勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です

天野ハザマ

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たとえ、この身は滅ぶとも13

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 魔王を屠る。
 その言葉にヴェルムドールよりも早く反応したのは、イチカとロクナだ。

「……出来るとでも?」
「ヴェルっち。そろそろブッ殺してもいいんじゃないの? 調子乗りすぎよ、コイツ」
「確かに、他の場所であれば私に勝ち目はないでしょう。ですが、ここであれば私にも勝ちの目はあります」

 イチカとロクナの殺気を受け流し、レルスアレナはそう宣言する。
 淡々と事実を述べるかのようなレルスアレナに少しの興味を引かれ、ヴェルムドールは小さく笑う。

「ほう、ここであれば……か。聖剣でも埋まってるのか?」
「宝玉の守護者よ、レルスアレナがここに告げる」

 返答の代わりにレルスアレナの口から紡がれたのは、何かの詠唱。
 同時に、数体のエレメント達がレルスアレナを守るかのように現れる。
 更に現れた数体のエレメントはヴェルムドール達を包囲し……即座にイチカとロクナに撃破される。
 だが、その直後には新しいエレメントが現れる。
 それらは攻撃こそしてこないが、威圧じみた気配を向けてくる。

「牽制のつもりですか……」
「つーか、言われてるような自然現象じゃないわね。明らかに意思を持ってるわよ、こいつ等」
「集え。集いて、鍵となれ。戒めを解き放ち、虹の宝玉を呼び起こせ」

 レルスアレナの詠唱と共に、全く動きをみせなかった「オーブガーディアン」達の姿がほどけていく。
 六色の光が集まり、空中に色を変えながら明滅する球体が現れる。
 レルスアレナが杖を掲げると、黄金の光が球体へ向けて放たれる。

「……目覚めなさい、マスターゴーレム」

 球体が弾け、巨大な人型を構成する。
 大人三人分はあろうかというそれは、白い翼を広げて舞い降りる。
 たとえるならば、翼持つ騎士像。

「白いゴーディといったところか? 中々面白いものを出すじゃあないか」

 そう、それはゴーレム形態のゴーディにとても良く似ていた。
 造形こそ違うが、纏う魔力の質はよく似ている。
 そして恐らくは……実力も。
 
「……違うわ。あれこそが、マスターゴーレム。魔族じゃない、人類の……エレメントの持っていた、最強の武器よ」
「なるほどな。だが、確かそんなものは使われていなかっただろう?」
「オーブを、盗まれていましたからね」

 イクスラースとヴェルムドールの会話に、レルスアレナが割り込む。

「私達が無垢に他の人類を信じていた頃、オーブガーディアンは害獣共から人々を護る盾でした。ですが、強力な武器に見えていた者も居たのです」

 警戒もされずに置かれていたオーブの幾つかが、そうした欲にかられた者達に盗まれた。
 オーブガーディアンでは対抗できない何かが現れた時の為のマスターゴーレムは起動できなくなり、更に幾つかのオーブが様々な手段で国外へと持ち出された。
 たとえば、「そうした探し物に詳しい友人がいる。話を進めやすくする為に、一つ借りていっていいだろうか」と。
 当然、オーブは戻らなかった。
 たとえば、「下手な相手を信用して渡してはいけない。人の目も必要だ。盗まれにくくなる。私達に任せて欲しい」と。
 その夜には、無くなった二個と起動していたもの以外のオーブ……一個だけだが、それがその者達と共に消えた。
 そうして各地に散ったオーブはエレメントの滅びと共に堂々と「霊王国の遺産」として取引されるようになり……残されたオーブを欲しがってレプシドラに入り込む者も増えた。
 ある者はレプシドラに発生するモンスターのエレメントに殺され、またある者は命からがら逃げ帰った。
 その逃げ帰った者の中には大きな力を持つ道具を持ち帰った者もおり、「霊王国の遺産」として高く取引された。
 それ故に、今レプシドラを囲む「祈国セレスファ」が出来るまでは盗賊団が徒党をなして入り込む事すらあったのだ。

「そうか。だがこんなものを出しては、流石に色々とセレスファの連中に気付かれるんじゃないのか?」

 祈国セレスファにとってみれば、オーブガーディアンなどというものは外に出したくは無いだろう。
 いや、むしろ……失われたゴーレム技術の粋であるそれを、欲しがる事だってあるかもしれない。
 祈国セレスファがレプシドラに拘っている以上、そうした可能性だって否定できないのだ。

「問題ありません。彼等はある程度知っていますからね」
「ほう?」
「私が此処に出入りしていることも、私が「霊王国の遺産」とか呼ばれている物を集めてレプシドラに戻している事も知っています」

 だが、それでも問題は無いのだとレルスアレナは語る。

「……祈国セレスファは、私が創った国です。かつて私達が囁かれたような耳障りの良い言葉を囁いて創り上げた、くだらない国。「何故か」エレメントに襲われないシルフィドの甘言に乗った、欲望塗れの始まりを持つ国。いつかレプシドラを完全に制圧した私が世界中のどの国よりも素晴らしい繁栄をもたらすと無邪気に信じた、そんな者達が集まった国です……まあ、王は私じゃありませんが」

 そして今となっては、「鎮魂」などという適当な戯言を本気で信じている国。 自分達の汚れた始まりも知らず、耳障りの良い綺麗事が始まりだと信じている……それが、祈国セレスファの真実である。
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