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連載
歪み2
しおりを挟む「……な、んだあ? 此処は」
「ふうー……間に合いました」
そこは、神殿の大広間のような場所。
ひたすらに高い天井と、部屋の周りを囲む壁。
天井にも壁にも無数の窓が等間隔で配置されており、どこから流れ込むのかは不明だが燦々と光が降り注いでいる。
しかしながら、窓から見えるのは差し込む光の眩さのみで風景などは一切無い。
この場所が何かしらの特殊な空間であるということを再認識させる光景ではあるが……この場所をさらに異質足らしめているのは、最奥の祭壇であろうか。
何を奉っているのかも分からぬこの不可思議な場所を見回し、ラクターは自分を引っ張り込んだ犬のような耳を頭に生やした女の胸倉を掴んで持ち上げる。
「わ、わわわっ!? 落ち着いてください!」
「俺は落ち着いてる。お前は誰だ、此処は何処だ。目的は何だ」
「答えますから! だからまずは……えいっ!」
「うおっ!」
ラクターの目の前で光が弾け、力が緩んだ隙に女は無理矢理服の掴まれた部分を引き剥がして跳躍する。
そのままラクターの正面に着地した女は、ラクターの腕の届かないギリギリの位置に立って一礼する。
「お初にお目にかかります。私は光の神殿騎士、ルビア。まずはご説明もなくこの場にお連れしたことをお詫びいたします」
「光の神殿騎士ィ?」
そういえばそんなものと会ったとヴェルムドールが言っていただろうか、とラクターは考える。
しかし、そんなものにこの場に招待される理由が無い。
何より、どうしてこのタイミングなのか。
「色々と疑問もお有りでしょうが、まずは端的に理由から説明させていただきます」
ルビアはこほんと咳払いすると、ラクターをビシリと指差す。
「貴方のせい……だけでもないのですが、色々世界がヤバいです。自重してください」
「ああ?」
何を言っているんだと言いたげなラクターの視線を感じ取ったのか、ルビアはすいと指を下ろす。
そうしてパンと手を叩くと、床から何処かの町を模した模型のようなものが生えてくる。
「……エルアークの模型か?」
「ご名答。さて、ちょっと質問なのですが……このエルアークの町の中で、光の大神殿への道を開くことの出来る場所は何処かご存知ですか?」
ちなみにさっき貴方が居た場所はここですね、と言ってルビアは町の一角を指し示す。
中心部から少し離れてはいたが、それは充分「中央」と言ってよい場所だろう。
しかし、ラクターの興味は其処には無い。
「その質問に何の意味がある。早く俺を戻せ」
「できません。質問にお答えください」
「……ぶっ飛ばして無理矢理やらせてもいいんだぜ?」
「ただではぶっ飛ばされてあげませんし、この場にずっと残りたいのであればそうするとよろしいかと」
その言葉に、ラクターはチッと舌打ちをする。
確かに神の関係者相手では、少々分が悪い。
この場を抜け出す方法すらも分からないのだ。
ならば、多少話に付き合う他無いのだろう。
ラクターはエルアークの模型を見下ろし、少し考える。
確かヴェルムドール達が光の大神殿に向かったのは、城からだと聞いた。
そして今回の「菓子店」が中央に近い場所。
ならば。
「……中心部か」
ラクターが適当な範囲を指で示すと、その示した範囲の色がパッと切り替わる。
それをルビアは見下ろすと、ふむふむと頷いてみせる。
「正解はですね……こうです」
ルビアが再び手を叩くと、エルアークの模型全体の色が切り替わる。
それが示す意味を理解し、ラクターはルビアを睨み付ける。
「……つまらねえ答えだな。つまりエルアークはお前等の庭だってことだろ?」
光の神ライドルグを信仰するキャナル王国の首都の何処に光の大神殿への道が開いたところで、別に驚くべきことでも何でもない。
そんなことをわざわざ説明して何がしたいのか。
そう考え文句を言おうとするラクターに、ルビアが手を叩く音が重なる。
すると模型が消え、何もない床が残る。
「本来は、そうではないんですよ」
「あ?」
「大神殿への道なんていうものは、そうポンポン繋がっていいものではないんです。繋がるということは、それだけ魔力が濃いってことなんですから」
言っている意味が分からずラクターは首をかしげ……しかし、一つの事実に思い当たる。
極光殲陣。
そう呼ばれる魔法がエルアークで発動したのは、つい最近のことだ。
光魔法の極致とも言える極光殲陣は、エルアークを余さず膨大な光の魔力で包んだという。
「そうか。極光殲陣とかいうアレか」
「その通りです」
ルビアは頷くと、指を一本立ててみせる。
「極光殲陣は遠くにいるライドルグ様が何をおいても急行せねばならぬ程に強力な光の魔法です。具体的には、使えばしばらくの間は空気中の光の魔力の濃度が異常なレベルで高まります」
「それがどうした? 光を神聖視する場所で光の魔法が使いやすくなって何の害がある」
ラクターの言葉に、ルビアは静かに首を横に振る。
「そう簡単な話ではありません。私達が未だエルアークを注視しているのは、極光殲陣による影響を調整し見守る為なのですから」
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