に持っていた短杖は人類領域で買った安物であったが、あれはあれで意外に重宝していた。
しかし数日前のギリザリス地下神殿の調査時に壊れてしまったのだが、これは丁度いい機会であると思っていた。
幸いにも、ザダーク王国の鍛冶技術は日々進歩し続けている。
短杖に関しても同様で、様々なものが日々生み出されている。
中には売り出すと同時に売り切れる人気の鍛冶師のものやデザイン重視のものなどもあるが……それほど有名ではない鍛冶師の作品の中にも、キラリと光る逸品があったりもする。
イクスラースはどちらかというと、そういうモノのほうが好みであった。
「赤鉄製に魔法石は青……んー、あまり好みじゃないわね」
持っていた短杖を戻し、イクスラースは次の短杖を手に取る。
イクスラースが今いるのは一軒の武器屋で、丁度店先に短杖が並んでいるのを見て立ち止まったのだ。
「こっちは同じ赤鉄製に魔法石は……紫。もったいないわね、聖銀使えば綺麗でしょうに」
「あー、そいつは仕方ねえわなあ。そこに並んでるのは値段抑えるのを前提にしたモンだからよ」
イクスラースが持っていた短杖から視線を外すと、そこには店員と思わしき狸のビスティアが立っていた。
「値段を抑える……?」
「おう。要は間に合わせでいいから、とにかくそれなりの短杖が一本いるって奴の為のもんさ。ただの安物よりはモノがいいけど……まあ、それだけだな」
なるほど。
確かに安物であれば、鉄などの魔力との親和性の低いものを使う。
赤鉄であれば魔法剣用の剣にも使われるような素材であるし、暗黒大陸ではそれこそ山のようにとれる血鋼を使った比較的廉価な合金でもある。
色が少々赤っぽい事をさておけば、それなりのものであることは疑いようも無い。
「いいモノを探してるなら、奥に血鋼製のもあるぜ」
「血鋼製……? よくアレを加工したわね」
血鋼。
魔力との親和性が非常に高い金属だが、非常に癖が強い。
まず加工が難しく、同等の親和性をもつ聖銀と比べると安定性にも少々難がある。
更には、血のように真っ赤でなんとも好みが分かれる。
そういった点に目を瞑れば最高級の魔法金属なのだが……とにかく、中々に扱いの難しいものだ。
故に、基本的には赤鉄のように他の金属と混ぜて使うのが一般的だ。
「まあな。って言っても俺がやったわけじゃねえけどよ。極上の赤の魔法石もついてる逸品だぜ」
「ふーん」
「まあ、値段も大金貨が七十枚くらいになっちまうんだけど、っておーい」
店先を離れて、イクスラースは次の店を探す。
そもそも、赤鉄にしろ血鋼にしろ、赤はあまりイクスラースの好みではないのだ。
「……あら」
ふと視線を向けると、先程のとは別の武器屋があるのが分かる。
そちらへふらふらと歩いていくと、白猫のビスティアがニカッと笑っていらっしゃい、と叫ぶ。
「ようこそお嬢様、本日は当店に何をお探しに!?」
「短杖を見せて頂けるかしら」
「はいはい。ご予算は如何程で?」
「上限はとりあえず考えてないけど、少なくとも小金貨以上のものを出して頂戴」
その言葉に、白猫のビスティアは満面の笑顔で答えて店の奥へとイクスラースを案内していく。
「えーと、短杖でしたね。小金貨以上となりますと、そうですねえ……杖本体を赤鉄で、かなり上質の魔法石をつけたものとか……あとは少々値が張りますけど聖銀製とかもありますけど」
棚に並べられた短杖を示してみせる白猫のビスティアに、イクスラースは少し感心したように棚を眺める。
そこに並べられているのは、先程の店のものと比べると美しく繊細なデザインの短杖達。
特に、翼を広げたドラゴンらしきものが丸く磨かれた魔法石を咥えているデザインのものが多い。
「へえ、デザインが結構凝ってるのね」
「ええ。今の流行はドラゴンでして。最近、ドラゴンスカイサービスが運行開始間近だっつって、あっちこっちドラゴンが飛んでるでしょう? で、それが優雅でカッコいいってなもんで人気になりまして。これで魔法を使えば気分はドラゴンブレス……と、こうですよ!」
「ふーん。あ、これオルレッドに似てるわね」
適当に聞き流しながら赤い杖を見て……しかし、手に取ることはしない。
人気だか流行だか知らないが、あまりイクスラースの好みではない。
