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魔剣技16
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おかしい。こんなに長く続くエピソードじゃなかったはずなのに。
これがダブル勇者の力……?
********************************************
カインの光の魔法剣が、影狼を斬り裂く。
周囲を囲む影狼達は一斉に襲ってくることはせず、カインの周囲をぐるぐると回っている。
狙いをつけさせないようにしているのは確実だが、少々慎重すぎるようにも思えるのはカインの攻撃方法を探っているのかもしれないと想像する。
影狼達の一番背後に陣取っているリーダーと思わしき個体のステータスは、すでにカインは把握済だ。
名前:なし
種族:影将狼
ランク:D
職業:なし
装備:
特になし
技能:
???の欠片
影擬態
短距離転移(限定条件)
眷属支配
このステータスから分かる事は、この影狼のリーダーはただのモンスターから明確な進化をしているということだ。
そもそもモンスターとは人類に敵対する生命体の総称だが、人類側では明確な「分類」というものは存在しない。
たとえばアースワームという大地の神アトラグスの加護を受けた虫型の生命体がいるが、これもかつてはモンスターと分類されていたほどである。
要は魔族というほど怖くは無いが人類の敵、というものを「モンスター」と分類しているのに過ぎないのだが、これを「ステータス確認」を通して見ると少々違ってくる。
たとえば、動物……野良猫の場合ステータスはこのような感じである。
名前:なし
種族:猫
ランク:G
職業:なし
装備:
特になし
技能:
なし
飼い猫の場合は名前が更新されたりするが……それはともかく。
種族として確立されている場合、「種族」は必ずその名前となる。
では「魔物」と表記されている場合はどうなのか。
それは、「分類できない何か」ということである。
カインはそれこそが本当の「モンスター」であると考えている。
恐らくは種族として確立しないような「生まれ方」をするのだろうと想像しているが、そこまでの確信を抱くには至っていない。
……さて、これを前提においた場合、あの「リーダー」は他の「影狼」とは違うということになる。
それともあるいは、あの影将狼こそが最初の種族としての「影狼」であるのかもしれない。
だが、問題はそこではない。
問題なのは「???の欠片」なる技能のことだ。
それが如何なるものかは分からないが、嫌な予感しかしない。
だからこそ、速攻で片をつけるべきだとカインは考え……そこにやってきたサンクリード達の気配をとらえ、叫ぶ。
「サンクリードさん……! お約束のもの、今お見せします!」
返答の代わりに飛んできた光撃が、カインの前方の影狼を消し飛ばす。
影狼達の注意がサンクリード達へと一瞬向いたその隙を狙い、カインは光の魔法剣を一度解除する。
そうして、剣の中に大量の光の魔力を注ぎ込む。
それは、光の魔法剣の手順と同じ。
ただし、注ぎ込む量は多く……そして、光の魔法剣として発動させてはいない。
硬剣ティルノークの魔法石が白く輝き始め……やがてその光が、強烈なものへと変わっていく。
「コツは、たった一つ……一撃に、全力を込めることです!」
カインは剣を構え、影将狼へと向けて走り出す。
当然のようにそのカインの行く手を影狼達が遮ろうとするが、それを的確にサンクリードの魔法が砕いていく。
「ガアアアアア!」
影将狼の号令に隠れて機を伺っていた影狼達が出現するが、カインは一切構わない。
足元に現れた影狼の頭を踏みつけ、跳ぶ。
剣の魔法石に溜め込んだ光の魔力を、カインは解き放つ。
イメージは、一つ。
光の魔法の一つ……収束光撃。
圧縮した光の魔力の一撃を、「剣技」で再現する。
「ギオ……」
カインの剣が、激しく光り輝く。
真昼の光をも脆弱な光と化すかのような輝きを携え、カインは跳んでいる。
「スラァァァァッシュ!!」
光の剣と化したカインの剣の一撃を受け、影将狼の頭部が弾け跳ぶかのように消失する。
そう、それは酷く単純な真理だ。
普通では勝てない相手でも、全力の一撃であれば勝てる。
たったそれだけを再現したのが、魔剣技なのだ。
そして当然、それを放った直後の剣は一時的に普通の剣と化す。
故に、怒りに満ちた影狼達が一斉にカインに襲いかかろうとし……しかし、速攻で距離を詰めたサンクリードによってその全てが数瞬後には物言わぬ死骸と化す。
「う、うわあっ!?」
着地点にいたサンクリードを避け切れなかったカインをサンクリードは受け止め、ニヤリと笑う。
「なるほど、確かに真理だ。だが普通はあんな技、剣の負担を考えれば使わん。実際には剣の耐えられる限界まで魔力を溜め込み放つ技……といったところか?」
「そ、そうですね。もっと言えば剣技と魔法の合わせ技っていう感じらしいんですけどね。かの勇者リューヤもいてっ!」
地面に放り出されたカインは抗議の声をあげようとして、すぐに異変に気付く。
「……なんだアレ」
先程、頭を消し飛ばしたはずの影将狼。
ゆっくりと立ち上がったその首の無い頭部から、2つの頭が生えてきているのだ。
離れた場所から見ていたシュナが顔を蒼白にしているが、サンクリードは面白そうに笑みを浮かべる。
「なるほど、親切なことだ。どうやら俺の練習台になってくれるらしいぞ?」
サンクリードはそう言って硬剣ライザノークをカチャリと鳴らす。
その魔法石は、すでに薄く……緑色に輝き始めていた。
これがダブル勇者の力……?
