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連載
ミキシングメモリー9
しおりを挟む「ヴェルムドール……貴様、それでも魔族か」
「ふむ」
クロードの怒りに満ちた台詞を、ヴェルムドールは全く意に介していない風に受け流す。
コツンコツンと歩くその姿は一見無防備にも見え、その手は剣に手もかけていない。
クロードから見てみれば、隙だらけのその姿。
いつでも殺せる獲物にしか見えないはずのその姿からは、しかし……殺せるイメージが全く浮かんでこない。
ヴェルムドールはそのままクロードとイクスラースの前に立つと、イクスラースをぐいと手元に引き寄せる。
「ちょっ……」
「俺を愚弄するのか、などと言わなかったのは評価しよう」
イクスラースの抗議の声をスルーしてヴェルムドールが言うと、クロードはヴェルムドールを殺意を込めた目で睨み付ける。
「……イクスラース様を返してもらおうか」
「別にイクスラースはお前のものではなかろう」
「貴方のものでもないわよ」
イクスラースから即座に入るツッコミに、それもそうだとヴェルムドールは小さく笑う。
その光景が気に入らなかったのか、クロードの纏う怒気が膨れ上がる。
「ふざけているのか、ヴェルムドール」
「ふざけもするだろう。こんな茶番に付き合わされる身にもなれ」
ヴェルムドールが答えると同時に、クロードの剣が振るわれる。
首を狙った横薙ぎの一閃はしかし、ヴェルムドールの物理障壁によって弾かれる。
「なんだ、気に障ったのか? だが事実だろう」
「茶番だと? くだらぬ人類の生贄にされた魔族達の嘆きが貴様には聞こえんのか」
「俺が聞くべきは現在であり、俺が見るべきは未来だ」
未だ武器に触れすらしないヴェルムドールに、クロードは軽く舌打ちをする。
そんなクロードを冷たい目で見つめながら、ヴェルムドールは続ける。
「お前の主人がイクスラースを何に利用するつもりかは知らんが」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
「……なんだ」
イクスラースの慌てた声に、ヴェルムドールは台詞を中断してイクスラースを見下ろす。
「クロードは私の騎士よ!?」
「以前はな。今は違うだろう?」
そう言うと、ヴェルムドールはクロードへ問いかけるように視線を向ける。
クロードは答えず、剣を握る手を微かに動かす。
すぐに斬りかかれる体勢に移行するかのようなその姿に、イクスラースは息を呑み……ヴェルムドールは、ふんと鼻を鳴らす。
「……これは受け売りなんだがな。如何なる理由があろうと、主人に剣を向ける騎士はいないそうだ。つまり、奴の忠誠はイクスラース、すでにお前には無いという事だ」
「で、でも……」
「そんな奴が忠臣面してイクスラースが必要だと言う。おかしな話じゃないか。矛盾しているだろう? 必要ならば何故剣を向ける。まるで……」
まるで多少の怪我など構わんと言っているようだ、とヴェルムドールは言い放つ。
そう、クロードの行動は矛盾している。
イクスラースに忠誠を誓っているのであれば、「力尽く」という手段はまずとらない。
ましてや、剣など絶対に抜かない。
それは「敵」に向けるものであり、「主人」に向けるものではないからだ。
「問題は結局そこに集約される。怪我をさせても構わないと思っていた。その理由は何処にある? 怪我をさせても理解してもらえると思っていた? 違うな。より理解は遠くなる。ならば理由は何処にある」
ヴェルムドールの手の中で、イクスラースは不安げにヴェルムドールを見上げ……クロードは、ヴェルムドールの放つ気配に気圧され一歩下がる。
「答えは簡単だ。怪我をしてもよかったんだ。恐らくはイクスラースという存在自体が重要だったんだろう。最悪、死んでも構わないと思っていた可能性が高い」
「ふざけるな、俺はそんなことは!」
「お前は思っていないかもしれない。だが、お前の主人はそう思っただろうな。死んだはずのお前をどうにかしたんだ。イクスラースが死んでもどうにかしただろうさ」
ヴェルムドールの台詞に、クロードは言葉に詰まる。
「だが問題は、どうやって蘇らせたかだ」
ヴェルムドールの瞳に、魔力が集中する。
赤い瞳が輝き、クロードの全てを見透かさんとする。
「……見せてもらうぞ」
名前:クロード
種族:魔人
ランク:A
職業:騎士
装備:
斬剣ルーテリス
技能:
黒鎧
剣技A
形態変化
ヴェルムドールがステータス確認魔法を発動するとクロードの能力がヴェルムドールの視界に表示されるが……見たところ、特におかしなところはない。
特殊な技能もあるにはあるが、「おかしい」という程でもない。
言うなれば、普通の魔人である。
……勿論、ステータス確認魔法とて万能ではない。
本人が隠そうとすれば隠されることもあるし、これだけで全てを理解できたとするのは早計だ。
だが、少なくとも「クロードの姿をしているだけの偽者」という可能性はなくなったとみていいだろう。
「闇よっ!」
ステータスを覗かれた事に気付いたクロードが闇の魔法剣を発動し、ヴェルムドールに斬りかかる。
だが……そこに一瞬にして割り込んだイチカの盾がそれを弾き返す。
「痴れ者が……下がりなさい」
クロードの体勢が崩れた一瞬の隙を狙い、イチカの盾がクロードを弾き飛ばす。
「ぐっ……い、何時の間に!」
「死になさい」
即座に剣を引き抜き追撃をかけようとするイチカ。
しかし、まだ体勢を立て直しきっていないクロードの腕が剣に引き摺られるかのようにグイと持ち上がり……剣から、銀色の細い刃のようなものが乱射された。
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