「ありがとう、また後で来るかもしれないから、その時はよろしくね」
「はい、お待ちしてまーす!」
店を出て、イクスラースは小さく溜息をつく。
分かってはいたが、中々好みのものは見つからない。
とはいえ、今回も「それなりのもの」で妥協するつもりはなかった。
前回のような連中がいつ出てくるか分からないし、その対策にヴェルムドールも今頭を悩ませている。
次にそういったものと出会った時の為に、高品質の短杖を確保しておきたい……のだが、だからといってデザインに妥協したくも無い。
先程のドラゴンのデザインなど問題外である。
「うーん……」
どうしたものか、と悩むイクスラースの鼻先に、ふと香ばしい香りが漂ってくる。
タレの串焼きの焼ける香りに、イクスラースのお腹がきゅう、と実に可愛らしい音を立てる。
香りの漂ってくる先を探してみると……そこには、丁度昼のラッシュに向けて焼き始めている串焼き屋が見えた。
「……たまには串焼きもいいわよね」
そんな事を言いながら、ふらふらとイクスラースは串焼きの店先へと行き……そのカウンターの前まで行くと、店の主人に向け人差し指を一本立ててみせる。
「タレの串焼き一本、いただけるかしら」
「すみません、塩の串焼き一本って出来ます?」
ほぼ同時のその声に、イクスラースは隣に目を向ける。
そうすると、隣の青年もイクスラースに目を向けているのが分かった。
青い髪に青い目……どことなく少年のような少女のような、そんな幼さを残した顔立ちの青年はイクスラースを見て、ああと声をあげる。
「イクスラースさんでしたよね。こんにちは」
「……えっと……東方軍のルモン、だったかしら」
「はい、覚えていてくださって光栄です」
そう、確かサイラス帝国との交渉団の一人として選ばれていた魔人だったな……とイクスラースは思いだす。
いつも柔らかい笑顔を浮かべて人当たりもいいらしいが、なんとなくイクスラースは苦手だった。
そもそも、あまり話したことも無い相手にそういう感情を抱くのは間違っているとは分かっているので、イクスラースもいつも通りの笑顔を浮かべる。
「こんな中央にいるってことは……今日は休みなのかしら」
「ええ。久々の休みなので、こっちにまで足を伸ばしてきちゃいました。イクスラースさんは?」
「買い物よ」
そう答えると、ルモンは興味深そうな目つきに変わる。
「へえ、何を探してらっしゃるんですか?」
「貴方に関係あるのかしら」
「あはは、きついですねえ。お役に立てるかもしれないじゃないですか」
そんな事を言うルモンに、どう答えたものか……と。
イクスラースは唇に指をあてて考え始めた。
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魔法には杖が必要である。
そう答える者は魔法を知らないか、魔法の初心者だ。
何故なら、究極的に言えば杖をもたずとも魔法は使えるのだ。
そして、そもそも魔法における杖とは増幅の手段であると共に魔法使いの証明である。
大雑把に言えば、魔法石だけでも増幅は出来るのだ。
それを何故わざわざ杖という形にするかには諸説ある。
たとえば、杖という形にすることにより魔法石を使った増幅による身体への悪影響を最小限にすることができる……という者もいる。
そもそも杖という形態そのものに魔法的な意味があるという者もいる。
その真実についてはともかく、魔法使いが自分の魔法の威力を高めるのに杖は必須であるというところだけは間違いが無い。
魔法の杖には色々と種類があるが、大きく分類すれば二つ。
すなわち、長杖と短杖である。
長杖とは一般的に「魔法使い」から連想される杖で、木製や金属製、果ては装飾重視の儀礼杖などまである。
どれも大型の魔法石をつけているのが特徴で、魔法の威力を大きく増加することが出来る。
たとえば人類領域の魔法騎士団と呼ばれる部類の者達の場合は、近接戦闘にも耐えるように装飾の少ない金属杖が採用される傾向がある。
逆に研究者としての魔法使いなどの場合は、木製の杖を選ぶ傾向がある。
これが冒険者となると人それぞれだが、自分にあったものを使う者が多い。
さて、では短杖とは何なのか。
基本的な形を述べるならば、小型化した杖である。
