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連載
魔王というもの6
しおりを挟む黙りこんだレルスアレナをしばらく見下ろしていたダグラスは自分の指から指輪を一つ抜き取ると、それを手の中で転がす。
すると指輪はその大きさとデザインを変え、腕輪のようなものへと変化する。
「これをお前にやろう」
「これは……腕輪、に見えますが」
手渡された腕輪をじっと眺めているレルスアレナの腕をとると、ダグラスはレルスアレナの腕に腕輪をつけさせる。
「フィスフルの腕輪という。外部に存在する魔力を集め、溜め込む効果がある。何かの役に立つだろう」
「……はい」
腕輪を愛おしそうにさするレルスアレナから視線を外すと、ダグラスはイクスラースへと視線を向ける。
「さて、次はお前だなイクスラース」
「え? 私?」
「そうだ。その剣を見せてみろ」
自分へ向かって歩いてくるダグラスにイクスラースは思わず一歩下がるが……その背後に立つヴェルムドールにドンとぶつかってしまう。
「あ……ごめんなさい」
「いや、気にしてはいない」
「これか」
イクスラースがヴェルムドールを見上げている間にもダグラスはその眼前までたどり着き、イクスラースの剣を鞘から抜き放つ。
「あ、ちょ……」
「フン、なるほど。見た目程特徴のある剣というわけではないな。だが、よく出来ている」
目線の高さに黒薔薇の剣を掲げて眺め回しているダグラスから視線を外し、イクスラースは背後のヴェルムドールへと振り返る。
「……微妙に話を聞かないところ、貴方に似ているわ」
「一緒にするな」
不満そうに返すヴェルムドールからイクスラースが視線をダグラスへ戻すと、ダグラスは黒薔薇の剣から視線をイクスラースへと移していた。
その視線に耐えかねイクスラースが口を開こうとすると、その前にダグラスが言葉を紡ぐ。
「お前とこの剣には、俺の祝福を与えよう。お前は闇の魔力をより使いやすく……この剣には、クラシェルが好んで使っていた魔法の記憶が付与される。今のお前ならば使えるだろう」
その言葉と同時に、黒薔薇の剣に強大な魔力が流れ込んでいく。
外見をそのままに性質を大きく変化させた黒薔薇の剣をダグラスはイクスラースへと差し出し……イクスラースがそれを受け取って、鞘に戻す。
「ありがとうございます、ダグラス様」
「……ああ」
頷くダグラスは、その背後のヴェルムドールへと視線を移す。
「魔王ヴェルムドール。最後にお前に警告と、助言を一つずつやろう」
警告。
その言葉に、自然とヴェルムドールの視線が鋭くなる。
「歪神の欠片に気をつけろ。近頃、水の歪神が復活しかけた影響だ」
水の歪神。
過去の話にも出てきた、封印された歪神が復活しかけたと聞いて、その場の全員が反応する。
「歪神自体はもうアクリアが再封印したが……その欠片が世界中に散らばっている」
「それは、どんな影響をもたらす」
「ロクな結果にはならん。奴は以前封印される直前には他の歪神の欠片を喰らい恐るべき力をつけていた……。そうなった奴自身の欠片は恐らく、全ての属性を持っているだろう。ということは、どういうことになっても不思議はないということでもある」
気になる情報ではあるが、すぐにどうにかできる問題ではないだろう。
出来る事といえば、世界のどこかで起こり得るかもしれない「妙なこと」に気を付ける程度のことだろう。
それ故に、ダグラスも「気をつけろ」という曖昧なアドバイスとなったのであろうことも想像できた。
「……そして、助言だ。お前が今懐にしまっているソレのことだ」
ヴェルムドールはすぐに、懐に仕舞ったままになっている珠のことだと気付く。
そういえばなんとなく仕舞いっぱなしだったが、これが何かは分からないままであった。
「暇な時にでも水の魔力を流してみろ。すぐに反応が出るはずだ」
「水の魔力? これはアクリアに関係する何かなのか?」
「当たらずも遠からずといったところだな。何故お前の所にいるのかは知らんが……まあ、この大陸で下手な奴の所に辿り着くよりはマシな運命だろう」
何をダグラスが言っているのかはイマイチ分からなかったが、何をするべきなのかはヴェルムドールにも理解できた。
「ここでやってはいかんのか?」
「ダメだ。理由はまあ……後で嫌でも理解できる」
煮え切らない事を言うダグラスにヴェルムドールは不可解そうな視線を向けるが……それ以上ダグラスは語りそうにないと感じ溜息をつく。
「……さて。そろそろお前達には退去願うとしようか」
「待て、その前に一応聞いておきたい」
腕をすっとあげたダグラスにヴェルムドールは声をあげ、ダグラスはその動きをピタリと止める。
「言ってみろ」
「イクスラースとレルスアレナのことを……今でも、想っているか?」
投げかけられたその問いに、ダグラスは小さく笑う。
「そうだな。今ならば、あの日クラシェルの言った愛の意味とやらも理解できる。故に、答えよう。イクスラース、そしてレルスアレナ。何も出来ぬこの身ではあるが……お前達の幸福を、願っている」
そうして、パチンと指が鳴らされて……周囲の光景が、闇に包まれて消えていった。
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