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カインの光の魔法剣が、影狼を斬り裂く。
周囲を囲む影狼達は一斉に襲ってくることはせず、カインの周囲をぐるぐると回っている。
狙いをつけさせないようにしているのは確実だが、少々慎重すぎるようにも思えるのはカインの攻撃方法を探っているのかもしれないと想像する。
影狼達の一番背後に陣取っているリーダーと思わしき個体のステータスは、すでにカインは把握済だ。
名前:なし
種族:影将狼
ランク:D
職業:なし
装備:
特になし
技能:
???の欠片
影擬態
短距離転移(限定条件)
眷属支配
このステータスから分かる事は、この影狼のリーダーはただのモンスターから明確な進化をしているということだ。
そもそもモンスターとは人類に敵対する生命体の総称だが、人類側では明確な「分類」というものは存在しない。
たとえばアースワームという大地の神アトラグスの加護を受けた虫型の生命体がいるが、これもかつてはモンスターと分類されていたほどである。
要は魔族というほど怖くは無いが人類の敵、というものを「モンスター」と分類しているのに過ぎないのだが、これを「ステータス確認」を通して見ると少々違ってくる。
たとえば、動物……野良猫の場合ステータスはこのような感じである。
名前:なし
種族:猫
ランク:G
職業:なし
装備:
特になし
技能:
なし
飼い猫の場合は名前が更新されたりするが……それはともかく。
種族として確立されている場合、「種族」は必ずその名前となる。
では「魔物」と表記されている場合はどうなのか。
それは、「分類できない何か」ということである。
カインはそれこそが本当の「モンスター」であると考えている。
恐らくは種族として確立しないような「生まれ方」をするのだろうと想像しているが、そこまでの確信を抱くには至っていない。
……さて、これを前提においた場合、あの「リーダー」は他の「影狼」とは違うということになる。
それともあるいは、あの影将狼こそが最初の種族としての「影狼」であるのかもしれない。
だが、問題はそこではない。
問題なのは「???の欠片」なる技能のことだ。
それが如何なるものかは分からないが、嫌な予感しかしない。
だからこそ、速攻で片をつけるべきだとカインは考え……そこにやってきたサンクリード達の気配をとらえ、叫ぶ。
「サンクリードさん……! お約束のもの、今お見せします!」
返答の代わりに飛んできた光撃が、カインの前方の影狼を消し飛ばす。
影狼達の注意がサンクリード達へと一瞬向いたその隙を狙い、カインは光の魔法剣を一度解除する。
そうして、剣の中に大量の光の魔力を注ぎ込む。
それは、光の魔法剣の手順と同じ。
ただし、注ぎ込む量は多く……そして、光の魔法剣として発動させてはいない。
硬剣ティルノークの魔法石が白く輝き始め……やがてその光が、強烈なものへと変わっていく。
「コツは、たった一つ……一撃に、全力を込めることです!」
カインは剣を構え、影将狼へと向けて走り出す。
当然のようにそのカインの行く手を影狼達が遮ろうとするが、それを的確にサンクリードの魔法が砕いていく。
「ガアアアアア!」
影将狼の号令に隠れて機を伺っていた影狼達が出現するが、カインは一切構わない。
足元に現れた影狼の頭を踏みつけ、跳ぶ。
剣の魔法石に溜め込んだ光の魔力を、カインは解き放つ。
イメージは、一つ。
光の魔法の一つ……収束光撃。
圧縮した光の魔力の一撃を、「剣技」で再現する。
「ギオ……」
カインの剣が、激しく光り輝く。
真昼の光をも脆弱な光と化すかのような輝きを携え、カインは跳んでいる。
「スラァァァァッシュ!!」
光の剣と化したカインの剣の一撃を受け、影将狼の頭部が弾け跳ぶかのように消失する。
そう、それは酷く単純な真理だ。
普通では勝てない相手でも、全力の一撃であれば勝てる。
たったそれだけを再現したのが、魔剣技なのだ。
そして当然、それを放った直後の剣は一時的に普通の剣と化す。
故に、怒りに満ちた影狼達が一斉にカインに襲いかかろうとし……しかし、速攻で距離を詰めたサンクリードによってその全てが数瞬後には物言わぬ死骸と化す。
「う、うわあっ!?」
着地点にいたサンクリードを避け切れなかったカインをサンクリードは受け止め、ニヤリと笑う。
「なるほど、確かに真理だ。だが普通はあんな技、剣の負担を考えれば使わん。実際には剣の耐えられる限界まで魔力を溜め込み放つ技……といったところか?」
「そ、そうですね。もっと言えば剣技と魔法の合わせ技っていう感じらしいんですけどね。かの勇者リューヤもいてっ!」
地面に放り出されたカインは抗議の声をあげようとして、すぐに異変に気付く。
「……なんだアレ」
先程、頭を消し飛ばしたはずの影将狼。
ゆっくりと立ち上がったその首の無い頭部から、2つの頭が生えてきているのだ。
離れた場所から見ていたシュナが顔を蒼白にしているが、サンクリードは面白そうに笑みを浮かべる。
「なるほど、親切なことだ。どうやら俺の練習台になってくれるらしいぞ?」
サンクリードはそう言って硬剣ライザノークをカチャリと鳴らす。
その魔法石は、すでに薄く……緑色に輝き始めていた。
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