長杖と違い基本的に金属製で、先端の魔法石も小さい。
当然、威力の増幅も長杖と比べれば少ない。
そんなあまり良い所が無いように見える短杖だが、意外に魔法熟練者が持っているのには理由がある。
それは、「携帯のし易さ」である。
たとえば、長杖はそれだけで荷物になる。
金属杖であるならば更に重く、色々と邪魔にもなる。
ちょっと魔法を使える程度の剣士とかであれば、その為にわざわざ長杖を持ち歩くのも実に馬鹿らしい話だ。
そういった事情から生まれたのが「短杖」であるが、最初に述べた通り杖が無くとも魔法は使える。
それでも何故、短杖を持つのか。
それは単純に僅かな増幅をあてにしているからという理由ではない。
魔法とは、基本的には魔力を現象に変換する技である。
それは自分の魔力であったり、自然の魔力をも変換するものであったりする。
そうしたものを変換する際に魔法石はその媒体として非常に優秀であり、変換作業を効率化してくれるのである。
故に、小さい魔法石しかついていないような短杖でも、あるのとないのとでは相当に魔法の発動に差が出てくる。
他にも、剣と同時に持っていても邪魔にならないから……という理由もあったりするが、とにかく短杖とは一本あると便利なものなのである。
そして、一度使うともう手放せない類のものでもある。
「……ふーむ……」
故に今、アークヴェルムの街中でイクスラースが短杖を探して歩いているのもまた、当然のことであった。
前に持っていた短杖は人類領域で買った安物であったが、あれはあれで意外に重宝していた。
しかし数日前のギリザリス地下神殿の調査時に壊れてしまったのだが、これは丁度いい機会であると思っていた。
幸いにも、ザダーク王国の鍛冶技術は日々進歩し続けている。
短杖に関しても同様で、様々なものが日々生み出されている。
中には売り出すと同時に売り切れる人気の鍛冶師のものやデザイン重視のものなどもあるが……それほど有名ではない鍛冶師の作品の中にも、キラリと光る逸品があったりもする。
イクスラースはどちらかというと、そういうモノのほうが好みであった。
「赤鉄製に魔法石は青……んー、あまり好みじゃないわね」
持っていた短杖を戻し、イクスラースは次の短杖を手に取る。
イクスラースが今いるのは一軒の武器屋で、丁度店先に短杖が並んでいるのを見て立ち止まったのだ。
「こっちは同じ赤鉄製に魔法石は……紫。もったいないわね、聖銀使えば綺麗でしょうに」
「あー、そいつは仕方ねえわなあ。そこに並んでるのは値段抑えるのを前提にしたモンだからよ」
イクスラースが持っていた短杖から視線を外すと、そこには店員と思わしき狸のビスティアが立っていた。
「値段を抑える……?」
「おう。要は間に合わせでいいから、とにかくそれなりの短杖が一本いるって奴の為のもんさ。ただの安物よりはモノがいいけど……まあ、それだけだな」
なるほど。
確かに安物であれば、鉄などの魔力との親和性の低いものを使う。
赤鉄であれば魔法剣用の剣にも使われるような素材であるし、暗黒大陸ではそれこそ山のようにとれる血鋼を使った比較的廉価な合金でもある。
色が少々赤っぽい事をさておけば、それなりのものであることは疑いようも無い。
「いいモノを探してるなら、奥に血鋼製のもあるぜ」
「血鋼製……? よくアレを加工したわね」
血鋼。
魔力との親和性が非常に高い金属だが、非常に癖が強い。
まず加工が難しく、同等の親和性をもつ聖銀と比べると安定性にも少々難がある。
更には、血のように真っ赤でなんとも好みが分かれる。
そういった点に目を瞑れば最高級の魔法金属なのだが……とにかく、中々に扱いの難しいものだ。
故に、基本的には赤鉄のように他の金属と混ぜて使うのが一般的だ。
「まあな。って言っても俺がやったわけじゃねえけどよ。極上の赤の魔法石もついてる逸品だぜ」
「ふーん」
「まあ、値段も大金貨が七十枚くらいになっちまうんだけど、っておーい」
店先を離れて、イクスラースは次の店を探す。
そもそも、赤鉄にしろ血鋼にしろ、赤はあまりイクスラースの好みではないのだ。
「……あら」
ふと視線を向けると、先程のとは別の武器屋があるのが分かる。
