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連載
そして、歩き出す事を決めた3
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書籍版5巻、発売中です。
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霊王国の遺産。
それは詐欺師が三回に一回は語る言葉だと言われるくらいに有名な、眉唾の代名詞である。
曰く、霊王国の強力な魔力を秘めた杯があり、それに溜まる水を飲めば不死となるらしい。
曰く、霊王に代々受け継がれる杖があり、それがあればエレメント達が従うらしい。
曰く、霊王国にのみ伝わる強力な武器がある。
まあ、様々であるが「それが手に入りそうだ」とか「手がかりをもっている」とか囁くのが常套手段だろうか。
それっぽく偽装したガラクタを「これが手がかりだ」だの「今は力が失われているが」などと適当な事を囁いて売りつける者もいる。
ちょっと考えてみれば物質文明ではないエレメント達にそんなものがあったかどうか疑問に思えるはずなのだが、他の人類に少しでも歩み寄ろうとエレメント達が街や王宮やらを作ったこともあるせいで「そういうものもあるかもしれない」と思ってしまう者も後をたたない。
実際、「霊王国の遺産」は創作英雄譚で矛盾やら力不足やらを解決するのに非常に便利で、いざという時には「霊王国の遺産」が登場して解決したりする。
その中でも一番人気で有名で使い回されている創作遺産が「霊王剣セレスティール」で、天を裂いたり地を砕いたり海を裂いたり鋼の巨人を縦に真っ二つにしたり、果ては所有者が空を飛んだりとやりたい放題である。
きっとイクスラースが聞いたら微妙な顔をするだろうが、それはさておき。
まあ、とにかくそれ程までに「霊王国の遺産」とは人の心を動かすものなのだ。
いわば「僕の考えた最強の道具」の象徴にもなっている「霊王国の遺産」だが、その守護者なる者がいたとすればどうなるか。
当然だが、定住など出来るはずも無い。
一つの場所に長く留まることすら危ういだろう。
権力者に守護を求めるのとて、安心とはいえない。
その権力者が霊王国の遺産という宝物を前に平静でいられるという保証も無いし、心変わりしないとも限らない。
何より、その権力者の保護が絶対の保護というわけでもない。
……ならば、なるほど。
確かに放浪するしかないだろう。
そんな物を「持っているかもしれない」と思わせただけで、命を狙われる対象に充分になりうるのだから。
「一つ、疑問なのですが」
ヴェルムドールの斜め後ろの位置で待機していたイチカが、口を開く。
「その闇の巫女なる人物は、どうしてそれを名乗るのですか? 名乗らなければ安全でいられるでしょうに」
「ああ、確かにな。わざわざ名乗る事によるメリットが感じられない。何か理由があるのか?」
イチカの当然の指摘に、ヴェルムドールも同意する。
わざわざ「闇の巫女」だとか名乗らなければ、霊王国との関連性も疑われずに済むだろう。
ひょっとしたら持っているかも……などという邪推すらさせず、「ただの旅のシルフィド」ですむはずだ。
そして何より、「闇」を信仰する者は今でも少数派だ。
闇魔法を使う者も数え切れる程にしかおらず、それもほんの少しの簡単なものでしかない。
それだけでも、「闇の巫女」を名乗るのはリスクになるのだ。
何しろ、霊王国の遺産の話を抜きにしても闇魔法の手がかりと思われるかもしれないのだから。
「……それは彼女の誇りと、使命故と聞いています」
具体的なところは、ルーティも知らない。
しかしレルスアレナ曰く、そう名乗る事に意味があるらしい。
結局彼女とルーティ達の道は交わらず、彼女の真意についても知る事は無かった。
何かを探しているというレルスアレナは、その何かが何であるかすらもルーティ達に語ることは無かったのだから。
「とにかく、そのレルスアレナとかいう闇の巫女を探せばいいんだな」
それならば簡単だろう。
各国に散ったジオル森王国の諜報部隊に指令を出し、「闇の巫女」とやらの情報について集めればいい。
流石に中小国に関しては手を伸ばしきれていないが、四大国に関してはほぼ満遍なく散っている。
勿論、すぐとはいかないだろうが……。
「それなんですが」
早速指令を出そうかと考えているヴェルムドールに、ルーティが申し訳無さそうに呟く。
「実は、リューヤが彼女に「その目的とかを果たしたいなら、聞かれた時ならともかく自分から名乗って回るのはやめたほうがいい」とかなんとか説き伏せてまして。その時は「また始まった」とかしか思っていなかった、んですが……」
「おい、まさか」
ヴェルムドールが思わずルーティを凝視すると、ルーティはさっと目を逸らす。
「……この数十年、彼女の噂が欠片も入りません。何処かにいるのは確かだと思うんですが……」
元よりレルスアレナは勇者パーティの一員でもなく、勇者伝説でも描写を削られた存在である。
何しろ勇者伝説では勇者リューヤは闇の神ダグラスから闇の鍵を授かった事になっていたりするが……つまり、レルスアレナが「闇の巫女」を積極的に名乗らなくなったことで「変わり者のシルフィド」扱いで話しかける者も減り、結果として人々の記憶から薄れていったのだろう。
「……余計なことをしてくれる」
ヴェルムドールはそう吐き捨てると、思わず額を手でおさえた。