そちらへふらふらと歩いていくと、白猫のビスティアがニカッと笑っていらっしゃい、と叫ぶ。
「ようこそお嬢様、本日は当店に何をお探しに!?」
「短杖を見せて頂けるかしら」
「はいはい。ご予算は如何程で?」
「上限はとりあえず考えてないけど、少なくとも小金貨以上のものを出して頂戴」
その言葉に、白猫のビスティアは満面の笑顔で答えて店の奥へとイクスラースを案内していく。
「えーと、短杖でしたね。小金貨以上となりますと、そうですねえ……杖本体を赤鉄で、かなり上質の魔法石をつけたものとか……あとは少々値が張りますけど聖銀製とかもありますけど」
棚に並べられた短杖を示してみせる白猫のビスティアに、イクスラースは少し感心したように棚を眺める。
そこに並べられているのは、先程の店のものと比べると美しく繊細なデザインの短杖達。
特に、翼を広げたドラゴンらしきものが丸く磨かれた魔法石を咥えているデザインのものが多い。
「へえ、デザインが結構凝ってるのね」
「ええ。今の流行はドラゴンでして。最近、ドラゴンスカイサービスが運行開始間近だっつって、あっちこっちドラゴンが飛んでるでしょう? で、それが優雅でカッコいいってなもんで人気になりまして。これで魔法を使えば気分はドラゴンブレス……と、こうですよ!」
「ふーん。あ、これオルレッドに似てるわね」
適当に聞き流しながら赤い杖を見て……しかし、手に取ることはしない。
人気だか流行だか知らないが、あまりイクスラースの好みではない。
「ありがとう、また後で来るかもしれないから、その時はよろしくね」
「はい、お待ちしてまーす!」
店を出て、イクスラースは小さく溜息をつく。
分かってはいたが、中々好みのものは見つからない。
とはいえ、今回も「それなりのもの」で妥協するつもりはなかった。
前回のような連中がいつ出てくるか分からないし、その対策にヴェルムドールも今頭を悩ませている。
次にそういったものと出会った時の為に、高品質の短杖を確保しておきたい……のだが、だからといってデザインに妥協したくも無い。
先程のドラゴンのデザインなど問題外である。
「うーん……」
どうしたものか、と悩むイクスラースの鼻先に、ふと香ばしい香りが漂ってくる。
タレの串焼きの焼ける香りに、イクスラースのお腹がきゅう、と実に可愛らしい音を立てる。
香りの漂ってくる先を探してみると……そこには、丁度昼のラッシュに向けて焼き始めている串焼き屋が見えた。
「……たまには串焼きもいいわよね」
そんな事を言いながら、ふらふらとイクスラースは串焼きの店先へと行き……そのカウンターの前まで行くと、店の主人に向け人差し指を一本立ててみせる。
「タレの串焼き一本、いただけるかしら」
「すみません、塩の串焼き一本って出来ます?」
ほぼ同時のその声に、イクスラースは隣に目を向ける。
そうすると、隣の青年もイクスラースに目を向けているのが分かった。
青い髪に青い目……どことなく少年のような少女のような、そんな幼さを残した顔立ちの青年はイクスラースを見て、ああと声をあげる。
「イクスラースさんでしたよね。こんにちは」
「……えっと……東方軍のルモン、だったかしら」
「はい、覚えていてくださって光栄です」
そう、確かサイラス帝国との交渉団の一人として選ばれていた魔人だったな……とイクスラースは思いだす。
いつも柔らかい笑顔を浮かべて人当たりもいいらしいが、なんとなくイクスラースは苦手だった。
そもそも、あまり話したことも無い相手にそういう感情を抱くのは間違っているとは分かっているので、イクスラースもいつも通りの笑顔を浮かべる。
「こんな中央にいるってことは……今日は休みなのかしら」
「ええ。久々の休みなので、こっちにまで足を伸ばしてきちゃいました。イクスラースさんは?」
「買い物よ」
そう答えると、ルモンは興味深そうな目つきに変わる。
「へえ、何を探してらっしゃるんですか?」
「貴方に関係あるのかしら」
「あはは、きついですねえ。お役に立てるかもしれないじゃないですか」
そんな事を言うルモンに、どう答えたものか……と。
イクスラースは唇に指をあてて考え始めた。
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