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こっそり新連載、始めてます。
http://ncode.syosetu.com/n9189cs/
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霊王国の遺産。
それは詐欺師が三回に一回は語る言葉だと言われるくらいに有名な、眉唾の代名詞である。
曰く、霊王国の強力な魔力を秘めた杯があり、それに溜まる水を飲めば不死となるらしい。
曰く、霊王に代々受け継がれる杖があり、それがあればエレメント達が従うらしい。
曰く、霊王国にのみ伝わる強力な武器がある。
まあ、様々であるが「それが手に入りそうだ」とか「手がかりをもっている」とか囁くのが常套手段だろうか。
それっぽく偽装したガラクタを「これが手がかりだ」だの「今は力が失われているが」などと適当な事を囁いて売りつける者もいる。
ちょっと考えてみれば物質文明ではないエレメント達にそんなものがあったかどうか疑問に思えるはずなのだが、他の人類に少しでも歩み寄ろうとエレメント達が街や王宮やらを作ったこともあるせいで「そういうものもあるかもしれない」と思ってしまう者も後をたたない。
実際、「霊王国の遺産」は創作英雄譚で矛盾やら力不足やらを解決するのに非常に便利で、いざという時には「霊王国の遺産」が登場して解決したりする。
その中でも一番人気で有名で使い回されている創作遺産が「霊王剣セレスティール」で、天を裂いたり地を砕いたり海を裂いたり鋼の巨人を縦に真っ二つにしたり、果ては所有者が空を飛んだりとやりたい放題である。
きっとイクスラースが聞いたら微妙な顔をするだろうが、それはさておき。
まあ、とにかくそれ程までに「霊王国の遺産」とは人の心を動かすものなのだ。
いわば「僕の考えた最強の道具」の象徴にもなっている「霊王国の遺産」だが、その守護者なる者がいたとすればどうなるか。
当然だが、定住など出来るはずも無い。
一つの場所に長く留まることすら危ういだろう。
権力者に守護を求めるのとて、安心とはいえない。
その権力者が霊王国の遺産という宝物を前に平静でいられるという保証も無いし、心変わりしないとも限らない。
何より、その権力者の保護が絶対の保護というわけでもない。
……ならば、なるほど。
確かに放浪するしかないだろう。
そんな物を「持っているかもしれない」と思わせただけで、命を狙われる対象に充分になりうるのだから。
「一つ、疑問なのですが」
ヴェルムドールの斜め後ろの位置で待機していたイチカが、口を開く。
「その闇の巫女なる人物は、どうしてそれを名乗るのですか? 名乗らなければ安全でいられるでしょうに」
「ああ、確かにな。わざわざ名乗る事によるメリットが感じられない。何か理由があるのか?」
イチカの当然の指摘に、ヴェルムドールも同意する。
わざわざ「闇の巫女」だとか名乗らなければ、霊王国との関連性も疑われずに済むだろう。
ひょっとしたら持っているかも……などという邪推すらさせず、「ただの旅のシルフィド」ですむはずだ。
そして何より、「闇」を信仰する者は今でも少数派だ。
闇魔法を使う者も数え切れる程にしかおらず、それもほんの少しの簡単なものでしかない。
それだけでも、「闇の巫女」を名乗るのはリスクになるのだ。
何しろ、霊王国の遺産の話を抜きにしても闇魔法の手がかりと思われるかもしれないのだから。
「……それは彼女の誇りと、使命故と聞いています」
具体的なところは、ルーティも知らない。
しかしレルスアレナ曰く、そう名乗る事に意味があるらしい。
結局彼女とルーティ達の道は交わらず、彼女の真意についても知る事は無かった。
何かを探しているというレルスアレナは、その何かが何であるかすらもルーティ達に語ることは無かったのだから。
「とにかく、そのレルスアレナとかいう闇の巫女を探せばいいんだな」
それならば簡単だろう。
各国に散ったジオル森王国の諜報部隊に指令を出し、「闇の巫女」とやらの情報について集めればいい。
流石に中小国に関しては手を伸ばしきれていないが、四大国に関してはほぼ満遍なく散っている。
勿論、すぐとはいかないだろうが……。
「それなんですが」
早速指令を出そうかと考えているヴェルムドールに、ルーティが申し訳無さそうに呟く。
「実は、リューヤが彼女に「その目的とかを果たしたいなら、聞かれた時ならともかく自分から名乗って回るのはやめたほうがいい」とかなんとか説き伏せてまして。その時は「また始まった」とかしか思っていなかった、んですが……」
「おい、まさか」
ヴェルムドールが思わずルーティを凝視すると、ルーティはさっと目を逸らす。
「……この数十年、彼女の噂が欠片も入りません。何処かにいるのは確かだと思うんですが……」
元よりレルスアレナは勇者パーティの一員でもなく、勇者伝説でも描写を削られた存在である。
何しろ勇者伝説では勇者リューヤは闇の神ダグラスから闇の鍵を授かった事になっていたりするが……つまり、レルスアレナが「闇の巫女」を積極的に名乗らなくなったことで「変わり者のシルフィド」扱いで話しかける者も減り、結果として人々の記憶から薄れていったのだろう。
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